トロント発「ディワリの灯(ひ)」—カナダ最大級のインド文化フェスティバルと首脳メッセージ
毎年恒例のインド・ヒンドゥー最大の祭典「ディワリ(Diwali)」—「光の祭典」として知られるこの日、2025年10月20日、トロントの街はカラフルなランゴリー(床絵)や無数のディーヤ(灯明)で包まれ、街全体が光の海となりました。多民族都市トロントの魅力が最も輝くイベントのひとつ、ディワリ2025の模様と、カナダ首相ケイネ(仮名)氏やオンタリオ州首相(仮名)からのメッセージ、そしてビジネス界の動向を伝えます。
トロントのディワリ—街中が一体化する祝福の夜
トロントのディワリは、もはや単なる民族祭ではなく、カナダの多文化共生社会を象徴する一大イベントです。ダウンタウン中心部のネイサン・フィリップス・スクエアでは、伝統的なインド舞踊やボリウッド・ダンス、華やかな花火、そして本場仕立てのインド料理が楽しめる屋台村が展開されました。音楽、ダンス、色とりどりの衣装、そして人々の笑顔が交錯し、訪れた人たちは「来るもの拒まず」のインド流おもてなしに心打たれていきます。
市民の盛り上がりもすさまじく、TTCやGOトランジットなどの公共交通機関は連日混雑。特にインド系住民が多いブランプトンやミシサガからも多くの家族連れが集まり、街はにぎわいを増していました。
また、リトル・インディアとして知られるジェラード・インディア・バザールでは、10月18日から「ディワリ・メラ」が開催。無料のDJライブやサイドウォークセール、火花の散るスパークラー体験など、地域住民と来訪者が一体となって祝う姿が見られました。
カナダ首脳からのメッセージ—多様性の尊重と結束の呼びかけ
ケイネ首相による声明では、「ディワリは、光が闇に打ち勝つ象徴であり、カナダの多様性と寛容性の象徴でもある」と述べ、インド系をはじめとする移民コミュニティの貢献に感謝の意を示しました。さらに「すべてのカナダ人が、この機会に家族や友人の絆を深め、未来への希望と調和を分かち合うことを願う」と、国全体の連帯を呼びかけました。
オンタリオ州首相のメッセージでは、ディワリが州の公式休日として定められていることに触れ、「オンタリオ州の誇る多文化共存社会を体現する日」と位置付けました。特に若い世代に向けて「異なる文化を学び、尊重しあう機会としてディワリを楽しんでほしい」とエールを送りました。
政界トップのこうした発言からも、ディワリが単なる祭事を超え、カナダ社会の調和と結束を深める文化的イベントとして認知されていることがわかります。
ビジネス界の動向—陰りもみえる「灯の行方」
毎年、ディワリ前後には伝統的なインド料理店や民族衣装店、宝飾店などで大きな売り上げが見込まれます。しかし今年は、経済情勢の不透明感から「灯がやや翳(かげ)る」との声も聞かれました。
インド系ビジネスオーナーの中には「例年よりも客足が鈍く、高額商品の売れ行きが伸び悩んでいる」と語る人も。一方で、SNSでの宣伝効果やテイクアウト需要の高まりに注目し、新しい販売戦略を模索する動きも見られます。また、ディワリ特別メニューを提供するレストランや、オンラインでのギフト販売を強化する企業も増加。厳しい経営環境の中、伝統と革新が交錯する光景が広がっています。
ディワリの文化的・社会的意義—トロントの「光」はこれからも
ディワリは本来、ヒンドゥー教のラクシュミー女神への祈りと供養、家族や友人との再会、そして未来への希望を象徴する祭りです。トロントでは、ヒンドゥー教徒だけでなくシーク教徒、ジャイナ教徒、仏教徒など南アジア系コミュニティが一堂に会し、またそれをカナダ各地から訪れる人々が加わることで、文化の多様性を体現するユニークな空間が生まれています。
市内の寺院やコミュニティセンターでは伝統的なプージャ(儀式)が行われ、家々ではディーヤを灯し、スイーツやごちそうを分かち合います。中でも10月20日夜のラクシュミー・プージャは最重要。今年も多くの家庭が午後7時半ごろから神々への祈りを捧げました。
観光客や新たな移民にとって、ディワリは「トロントの温かさ」を体感できるまたとない機会。観光協会や交通機関も連携し、イベント情報の充実や移動手段の案内を強化しています。
今後に向けて—多文化都市トロントの挑戦
トロントのディワリは、年々規模が拡大し、文化の多様性を体現する象徴的な祭りへと成長しています。しかし、経済的な課題や社会の分断を乗り越えながら、今後も全ての市民が安心して楽しめる「光の祭典」であり続けるためには、行政や民間のさらなる連携が求められます。
ケイネ首相や州首相の発言が示すように、カナダ政府や自治体は多様な背景を持つ人々の共生をさらに推進する姿勢です。同時に、地域のビジネスや文化活動を支える仕組みづくりも重要です。トロントのディワリは、今後もカナダの多文化政策のモデルケースとして、世界に発信されていくことでしょう。
今年もトロントの夜空を彩った光の祭典—次世代の子どもたちが、多様な文化や伝統を誇りに感じ、どんな背景を持つ人とも心通わせられる、そんな「光」であってほしいと願わずにはいられません。