小中高生が製作した衛星が宇宙で快挙。世界初の実証実験が進行中
小学生から高校生が中心となって製作した超小型人工衛星「IWATO」が、2025年10月10日に国際宇宙ステーション(ISS)から宇宙空間へ放出されました。この衛星には、JAXAが開発した世界初の超小型衛星用レーザーリフレクター「mini-Mt.FUJI」が搭載されており、現在、軌道上での実証実験が進行中です。このプロジェクトは、全国から選抜された11歳から22歳のジュニアたちが5年の歳月をかけて設計、開発、試験を行ってきた、日本の宇宙人材育成を担う重要なプロジェクトとなっています。
JAXAとの共同研究で実現した世界初の挑戦
IWATOに搭載されているmini-Mt.FUJIは、レーザー測距技術により衛星の正確な軌道把握が可能な革新的な装置です。このレーザーリフレクターの開発は、JAXAと一般社団法人e-kagaku国際科学教育協会が2022年6月16日に締結した共同研究契約に基づいています。JAXAが技術情報と軌道決定情報を提供し、e-kagakuがレーザーリフレクターの設計、製造、試験、打ち上げ、そして軌道上での運用を担当しています。
このレーザーリフレクターの活躍により、他の運用中衛星との軌道上衝突を防ぐ効果が期待されており、宇宙開発の安全性向上に貢献する可能性があります。小型衛星に搭載可能でありながら、高い精度を実現するこの技術は、今後の宇宙利用の拡大に伴い、ますます重要性が高まってくるでしょう。
教育と産業をつなぐプロジェクトの意義
ジュニア衛星プロジェクトは、単なる宇宙開発の技術実証にとどまりません。産業界と教育界が連携し、未来を担うICT人材を育成することを目的としています。プロジェクトに参加するジュニアは、全国から一定のスキルを有する証明を持った優秀な若者たちです。彼らは、設計から開発、申請、振動試験まで、実践的な宇宙開発のプロセスを経験することで、実務的な知識と問題解決能力を身につけています。
すでに、このプロジェクトから日本のトップ宇宙開発企業への就職に成功しているジュニアも出ており、プロジェクトが実質的な人材育成の場として機能していることが明らかになっています。若い世代が最先端の宇宙開発に携わることで、日本の宇宙産業の持続的な発展と人材確保が実現されているのです。
12月7日に第3回シンポジウムを開催。プロジェクトの成果を社会に発信
e-kagaku国際科学教育協会は、2025年12月7日(日)の11時から16時にかけて、「第3回ジュニア衛星プロジェクトシンポジウム」をYouTubeによるオンライン配信で開催します。このシンポジウムは、IWATOの打ち上げから現在に至るまでのプロジェクト全体を総括し、その成果と課題、今後の展望を広く社会に発信する重要なイベントです。
シンポジウムは2部構成で進行予定です。第1部は教育的見地からの発信に焦点を当て、プロジェクトに参加したジュニアたちによる成果発表がメインとなります。e-kagaku国際科学教育協会の北原達正代表による基調講演「なぜジュニアに人工衛星をチャレンジさせたのかー教育的見地― その目的と成果」に続き、高校2年生の佐藤麗奈氏と白水瑛章氏、大学1年生の坂田悠真氏が登壇し、自分たちの経験と学びを語ります。
第2部はビジネス的見地からの発信が中心となり、宇宙産業に携わる企業関係者や専門家からの視点で、このプロジェクトの社会的意義と今後の可能性が議論されます。シンポジウムの最後には、「持続可能な宇宙開発を担う人材育成とは」をテーマにパネルディスカッションが行われ、JAXAや産業界からのゲストも招かれています。
幅広い層の参加を募集。宇宙への扉を開く機会
今回のシンポジウムは、全国に無料でYouTubeライブ配信されます。対象としているのは、教育関係者、保護者、宇宙関連事業に携わる企業関係者、そしてこれからチャレンジしたいと考えているジュニアたちなど、様々な立場の人々です。
シンポジウム参加には事前申し込みが必要で、YouTubeライブ配信の視聴申し込みフォームが用意されています。また、直接会場で観覧を希望する場合は、東京都中央区の日本橋三井タワー7階に位置するX-NIHONBASHI TOWERで、入場無料、開場10時で観覧できます。問い合わせ先は、事務局の井関氏で、電話番号は075-612-6814、メールアドレスはscience.labo008@gmail.comです。
5年間の集大成。ジュニアたちの成長の軌跡
IWATOの打ち上げ成功に至るまでの5年間は、単なる技術開発の期間ではありませんでした。参加したジュニアたちは、小学生から大学院生まで、異なる年代の仲間たちと協力し、多くの専門家や宇宙産業企業からのアドバイスを受けながら、一つのプロジェクトを完成させてきました。この過程で、彼らは技術的なスキルだけでなく、チームワーク、問題解決能力、そしてプロジェクト管理の実践的な知識を習得しています。
特に注目すべき点は、このプロジェクトが「宇宙を学びの場とするプロジェクト」として、学術的な意義を持ちながらも、実践的な宇宙開発の経験を提供していることです。e-kagakuが提唱するこの理念が、実際にジュニアたちの成長と社会への貢献として実を結んでいるのです。
宇宙産業の未来を担うジュニアたちへのエール
今回のシンポジウムは、単なる報告会ではなく、これからチャレンジしたいと考えている若者たちに対する強いメッセージとなるでしょう。IWATOプロジェクトの成功事例は、高い志を持つジュニアたちに、自分たちも宇宙開発に参加できる、そして世界初の技術に携わることができるという希望を与えます。
日本の宇宙産業が今後も競争力を持ち続けるためには、こうした人材育成が不可欠です。12月7日のシンポジウムで発表される内容は、多くの若者たちに宇宙への扉を開く契機となり、日本の宇宙開発の次世代を担う人材の発掘につながるに違いありません。




