愛知・小牧市で20代姉妹が「はしか」感染 名古屋の地下鉄や商業施設を利用 県が広く注意呼びかけ
愛知県小牧市に住む20代の姉妹2人が「はしか(麻しん)」に感染していたことが明らかになり、県は周辺地域の住民や、同じ交通機関・施設を利用した人々に対して注意を呼びかけています。
2人はいずれも海外渡航歴がなく、現時点で感染経路は不明とされています。 さらに、感染力が最も強い可能性がある期間に、名古屋市営地下鉄や名鉄小牧線、名古屋市内の商業施設や飲食店を利用していたことが確認されており、県は「念のため広く情報提供が必要」と判断して詳細を公表しました。
20代姉妹に確認された「はしか」感染の概要
愛知県や報道各社の発表によると、小牧市在住の20代姉妹は、どちらも予防接種歴がない状態で「はしか」に感染していたことが分かりました。
- 居住地:愛知県小牧市
- 年代・性別:20代女性の姉妹2人
- 予防接種歴:いずれも麻しんワクチン未接種
- 海外渡航歴:いずれも直近の渡航歴なし
- 診断:県衛生研究所の遺伝子検査で麻しん陽性を確認
- 現在:医療機関に入院し、治療と経過観察中
同居する家族については、現時点で新たな感染は確認されていないとされています。 しかし、「はしか」は感染力が非常に強いため、保健当局は引き続き経過を注意深く見守っています。
発症から診断までの流れ
愛知県の発表資料によると、姉妹2人はほぼ同じタイミングで発症しており、症状の経過も似ていました。
姉(患者A)の経過
- 12月3日:発熱(発症)
- 12月4日・5日:小牧市内の医療機関Aを受診するも、この時点では「はしか」とは診断されず
- 12月6日:咳や鼻水(鼻汁)などの症状が出現
- 12月7日:発疹や、口の中にできる特徴的なコプリック斑が見られ、小牧市内の医療機関Bを受診
- 12月8日:再度医療機関Bを受診し、検体採取と遺伝子検査が行われ、同日麻しんと確定
妹(患者B)の経過
- 12月3日:姉と同日に発熱し、医療機関Aを受診
- 12月5日:咳や鼻水の症状が現れ、再び医療機関Aを受診
- 12月6日:発疹やコプリック斑が出現
- 12月7日:医療機関Bを受診
- 12月8日:再診時に検体が採取され、遺伝子検査の結果、麻しんと判明
姉妹ともに初期の段階では「はしか」と診断されず、咳や発疹など典型的な症状がそろった段階で確定診断に至ったことが分かります。
名古屋の地下鉄・名鉄小牧線・商業施設などを利用
愛知県は、他人に感染させる可能性が高いと考えられる期間の行動歴についても詳細に公表しています。
県によると、姉妹が感染性を有していた可能性がある期間(12月2日~8日頃)に、以下のような交通機関や施設を利用していたことがわかっています。
- 名鉄小牧線
- 名古屋市営地下鉄 東山線・名城線
- 名古屋市中区の飲食店
- 名古屋市内の商業施設 など
具体的な日時や利用区間については、県が公表資料の中で一覧として示し、「該当する時間帯に同じ車両や施設内にいた人は、健康状態の変化に注意してほしい」と呼びかけています。
今回の公表は、「当該施設等を利用した人が、麻しんウイルスに感染している可能性があるため」とされており、広く一般に情報を伝えることで、早期の受診や感染拡大防止につなげる狙いがあります。
感染経路は依然「不明」 国内での市中感染の可能性も
姉妹はいずれも最近の海外渡航歴がなく、また身近に確定患者が確認されていないことから、現時点で感染源や経路は分かっていません。
報道では、「渡航歴がなく感染経路が不明のはしか患者」として取り上げられており、国内での市中感染、あるいはどこかで見逃された患者からの感染である可能性も指摘されています。
愛知県内での「はしか」の報告は、今年に入って19例目とされており、周辺地域での感染状況にも引き続き注意が必要です。
「はしか(麻しん)」とはどんな病気?
今回のニュースを受け、「はしか」という言葉は聞いたことがあっても、具体的にどのような病気か分からないという方も少なくないかもしれません。ここで、基本的な特徴を簡単に整理します。
- 原因:麻しんウイルスによる急性のウイルス感染症
- 主な症状:
- 高熱(39度前後になることも多い)
- 咳、鼻水、目の充血
- 全身に広がる赤い発疹
- 口の中にできる白い斑点(コプリック斑)
- 感染経路:飛沫感染・空気感染など。非常に感染力が強いのが特徴です。
- 重症化のリスク:肺炎、中耳炎、脳炎などの合併症を引き起こすことがあり、まれに命に関わることもあります。
- 予防法:もっとも重要なのがワクチン接種(麻しん含有ワクチン)です。
一度かかると強い免疫がつくとされていますが、そもそも重症化の危険性がある病気であるため、「かかって覚える」ではなく、「ワクチンで防ぐ」ことが基本とされています。
愛知県が呼びかける「ワクチン接種」と「早めの受診」
今回の姉妹は、いずれも麻しんの予防接種を受けていなかったことが分かっています。 県はこの点を重く見て、改めて予防接種の重要性を強調しています。
愛知県は注意喚起文の中で、次のような点を住民に呼びかけています。
- 麻しんの定期予防接種の対象年齢の子どもは、忘れずに接種を受けること
- 過去の接種歴が不明な人や、1回しか接種していない人は、かかりつけ医などに相談すること
- はしかが疑われる症状(高熱、咳、発疹など)が出た場合は、事前に医療機関へ電話連絡のうえで受診し、周囲への感染拡大を防ぐこと
特に、「はしか」は一人の患者から多くの人に広がりやすい病気であり、ワクチン接種率が下がると、集団としての免疫(集団免疫)が弱くなります。そのため、個人の予防が全体の安全にもつながると言えます。
同じ電車や施設を利用した人は、どんな点に注意すべき?
今回、姉妹が名古屋市営地下鉄や名鉄小牧線、名古屋市中区の商業施設や飲食店を利用していたことから、「自分も同じ時間帯にいたかもしれない」と不安を感じている方もいるかもしれません。
愛知県は、次のような点に注意してほしいとしています。
- 公表された日時・場所にいた可能性がある人は、自分や家族の体調の変化に注意する
- 発熱、咳、発疹など「はしか」を疑う症状が出た場合は、すぐに医療機関に電話で相談する
- 受診時には、必ず「はしか患者が出た施設と同じ場所にいた可能性がある」ことを伝える
- 待合室などでの二次感染を防ぐため、医療機関の指示に従い、受診時間や入口を分けるなどの対応に協力する
また、ワクチンを2回接種している人は、一般的に発症しにくい、あるいは重症化しにくいとされていますが、100%防げるわけではないため、やはり体調の変化には注意が必要です。
医療現場への影響と、早期情報共有の大切さ
今回のケースでは、姉妹ともに初期受診時には「はしか」と診断されなかったことも明らかになっています。
はしかの初期症状は、普通の風邪やインフルエンザと似ているため、見分けが難しい場合があると言われています。その一方で、発疹やコプリック斑など典型的な症状がそろってくると、「はしか」を強く疑うきっかけとなります。
今回、最終的に麻しんであると確定し、県が速やかに発表したことで、同じ施設を利用していた人が自分の体調に注意を向けるきっかけになりました。 こうした早期の情報共有は、早めの受診・隔離や、さらなる感染拡大の防止につながる重要な取り組みです。
「自分は関係ない」と思わず、身近な問題として考える
はしかは、一時期「日本ではほとんど見られなくなった病気」と思われていた時期もありました。しかし、海外からのウイルス流入や、ワクチン接種率の低下などの影響で、散発的な患者の発生や小規模な流行が国内でも報告されています。
今回の愛知・小牧市のケースは、
- 20代という、子どもでも高齢者でもない世代での発症
- 予防接種歴がないまま成人期を迎えた人がいる現実
- 渡航歴がなく、市中感染の可能性があること
といった点で、多くの人にとって「自分ごと」として考えるきっかけになり得ます。
ワクチン接種歴があいまいな方や、「子どもの頃に1回打った記憶はあるけれど、2回目はよく分からない」という方は、一度母子手帳や接種記録を確認し、必要であればかかりつけ医に相談してみることが勧められます。
今後の動きと、私たちにできること
愛知県は、今回の2人の感染例を受けて、引き続き
- 行動歴の詳細確認
- 濃厚接触者の調査と健康観察
- 地域住民への情報提供と注意喚起
などを進めていくとしています。
私たち一人ひとりにできることは、決して難しいものではありません。
- 「はしか」という病気の存在や特徴を知っておく
- 自分や家族のワクチン接種歴を確認する
- 高熱や発疹などの症状が出たら、無理して出勤・登校せず、早めに電話で医療機関に相談する
こうした基本的な行動の積み重ねが、地域全体を守ることにつながります。
今回の愛知・小牧市の20代姉妹の「はしか」感染は、不安を感じさせるニュースである一方で、「予防の大切さ」を改めて考えるきっかけにもなっています。愛知県の呼びかける情報を参考にしながら、冷静に、そして必要な備えを進めていきたいところです。



