大阪・関西万博チケットで相次ぐ不正ログイントラブルと現場の混乱

はじめに

2025年9月現在、日本中が沸き立つ「大阪・関西万博」ですが、その熱気の陰でチケットを巡る深刻なトラブルが発生しています。
公式チケットサイトへの不正ログイン勝手な譲渡、サイト利用規約に関わるアカウント停止、そして現地での長い行列――。
この記事では、事実と取材にもとづいて「万博チケット問題」の全貌と、現場の来場者の声、専門家からの指摘、そして運営の課題をわかりやすくお伝えします。

不正ログインと「勝手に譲渡」 被害者の声

「腹が立つ。行く気持ち失せた」という怒りや絶望の声が、SNSや報道を通じて寄せられています。
その中心にあるのが、自分のチケットが第三者によって勝手に譲渡されていたという被害です。

  • 大阪府内の40代女性は、事前に購入していた夜間券(1枚3,700円)で日付変更をしようと公式サイトにログインしようとしたところ、パスワードを入力してもログインできず、再設定してもチケットが表示されない事態に。
  • 問い合わせの結果、「何者かによってチケットが譲渡されていた」と判明。しかし運営側は返金・再発行不可との一点張り。女性は「もう行きたくない」と強い憤りを見せます。
  • この女性は警察にも被害届を出そうとしましたが、「電子計算機使用詐欺」等での立証が極めて難しく、被害届は受理されませんでした。

なぜ譲渡が起きたのか?悪用された公式機能

大阪・関西万博の公式サイトには、チケットの譲渡機能があります。これは家族や友人にチケットを渡せる便利な仕組みですが、この機能が不正ログインによって悪用されています。

  • ログイン情報(IDやパスワード)が何らかの形で流出、もしくは推測され、不正にログイン。
  • 本人の知らぬ間にチケットが譲渡機能を利用され、見知らぬ第三者へチケットが移動
  • 被害者が気づいた時には、すでに自身のチケットもアカウントから消失しているケースが目立ちます。

被害者の救済は? 運営の対応と限界

被害者が運営団体「博覧会協会」に問い合わせても、返金や再発行には一切応じられないという姿勢が徹底されています。
協会側は「公式サイトのセキュリティ脆弱性によるものではない」とし、「現時点で返金する考えはない」とコメントしています。

  • 国や運営への苦情、警察への相談も増えていますが、現行の電子計算機使用詐欺などの刑事事件として立証するのが難しく、被害届が受理されない事例がほとんど。

SNSや会場現地での混乱「BAN博」現象

SNSでは「BAN博」「BAN祭り」といったワードが出回り、多くの人が公式チケットサイトのアカウント停止を経験しています。

  • 予約枠を確保しようと公式サイトで「連打」操作を繰り返したり、「自動化ツール」を用いたりすると、運営の想定を超えるアクセスだと判断されアカウントが停止されます。
    これにより、所有している全チケットが使用不能になるなど甚大な被害が生じています。
  • 具体的な連打基準(1秒間のクリック回数など)は公表されておらず、「過度なアクセス」「自動化」が疑われると一律で停止される運用です。
  • 会場取材では「家族の分も含めて全部チケットを消された」「どうしていいかわからない」という来場者の悲鳴も届いています。

ネット操作が苦手な人のための当日券に長蛇の列

こうしたネットトラブルや複雑なサイト操作による混乱を受け、「ネット操作が苦手な人向け」の当日券が注目を集めています。

  • 予約不要で購入できる唯一の手段として、毎朝早くから会場外に長蛇の列ができています。
  • 当日券をゲットできた人からは「感無量」との喜びの声がある一方、買えずに涙する人も続出。
  • 混雑緩和策として、会場の西ゲートでは毎朝「予約枠の追加」がなされてはいるものの、需要には到底追いついていません。

セキュリティ対策の課題――生体認証への期待

現行のID・パスワード認証のみでは、なりすましや流出のリスクが常につきまといます。
専門家である近畿大学・柏崎准教授は「本格的にセキュリティを高めるには顔認証や指紋認証などの生体認証が不可欠」と指摘しています。

  • 現状の「ID・パスワード+ワンタイムパスワード」は突破される可能性が否定しきれず、被害の再発防止には抜本的な強化が必要です。
  • また、パスワードの使い回しはNGとされており、ユーザーにも一定の情報リテラシーが求められます。

チケットシステムの利便性とリスク

オンラインでのチケット購入や譲渡は非常に便利ですが、その裏には必ず「セキュリティリスク」「アカウント管理の難しさ」があります。

  • 特に大規模イベントでは全国からアクセスが集中し、想像を超える争奪戦や不正の温床が生まれがちです。
  • 利便性と安全性の両立は困難を極め、今後の運用にも大きな課題を残しています。

来場者ができる「自衛策」

  • パスワードには推測されにくい複雑なものを使い、絶対に使い回さない
  • 公式からのメールやSMSの内容を十分に確認し、不審なものは開かない
  • 定期的なパスワード変更や、認証情報の更新を心がける
  • 今後のためにも、生体認証といった新たな仕組みの導入に関心を持つ
  • 公式情報の確認や、困った時はすぐに公式窓口に問い合わせる

現場の今 ― 万博は依然として大盛況

これだけのトラブルが報じられる中でも、会場には朝早くから多くの来場者が詰めかけています。
「朝早くから並んでようやく買えた!」「どうしても見たい展示があったのでなんとか間に合った」という喜びの声も多い一方、
「サイトで何度も弾かれた」「列に並んだが買えなかった」という悔しさの声も多く、その熱気と混乱は頂点に達しています。
万博という国民的イベントの「今」を象徴する出来事と言えるでしょう。

おわりに ― 今後への課題

万博チケットをめぐる混乱や被害は、単なる一過性のネットトラブルではなく、
これからの日本社会全体が乗り越えるべき「デジタルとリアルの接点」に潜む重大な課題です。

運営側のシステム強化・セキュリティ対策だけでなく、
ユーザー一人ひとりのリテラシー向上、そして誰もが安心してイベントを楽しめる社会づくりが求められています。

熱気とともに盛り上がる大阪・関西万博。その裏側では、
一つ一つのチケットに込められた人々の期待や喜び、そして予想外のトラブルが交錯しています。
この教訓を活かし、未来の大規模イベントがさらに安心安全なものとなるよう期待したいものです。

参考元