乗鞍岳の魅力再発見――ホシガラスの「貯食」シーンとライチョウルートのバスツアー

2025年9月。標高3,000メートル級の峰々が連なる乗鞍岳で、今、見逃せないふたつの話題が多くの登山者や自然愛好家の注目を集めています。ひとつは高山帯の“隠れアイドル”ともいえるホシガラスが見せる貴重な「貯食」行動。そして、もうひとつは乗鞍ライチョウルートを巡るバスツアーの開催です。この記事では、乗鞍岳での最新の自然観察の記録と、現地で体験できるエコツーリズムを、初心者にも分かりやすい言葉で詳しくお伝えします。

ホシガラス――乗鞍岳のもうひとつの住人

乗鞍岳の高山帯、特に畳平周辺のハイマツ帯(這松帯)。ここで暮らす生き物として、まず話題に上るのが国の特別天然記念物でもあるライチョウですが、実はもうひとつ、見逃せない存在がいます。それがホシガラスです。「星」とあるとおり、全身は黒褐色の羽で覆われ、背中やお腹に散りばめられた白い水玉模様が特徴的です。
ハイマツの枝にとまる姿や、山小屋の屋根で羽を休める様子、しわがれた「ガァ、ガァ」という特徴的な声も、山の静寂を破る自然なBGMとなっています。名前にカラスとつきますが、一般的なカラスとは雰囲気も鳴き声も異なり、気まぐれに人の近くにやってくることもあります。

山林を育てる「隠れアイドル」ホシガラスの貯食行動

今話題となっているのが、ホシガラスの「貯食」シーンの目撃です。高山帯の林を守り、育てる存在として、その生態が再評価されています。
ホシガラスは、夏から秋にかけて実をつけるハイマツの種子をくわえ、その一部を「喉袋」に一時的に溜めて、冬や餌が少ない時期のために地面や岩陰などあちこちに埋めて隠す習性を持っています。この独特の貯食行動は、「林を育てる」とも呼ばれ、彼らが地中に埋めて忘れたハイマツの種子がやがて芽吹き、やがて新たな高山林が生まれる重要な自然サイクルを形作っています。

  • ホシガラスの貯食は見逃してはならない自然現象です。2025年9月初旬、畳平周辺のハイマツ帯で、登山者やカメラマンの前で貴重な貯食シーンが観察され、大きな反響を呼びました。観察者によると、裸地に降り立ったホシガラスが喉袋からハイマツの種子を取り出し、器用に地面に埋めていたという様子が記録されています。
  • 生態系のキープレーヤーであるにもかかわらず、登山者にはまだあまり知られていません。多くの観光客が「今、飛んだのはライチョウですか?」と問う場面が多いものの、「今のはホシガラスですよ」と応えると、「ああ、そうですか……」と少しがっかりした表情が見られるのも現実です。

しかし、よく観察してみれば、その動きや美しい羽模様、森を守る役割など、知れば知るほど魅力を感じずにはいられない存在がホシガラスです。ライチョウの陰に隠れがちな彼らの姿を、この機会にぜひ知ってほしいと思います。

ハイマツとホシガラスの共存共栄

ハイマツとホシガラスの関係は「運命共同体」ともいえるほど密接です。ハイマツがたわわに実らせる松ぼっくり、その中の種子は栄養価が高く、ホシガラスの主な食料源になります。そしてホシガラスは、その種子をあちこちに運び貯食することで、結果的にハイマツの分布を広げ、高山帯の林の再生や維持に大きく貢献しています。
この互恵関係があることで、乗鞍岳周辺は豊かな高山林としての生態系が保たれてきました。現地での観察を通じて、生物多様性や自然のつながりについて考えを深めるきっかけにもなります。

秋の高原で自然観察――「乗鞍ライチョウルート」バスツアー開催

2025年9月、乗鞍岳では「乗鞍ライチョウルート」を巡るバスツアーが12日まで開催されています。これは、貴重な高山生態系と出会う絶好の機会です。
ライチョウだけでなく、ホシガラスやハイマツなど、標高2,500mを超える高原の自然に触れながら、ガイドの解説付きで豊かな観察ができるプログラムです。バスで各観察ポイントをめぐり、山の厳しい環境に適応した生き物たちの暮らしを間近に体感できます。

  • 初心者も安心:ガイド付きなので、普段は見逃しがちな動植物や景観の成り立ちについても学ぶことができます。
  • 各ポイントで違う風景: 畳平や位ヶ原など、標高や地形によって多様な動植物や展望が楽しめます。
  • 貴重な野生動物の観察チャンス:運が良ければ、ライチョウやホシガラスの姿を観察できるほか、ハイマツやナナカマド、秋の高山植物も見ごろです。

この時期の乗鞍岳は、下界の暑さが嘘のように涼しく、秋のさわやかな風を感じながらの散策が楽しめます。自然観察を楽しみたい方、お子様と一緒に家族で訪れたい方、そして山や動植物に興味を持ち始めたばかりのビギナーさんにもおすすめのイベントです。

乗鞍岳の大切な自然を未来へ

近年、地球温暖化や観光圧による自然環境への影響が危惧されています。ライチョウの生息環境やハイマツ帯の健全さを保つためにも、私たち一人一人が現地でのマナーを守り、貴重な生態系への影響を最小限にとどめる努力が求められます。
ホシガラスの貯食シーンを静かに観察し、写真を撮る際も、無理に近付き過ぎず、動物たちのストレスにならぬよう配慮しましょう。
一方、乗鞍エリアで実施されるツアーやエコガイド活動にも積極的に参加し、現地スタッフやガイドの指導を受けることは、自然保護の第一歩です。

おわりに――乗鞍岳でしか出会えない感動を

ホシガラスの貯食、ライチョウの姿、ハイマツの森、高山植物が織りなす乗鞍岳の大自然。それらは決して当たり前のものではなく、長い年月をかけて育まれてきた奇跡です。
今回のニュースや観察、バスツアーをきっかけに、山の奥深さや生き物のつながりへも目を向けてみませんか。
静かで雄大な乗鞍岳で、きっとあなたも「新しい発見」と「小さな感動」に出会えるはずです。

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