秋の訪れを告げる「高千穂ひのかげくり」――豊かな自然と伝統を支える宮崎・高千穂地域の栗出荷最前線
はじめに
秋の気配が感じられる今日この頃、宮崎県北部の高千穂町や日之影町では、特産品である「高千穂ひのかげくり」の出荷が本格的に始まりました。豊かな自然に囲まれたこの地域は、全国有数のクリの産地として高い評価を得ています。今年もまた、丹精込めて育てられた栗が、秋の味覚として食卓を彩ります。
「高千穂ひのかげくり」とは
「高千穂ひのかげくり」は、宮崎県高千穂町と日之影町で生産されている栗のブランドです。この地域は標高が高く、朝晩の寒暖差が大きいことから、実がしまり、甘みの強い栗が育つとされています。また、肥沃な土壌と清らかな水資源に恵まれ、古くから栗栽培が盛んに行われてきました。
- 標高差と豊富な自然環境が実の締まった濃厚な味わいを実現
- 生産者の手で厳選された高品質な栗
- 例年、全国の和菓子店や県内外の市場に出荷される
2025年の出荷の様子と特徴
2025年の「高千穂ひのかげくり」は、天候に恵まれ順調に生育しました。日之影町のJAみやざき集出荷場では、各農家から集まった栗約300キロが仕分け機にかけられ、サイズごとに選別・箱詰めされて、愛知・岐阜方面へと出荷されています。
特に今年は、日中の適度な暑さと適度な降雨量が続いたことで、栗の糖度が高く、身が詰まった出来となりました。プロの目と最新の機械を使って厳選されるため、出荷された栗はいずれも質の高さが自慢です。
収穫から出荷までの流れ
栗の収穫は、8月下旬から10月上旬まで。これにあわせて、出荷作業もピークを迎えます。
- 栗農家が一つ一つ手作業で収穫
- JAみやざきの集出荷場に搬入
- 選果機で大きさを自動判別
- さらに人の目で傷や虫食いの有無をチェック
- 基準を満たした栗だけが箱詰めされ出荷
今年は約75トンもの出荷が予定されており、その大半は和菓子や栗きんとんなどの加工品用として県外の老舗店に届けられます。また、一部は地元宮崎県内でも販売され、ふるさとの味として親しまれています。
生産農家の思いと地域の誇り
高千穂・日之影の栗農家は、世代を超えて栗栽培の技を継承してきました。農産指導係・梅田隆成さんは、「今年も天候に恵まれ、美味しい栗ができあがりました。ぜひ多くの皆様に召し上がってほしい」と自信を覗かせます。
「高千穂ひのかげくり」はそのほとんどが一大消費地の岐阜県中津川市や愛知県の市場へ、栗きんとんや和菓子として姿を変えて食卓に届きます。地域の自然と人の手が生み出す伝統の味は、秋ならではの特別な楽しみとして全国に広がっています。
地域の自然と産業について
高千穂町・日之影町は宮崎県の北端に位置し、約91%が山林という自然豊かな土地です。日之影町はユネスコエコパークや世界農業遺産にも認定されるほど、貴重な動植物や美しい景観が守られています。栗に限らず、原木椎茸や米などの農産物も豊かに育まれ、地域の食文化や観光を支えています。
また、地元では四季折々の神楽や文化行事も盛んで、秋は収穫祭や栗にまつわるイベントで賑わいます。特に栗の季節は、多くの観光客が訪れ、地域の賑わいにも一役買っています。
美郷町における栗の取り組み
隣接する美郷町でも、秋の味覚である栗の出荷が始まっています。美郷町は高千穂・日之影町と同様に自然豊かで、多くの栗農家が伝統的な技術を守り、地域産業に熱心に取り組んでいます。
- 地元大学との連携による農業振興
- コミュニティ活性化策の実践
- 観光と農業体験の融合による地域活性化
生産された栗は、宮崎県内外の市場のみならず、直売所やイベントなどでも販売され、地元住民や観光客に親しまれています。
「高千穂ひのかげくり」の味わいと用途
「高千穂ひのかげくり」は
- 粒が大きく
- 甘みが強く
- ほくほくとした食感
という特色があります。特に和菓子の素材として選ばれることが多く、栗きんとんや栗饅頭、モンブランなど様々な加工品に使われています。
また、地元飲食店では、栗ご飯や栗の天ぷら、季節限定のスイーツなども登場し、多くのファンを魅了しています。産地ならではの新鮮な栗は、シンプルに茹でてそのまま味わうのも格別です。
消費者へのメッセージとこれから
生産者・JA関係者ともに「今年も自信を持って出荷できる栗が採れました。手塩にかけた秋の味覚をぜひ一度、ご賞味ください」と語っています。
「高千穂ひのかげくり」の出荷は10月上旬まで続きます。今年の栗の豊作は、自然と人の営みがもたらす秋の贈り物。買い求めの際は、ぜひその背景にある地域の歴史や自然環境にも思いを馳せてみてください。
高千穂や日之影、美郷町など、宮崎県北部の山里が育んだ秋の味覚は、これからも地域の誇りとして、多くの食卓に笑顔を届けてくれることでしょう。