絶滅危惧種サシバの保護を訴え、伊良部島でパトロールと飛来調査が行われました

2025年10月9日、沖縄県宮古島市の伊良部島で、絶滅危惧種に指定されているタカの仲間「サシバ」の飛来調査と保護を訴えるパトロールが行われました。このイベントは、県や地元の野鳥の会、子どもたちなどさまざまな立場の人たちが協力し、サシバが安心して羽を休めることができる自然環境の大切さを地域に広めようと開催されました。

サシバとはどのような鳥なのでしょうか?

サシバはタカ科に属する渡り鳥で、毎年秋になると本州などで生まれた若鳥たちが、東南アジアで暖かい冬を越すために南へと旅をします。この長い旅の途中、伊良部島はサシバにとって大切な中継地点、休息地となっています。宮古島市の市の鳥にも指定されており、地域の人々にも親しまれています。

ところが近年、サシバの飛来数が年々減少していることが大きな課題となっています。2024年の調査では7,771羽が確認されたものの、過去4回の中でも4番目に少ない数字であり、絶滅の危機が現実のものとなりつつあります。減少の原因としては、生息地の環境変化や開発による影響、気候変動などが考えられています。

子どもたちや地域が取り組むサシバ保護活動

伊良部島小中学校では、毎年この時期に全校生徒と教職員が参加する「サシバ保護集会」を実施しています。今年も10月8日に集会が開かれ、サシバの生態や絶滅の危機について学び、全員でサシバ保護宣言を唱和し、保護意識を新たにしました。集会では、サシバ保護をテーマにしたポスターの表彰も行われ、子どもたちの柔軟な発想と関心の高さがうかがえました。

また、集会後には地域一斉のパトロールも実施。子どもたちが先頭に立ち、サシバの大切さや自然を守ることの重要性を広報パレードで呼びかけました。参加した伊良部島小中学校の下地煌菜さんは「私たちの活動でサシバが安心して休める場所を守りたい」と決意を語り、地域の大人たちもその言葉に大きな期待を寄せています。

専門家による飛来調査の開始

10月8日には、沖縄県自然保護課や宮古野鳥の会のメンバーなどが伊良部地区津波避難施設(屋上避難ステージ)に集まり、双眼鏡を使ってサシバの飛来数を調査しました。初日の速報値では、191羽のサシバが確認されました。この調査は21日まで続けられる予定です。

調査は年々減少するサシバの実態を正確に把握し、今後の保護活動に役立てるのが目的です。沖縄県環境部自然保護課の川崎浩明班長は「毎年、飛来数を調査することでサシバの状況がわかってきます。調査結果を踏まえて環境保全活動につなげていきたい」と語っています。

2024年の調査では、天候が良かったこともあり、一部のサシバが伊良部島で休息せず、さらに南下して石垣島や西表島まで渡った可能性も指摘されています。こういった気象条件や環境変化も、飛来数に大きな影響を与えていることがわかりました。

伊良部島の自然環境とサシバの未来

伊良部島は、サシバのほかにも多くの動植物が共生する貴重な自然が残る場所です。しかし、開発や気候変動の影響で、サシバだけでなく、島の生態系全体が変化しつつあります。そのため、サシバを守ることは、伊良部島の自然を守ることにつながると、地域の人々は考えています。

子どもたちや大人たちが協力して行う保護活動が、今後さらに広がることで、サシバの減少に歯止めをかけられるかもしれません。また、国際的な連携も進んでおり、サシバの越冬地や繁殖地が日本、台湾、フィリピンなど多国にまたがることから、国際サシバサミットも定期的に開催されています。

まとめと今後の課題

伊良部島でのサシバ保護活動は、地域一丸となった取り組みが始まっていることを示しています。子どもたちが中心となり、専門家や行政が協力して調査や広報活動を進めている姿勢は、今後の自然保護活動のモデルとなる可能性を秘めています。

しかし、サシバの保護にはまだ多くの課題が残されています。飛来数の減少傾向を食い止められるかどうか、地域と行政、そして国際的な連携がどこまで進むかが今後のカギとなるでしょう。

伊良部島の美しい自然と、その象徴ともいえるサシバが、末永く健やかに羽を休めることができるよう、地域の人々、そして私たちひとりひとりができることから始めていきたいものです。

  • サシバの生態と保護活動の意義について、もっと知りたい人へ:宮古島市や野鳥の会が行う観察会や講演会にぜひ足を運んでみてください。
  • 子どもたちの取り組みを応援したい方へ:地元の学校やイベントの様子は、新聞やテレビでも随時紹介されています。活動の輪が広がるよう、関心を持ち続けることが大切です。
  • 一人ひとりができること:自然観察を通じて地域の動植物の現状を知り、無理のない範囲で保護活動に参加したり、広めたりするのも良いでしょう。

伊良部島のサシバを守る活動は、まだ始まったばかりです。皆さんもぜひ、地域の取り組みに目を向けてみてください。

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