大阪・関西万博で話題沸騰「null²(ヌルヌル)」パビリオン——移設を目指す挑戦と、落合陽一氏の願い

はじめに——2025年万博の最注目パビリオン「null²(ヌルヌル)」

2025年の大阪・関西万博。その中でもひときわ大きな話題となったシグネチャーパビリオンが、メディアアーティスト落合陽一氏がプロデュースする「null²(ヌルヌル)」です。この巨大な体験型建築作品は、その独自の造形美と最先端テクノロジー、そして「いのちを磨く」という深いコンセプトによって、多くの来場者を魅了してきました。一方、万博の会期終了が近づくなか、「null²」を次の世代にも伝えていこうという大きな動きが本格化しています。今回は、その「お引越」の現状、なぜそれが必要なのか、そして今後の展望について詳しくお伝えします。

「null²(ヌルヌル)」とは——生きているように動くミラーのパビリオン

「null²」は、外観全面を特製の伸び縮みする鏡素材(ミラー膜)で包み込んだ独創的な建築物です。内部にはロボットアームが組み込まれており、ミラー膜を内部から自在に動かします。その動きはまるで生き物の皮膚のような流動感を持ち、周囲の風景を身体ごと包み込むように映し出します。
また、パビリオン内部は全面が鏡面状のLEDモニターで囲まれ、来場者自身の分身である「ミラード・ボディ」と対話したり、現実と自己認識の根幹を揺さぶる未知の体験を提供します。この体験は「私たち自身とはなにか」「生きているとはどういうことか」という問いを、アートとテクノロジーの融合によって私たちに投げかけてくれるのです。

  • コンセプト:「いのちを磨く」
  • 外観:ロボットアームで変形する特殊ミラー
  • 内部:鏡面LED・デジタル分身とのインタラクション
  • チーム:太陽工業、アスラテック、NOIZほか多数のプロフェッショナルが結集

人気の秘密——「体験したい」が殺到、入場倍率も数%

会期初日からその話題性は高く、入場チケットは超高倍率。SNSにも「一生に一度の体験」「建物が生きているみたい」など体験者の驚きと感動の声があふれました。外観近くで撮影した写真や動画にも、「次元の違う建築美」「現代の鏡」など絶賛のコメントが続出。予定枚数の応募に対し当選確率は数%という、まさに“万博屈指の人気パビリオン”として君臨しています。

会期後の移設プロジェクト発表——「null²」のお引越しを目指してクラウドファンディング始動

落合陽一氏は2025年10月1日、自身が代表を務める「計算機と自然」より「null²」の移設に向けたクラウドファンディング(CF)の開始を発表しました。
万博会期は2025年4月〜10月の半年間のみですが、「null²」は一過性のイベントで終わらせず、より多くの人に体験してもらいたいという想いから全国各地での再展示・保存活用を目指しています。そのために必要な再設計・見積もり・企画・記録映像制作など、多額の資金をクラウドファンディングで集める運びとなりました。

  • クラウドファンディング目標:1億円
  • 使途:新規移設先への再設計・企画・設計・記録映像制作等
  • 支援受付:~12月19日
  • 支援額レンジ:千円~一千万円

移設先は現時点では決定していませんが、北海道から九州まで全国各地の美術館や企業・自治体から多くの相談が寄せられているとのこと。「null²」が向かう未来は、今まさに模索の途上にあります。

クラウドファンディングのリターン——「ぬるぬるパーカー」や「null²のカケラ」など多彩!

支援者には、「ミラー膜のカケラ」や落合陽一氏デザインの限定「ぬるぬる」パーカー、null²の模型やプリント作品のほか、支援額に応じてさまざまなオリジナルリターンが用意されています。特に「null²のカケラ」は、この体験型建築の一部を物理的な形で手にすることができる貴重な返礼品として、多くの支持を集めています。

  • null²のカケラ」:実物ミラー膜の一部を加工した限定品
  • ぬるぬるパーカー」:落合氏オリジナルデザイン、希少性抜群
  • 写真プリント・模型:アーティストによる限定制作

さらに、もし目標金額に到達しなくても、集まった資金は基本計画や記録映像の制作などプロジェクト遂行のために充当されます(返金はありません)。この点も非常に透明性の高い運営となっています。

なぜ「null²」はここまで支持されてきたのか?

「null²」の誕生は、単なるアートの展示やデジタル体験を超え、現代社会や未来社会の「鏡」としての存在意義を持ちます。国や企業主導ではなく一人のメディアアーティストの手から生み出された最前線のクリエイティブ。それこそが多くの人々の心を動かし、パビリオンに行列をつくらせ、会期後の価値と未来を信じて支援を集める原動力になっているのです。

また、会期中には予約システムの煩雑化に対し当日整理券制への変更など、柔軟な運営改善も話題となりました。来場者の声に真摯に応答する姿勢が、パビリオンそのものの進化や社会的評価にもつながっています。

今後の展望と「null²」レガシー——新たな社会実験へ

私たちは今、「建築」「アート」「テクノロジー」「社会」が有機的に結びつく新たな社会実験の現場を目の当たりにしています。落合陽一氏とチームが描くビジョンは、万博会場という枠を超え、日本中・世界中の人々へと拡大していく可能性を秘めています。

「null²」には、体験した人各々が自身の「存在」や「未来」を問い直すパワーがあります。その哲学と技術が引き継がれ、レガシー(遺産)として次世代にバトンを渡すためにも、今後のクラウドファンディングや移設先の動向には大きな注目が集まっています。

支援するという新しい参加のかたち——より多くの人々へ

万博での来場が叶わなかった方も、「null²」クラウドファンディングを通じて作品の継承・拡張に関わることができるのは現代ならではの新しい文化参加のかたちです。ぜひ一人でも多くの方が本プロジェクトの一部となり、「ぬるぬる」の未来を支えていく輪が広がることを願っています。

まとめ——「null²」と未来社会の可能性

大阪・関西万博の象徴的存在「null²」は、テクノロジーとアートの融合、社会と個人の対話、そして“今しかない体験が未来へ続く仕組み”を私たちに見せてくれました。今後の移設プロジェクトがどのように展開し、誰もが自由に「null²」を体験できる時代が訪れるか——その動向から目が離せません。「null²」のお引越し、そして新たな社会への一歩を、これからも見守り続けていきましょう。

参考元