諏訪町の伝統が息づく「長崎くんち」2025――青龍と白龍が舞う勇壮な龍踊、その舞台裏に迫る
長崎の秋の風物詩「長崎くんち」とは
長崎くんちは毎年10月7日から3日間にわたり、長崎市の氏神・諏訪神社で行われる秋季大祭です。寛永11年(1634年)に始まり、380年以上の歴史ある祭りとして、地元はもちろん全国からも多くの観光客が訪れます。「くんち」とは“供日”が訛った言葉で、神様への奉納を意味します。毎年、地元の踊町が趣向を凝らした出し物(演し物)を披露し、人々の目を楽しませています。
諏訪町の「龍踊」――優雅さと勇壮さを兼ね備える舞
その中でも諏訪町の「龍踊」(じゃおどり)は、長崎くんちを代表する演し物として知られています。中国の雨乞い神事が起源とされ、五穀豊穣の願いを込めて奉納されます。諏訪町では、朱と青の「青龍」と「白龍」の二頭が豪快かつ優雅に舞う「双龍の舞」を披露します。その名の通り、二頭の龍がスピード感たっぷりに交差し、勇壮で美しい舞を繰り広げます。
- 龍踊の構成:ドラマチックな「玉追い」から始まり、龍が不思議な力をもたらすとされる玉を追い求める「玉探し(ずぐら)」、そして再び力強い「玉追い」へと展開します。
- 注目の棒交代:「龍の動きを止めることなく、棒を持ち替える“棒交代”」は、息を飲む大技です。黒と白の衣装を身に着けた龍方たちが一瞬で入れ替わる瞬間は、会場からどよめきが起こるほどの迫力です。
- 子どもたちの活躍:子龍・孫龍と呼ばれる小さな龍を操る子どもたちも参加し、会場の和やかな雰囲気を作り出します。
総勢200人の大所帯――熟練者が支える舞台
2025年の龍踊は16回目の総監督を務めるベテランや、足掛け70年になる熟練者の存在が大きな支えとなっています。約200名にも及ぶ諏訪町のメンバーが一丸となり、毎年練習に励みます。各世代が技や精神を継承し、息の合った舞を作り上げているのです。
また、舞台裏でも進行や演者の体調管理、衣装や装置のメンテナンスなど多くの役割が存在します。経験豊かな長老たちが若手を指導し、一人ひとりの細やかな動きや気配りによって、祭りの安全と感動が守られています。
手に汗握る演技の裏で――参加者それぞれの思い
例えば、龍を操る9歳の榎津町の古賀優多さん。終わった後の「網よ開け!」の瞬間に溢れる緊張感を乗り越え、舞台を終えた充実感と得難い経験を語る姿は、まさにくんちが世代を超えて生き続ける祭りであることを感じさせます。
伝統を支えるのは、舞台に立つ人だけではありません。準備や練習に携わる多くの人の情熱と連帯が、くんちの底力となっています。
2025年の長崎の天気と長崎くんち――本番に向けて
今年(2025年)の長崎くんちは、例年よりも暑さの厳しい「真夏日」に見舞われる予想となっています。庭見せや人数揃いと言った本番前の準備期間には雨天の可能性もありましたが、7日からの祭り本番は晴天で、日中は気温が30度を超える見込みです。
- 見学の際はこまめな水分補給や暑さ対策を忘れずに行いましょう。
- 屋外での長時間に備えて帽子や日傘の準備が推奨されます。
- 特に高齢の方や小さなお子様は、熱中症対策として日陰での休憩や早めの移動を心がけてください。
諏訪町の出演者らも、例年以上に体調管理や衣装の調整など、暑さを意識した準備を進めています。本番では、安全第一を意識しながら、一人ひとりが最高の演技を届けるべく努力が続きます。
長崎くんちを支える他の踊町と演し物
今年の長崎くんちでは、諏訪町以外にも多彩な踊町が各自の伝統を競い合います。ここでは注目の町をご紹介します。
- 西古川町:「櫓太鼓・本踊」――勇壮な太鼓の響きが響き渡ります。
- 新大工町:「詩舞・曳壇尻」――艶やかな舞とスピード感のある曳き回しが魅力。
- 榎津町:「川船」――荒波を越える勇壮な船回しは圧巻です。
- 賑町:「大漁万祝恵美須船」――3隻の船が織りなす豪華な踊りで大漁を祈ります。
- 新橋町:「本踊・阿蘭陀万歳」――異国情緒と長崎らしさが融合する演し物です。
いずれも町の誇りと心意気が込められており、それぞれが受け継ぐ伝統や工夫が観客を魅了します。
長崎の空に舞う伝統――くんちの意義と魅力
長崎くんちは、単なる祭りとしてだけでなく、地域の絆や世代を超えた継承の象徴となっています。出演者一人ひとりに込められた情熱と誇り、そして日々の練習や準備に裏打ちされた連帯感は、見学者の心に感動をもたらします。
また、「見て・聴いて・感じて・参加して」体感できる祭りとして、訪れる人々には五感すべてで楽しんでもらえるでしょう。青龍と白龍が空高く躍る姿は、秋の澄んだ空気の中で一層映え、観る者を非日常の世界に誘います。
おわりに――未来へつなぐ伝統の灯
2025年の長崎くんちは、天候や世代交代など様々な変化の中でも、地域の伝統と心がしっかりと息づいていることを示す祭りとなりそうです。諏訪町の青龍と白龍による勇壮で美しい舞、そしてそれを支える多くの人々の努力を、ぜひ現地で五感で体感してみてください。
来年も、またその次の世代にもしっかりと受け継がれるであろう「長崎くんち」の灯。秋空の下、長崎全体が一つになる熱気と感動に包まれる3日間が、いよいよ幕を開けます。