福井・敦賀で進む「保育士不足」への新しい挑戦:中高生が保育の仕事を体験
はじめに:深刻化する保育士不足と地域の動き
保育士不足が全国的に深刻な課題となっています。特に福井県敦賀市をはじめ、三重県の松阪市や鈴鹿市など、地方都市でも保育士の採用や確保が大きな社会的関心事となっています。こうした状況を受けて、自治体や保育団体は従来以上に「将来の担い手」を育てるための取り組みを始めています。その一つが、中高生による保育士体験プログラムです。
敦賀市の現状:求人と新しい取り組み
福井県敦賀市では、保育士の求人が常時複数存在しており、安定した保育環境の維持が大きな課題となっています。近年は経験や資格の有無にかかわらず、熱意ある人材の確保に力をいれており、「未経験OK」「研修あり」など柔軟な条件が提示されています。
2025年8月には、敦賀市内すべての公立保育施設で、保育士の業務負担軽減や保護者の利便性向上を目的とした紙おむつサブスクリプションサービス「手ぶら登園R」がスタートしました。これは保育士が使いやすい専用のおむつを活用することで、名前書きや個別管理の負担を軽減するもので、県内でも初の取り組みです。
保育士不足の背景と地域課題
- 核家族化・共働き世帯の増加による保育ニーズの高まり
- 保育士の業務負担や待遇に対する不安、離職の多さ
- 地方における人口減少に伴う担い手不足
- 資格取得のハードルと進路選択時の情報不足
このように、現状の求人では条件緩和や福利厚生の充実なども工夫されていますが、抜本的な人材確保につなげるには「保育の仕事の魅力」を若い世代に伝えることが不可欠です。
中高生の「保育士体験」が示す未来
2025年夏、敦賀市を含む複数地域で中学生・高校生が保育の仕事を体験するプログラムが実施されました。これらは、職場体験やインターンシップの一環として数日間にわたり、保育園や認定こども園などで子どもたちとふれあい、実際の保育現場の雰囲気や仕事のやりがいを体感する内容です。
- 敦賀市:複数の保育施設が体験受け入れを実施
- 三重県松阪市:10人の中高生が保育士体験ツアーで3つの園を訪問
- 鈴鹿市・四日市市:31園でインターンシップ形式の受け入れ
このような取組みは、参加した生徒たちに保育士という職業に対する具体的なイメージや子どもと接することの楽しさと責任を知る絶好の機会となり、多くの生徒が「子どもと遊ぶだけでなく、気配りや安全の配慮が必要だと実感した」「子どもたちの成長に関われることに感動した」といった感想を述べています。
教育現場・行政・保育園の連携
こうした職場体験の背景には、教育現場・地域行政・保育園の強い連携が不可欠です。敦賀市などでは学校側が積極的に受け入れ先と調整し、保育士や園児の負担が大きくならないよう工夫した時間割や活動内容を設計しています。保育園側も「将来の仲間候補」として生徒を温かく受け入れ、保育体験の内容や仕事の意義を伝える努力をしています。
現場の保育士・保護者の声
- 保育士:「若い世代が仕事を体験し、関心を持ってくれることは本当に嬉しい」
- 保護者:「子どもにとっても、いつもと違う年齢のお兄さんお姉さんと触れ合える良い刺激になる」
- 生徒:「保育士の仕事は想像よりもずっと奥が深いことがわかった」
また、保育現場の労働環境も近年大きく改善が進んでおり、週休二日や残業の削減、福利厚生の充実などが一部で実現しています。こうした働きやすい環境整備も、若い世代の志望動機につながるポイントです。
保育士体験プログラムの今後
保育士不足は一朝一夕に解消される課題ではありません。しかし、中高生の段階から職業体験や現場見学の機会を設けることで、進路選択の幅を広げ、将来的な保育士志望者の増加につながる可能性があります。実際、体験後に「保育士を目指したい」と語る生徒も見受けられ、教育現場の期待も高まっています。
また、業務サポートの新技術やサービスの導入も加速しており、敦賀市の「手ぶら登園R」のような取り組みは、保育士・保護者双方の負担軽減に直結しています。
地域全体で取り組む意義
保育の現場は、子どもを持つ家庭のライフラインであり、地域の将来を担う基盤でもあります。その持続可能性を支える意味でも、「地域全体で保育士を育て、支える」意識の醸成が求められています。保育士体験プログラムはそのきっかけとして、多世代の交流・理解促進にも大きな役割を果たします。
まとめ:未来につながる一歩
福井県敦賀市や三重県の自治体で始まった中高生による保育士体験プログラムは、単なる「職業体験」を超えた、地域社会の課題解決に向けた新しいアプローチと言えます。若い世代が「子どもと関わる仕事」のやりがいと奥深さに触れ、成長を感じる機会。保育に関わる全ての人たちが温かく次世代を迎え入れるこの動きが、将来的な保育士不足の解消に向けた確かな一歩となることが期待されます。
今後も、教育・行政・企業など多方面の連携によるさらなる体験の充実、そして現場の労働環境の改善に注目が集まります。