漫画の巨匠・水木しげるさん逝去から10年 天国へ感謝の思いが届く
2015年11月30日に93歳で亡くなった漫画家・水木しげるさん。あれから10年が経ち、今もなお多くのファンから愛され続けています。11月30日は水木さんの命日として「ゲゲゲ忌」と呼ばれ、毎年故人を偲ぶイベントが開催されています。今年も多くの人々が水木さんへの感謝の気持ちを表現し、その功績を称える活動が行われました。
10年目を迎えたゲゲゲ忌 ファンからの温かい思い
11月30日は水木しげるさんの命日であり、毎年この日は「ゲゲゲ忌」と呼ばれて盛大に追悼されています。2025年の今年は、水木さんが亡くなってからちょうど10年目に当たる節目の年となりました。この特別な日に、全国から集まったファンたちがSNSで水木さんへの感謝の言葉を表明し、作品に触れた思い出を共有しました。
水木さんは『ゲゲゲの鬼太郎』や『悪魔くん』など、数多くの名作を生み出し、日本漫画史に不朽の功績を残しました。その影響力は今も色褪せることなく、若い世代から年配の世代まで、幅広い年代の人々に愛され続けています。多くのファンにとって、水木さんの作品は子どもの頃の思い出と深くつながっており、大人になった今でも新たな魅力を発見し続ける存在となっているのです。
境港市と調布市での追悼イベント
水木さんの故郷である鳥取県境港市と、50年以上暮らした調布市では、毎年「ゲゲゲ忌」のイベントが開催されています。今年は10回目の開催となり、調布市では11月18日から11月30日までの期間にわたって、様々な催しが実施されました。
調布市主催のイベントでは、水木さんの作品を愛するファンのために、アニメ特別上映会やトークショーなどのステージイベント、そして市内にある水木さんゆかりの場所を巡るスタンプラリーなど、充実した企画が用意されました。水木プロダクションや東映アニメーションをはじめとする関連企業、自治体の協力のもと、水木さんの功績を称える活動が繰り広げられたのです。
一方、境港市では水木さんへのメッセージを絵はがきで募集し、11月29日から30日にかけてエントランスに展示する企画が実施されました。全国から寄せられた温かいメッセージが展示される光景は、水木さんがいかに多くの人々に愛されているかを象徴する光景といえるでしょう。
豪華ゲストが登壇したアニメ特別上映会
今年の「ゲゲゲ忌2025」では、声優の高山みなみさんや沢城みゆきさんといった豪華ゲストが登壇したアニメ特別上映会も開催されました。水木さんの代表作品のアニメを上映し、作品に関わった関係者やファンが一堂に集まり、水木さんの遺徳を偲ぶ時間を過ごしたのです。
これらのイベントは、単なる追悼式典ではなく、水木さんの創作の精神と作品の魅力を新たに伝える機会として機能しています。子どもから大人まで、多くの人々が参加することで、水木さんの遺した文化的な遺産が世代を超えて受け継がれていくことを実感させてくれるのです。
戦争を乗り越えて生まれた創作活動
水木しげるさんの人生を語る上で欠かせないのが、太平洋戦争での過酷な戦場体験です。本名を武良茂といった水木さんは、戦中にニューブリテン島での激戦で左腕を失うという大けがを負いました。敵機の爆撃による重傷、その後の麻酔のない状態での左腕切断手術など、生死の狭間を何度も経験したのです。
しかし、こうした困難な人生経験こそが、水木さんの豊かな想像力と深い人間観察眼を養いました。戦後、復員兵として日本に帰国した後、紙芝居作家としてのキャリアを経て、漫画家へと転身した水木さんは、自らの経験を糧に、妖怪や民俗文化についての独特の世界観を作品に込めていきました。
『ゲゲゲの鬼太郎』に登場する妖怪たちは、決して単なるファンタジーの産物ではなく、日本の民俗文化と深く根ざしたものです。水木さん自身が妖怪研究家でもあり、広島県や鳥取県などの地域を回って、民間伝承や妖怪の伝説を収集し、それを漫画という表現形式で現代に蘇らせたのです。
幅広い年代に愛される理由
今なお水木さんの作品が幅広い年代に愛され続ける理由は、作品の普遍性にあります。『ゲゲゲの鬼太郎』は、昭和の高度経済成長期に連載が開始され、現代にいたるまで何度もアニメ化や映画化されてきました。その過程で、各世代の人々が水木さんの世界観に触れ、自らの想像力を刺激され、妖怪や民俗文化への関心を深めていったのです。
また、水木さんの作品には、深い人生経験から生まれた優しさと哲学性があります。表面的には奇想天外な妖怪の物語でありながら、その底流には人間への温かいまなざしと、生きることの本質についての問いが流れているのです。このような多層性が、作品を時代を超えて生き続けさせているのだと考えられます。
文化功労者として認められた業績
2010年には、水木さんは文化功労者に選ばれました。この栄誉は、日本の文化に対する多大な貢献を認めるものであり、漫画という表現形式を通じて、日本の民俗文化や妖怪の世界を世界に発信した功績が高く評価されたことを意味しています。
さらに、水木さんは調布市の名誉市民、東京都の名誉都民、鳥取県の名誉県民としても認められており、複数の自治体から敬意を払われています。故郷の境港市と、長年暮らした調布市の両方が毎年ゲゲゲ忌を開催し、水木さんを偲ぶ活動を続けていることは、この敬意の表れといえるでしょう。
天国の水木さんへ届く感謝の思い
11月30日、SNSを中心に全国から水木さんへの感謝の言葉が寄せられました。子ども時代に『ゲゲゲの鬼太郎』を見て育った人々が、今度は親として、または大人として、再び水木さんの作品に向き合い、その魅力の深さに気づく。このような世代を超えた繋がりが、毎年ゲゲゲ忌を通じて再確認されているのです。
水木さんが残した漫画作品、妖怪研究の成果、そして戦争という苦難を乗り越えて創造し続けた精神は、今も多くの人々の心に生き続けています。逝去から10年が経った今、ファンからの温かい思いが天国の水木さんに届いているに違いありません。
これからも愛され続ける水木しげるの世界
2013年から『水木しげる漫画大全集』の刊行も開始されており、水木さんの全作品を系統立てて後世に伝える取り組みも進められています。このような努力と、ゲゲゲ忌をはじめとするイベントの継続により、水木さんの創作の精神と作品の価値が永遠に保存され、伝承されていくでしょう。
妖怪への深い造詣、戦争体験から生まれた人間への優しさ、そして卓越した漫画表現技法。これらすべてが融合した水木しげるさんの世界は、今後も多くの人々を魅了し続けるに違いありません。天国の水木さんも、自分の作品が今もなお愛されていることに、微笑んでいるのではないでしょうか。



