龍谷大学で語られた「音楽のちから」と、広がる外国人材議論――社会の今をつなぐ3つのニュース

龍谷大学で行われた特別授業「音楽のちから」をめぐる取り組みと、UR団地で話題になっている外国人居住者の増加、さらに企業による外国人材受け入れの実態調査――これら一見別々に見えるニュースは、じつは「多様性」と「共生社会」というキーワードでゆるやかにつながっています。
本記事では、龍谷大学の教育現場での試みを入り口に、日本社会が直面している外国人受け入れや労働力、難民と移民の違いなどのテーマを、わかりやすく丁寧にひもといていきます。

「ヤバイTシャツ屋さん」こやまたくやさんが龍谷大学に登場

人気ロックバンド「ヤバイTシャツ屋さん」のギターボーカルとして知られるこやまたくやさんが、龍谷大学心理学部の授業「キャリアデザイン論」に特別講師として登場し、「音楽のちから」をテーマに学生たちと語り合う特別授業が行われました。

この特別授業は、龍谷大学心理学部の授業「キャリアデザイン論」の一環として実施されたものです。龍谷大学では、学生が自分の進路や生き方を主体的に考えられるように、学部ごとにキャリア教育やキャリア啓発科目を充実させているのが特色です。
今回のように、実際に第一線で活躍するアーティストや社会人をゲストとして招く取り組みは、学生が将来を考えるうえで、教室の外のリアルな世界とつながる貴重な機会になっています。

「音楽のちから」とキャリアデザイン――学生が学んだこと

特別授業では、こやまたくやさんが、自身のバンド活動や音楽制作の経験を通して、

  • 音楽が人の心に与える影響
  • 言葉では届きにくいメッセージを伝える表現の力
  • クリエイティブな仕事とキャリア形成の結びつき

といったテーマを学生たちと共有しました。

音楽は、喜びや悲しみ、孤独感や連帯感など、言葉だけでは整理しにくい感情をそっと受け止めてくれる存在でもあります。心理学部の学生にとって、「音楽のちから」を考えることは、人の心の動きやコミュニケーションのあり方を学ぶことにもつながります。

また、こやまたくやさんが歩んできたキャリアの道のり、バンド活動を仕事として続けるうえでの責任感やチームワーク、ファンや社会との関わりなどは、音楽業界を目指す学生だけでなく、「自分らしい生き方」を模索する多くの学生にとって大きなヒントになったはずです。

龍谷大学のキャリア教育と「社会とつながる学び」

龍谷大学は、建学の精神を踏まえながら、社会のさまざまな課題に向き合える人材の育成を重視しており、学部横断でキャリア支援や実践的な学びを推進しています。
特に事業計画などでも、「キャリア啓発科目」「キャリア形成支援」の充実が位置付けられており、在学中から自分の将来像を具体的に描けるような仕組みづくりが進められています。

法学部では「キャリアデザイン」「司法実務特別講義」といった科目を体系的に開講し、卒業生など社会人が学生にアドバイスを行うメンターシッププログラムも取り入れています。心理学部の「キャリアデザイン論」も、こうした「社会とつながる学び」の流れの中に位置づけられています。

今回の特別授業のように、音楽や芸術、エンターテインメントの世界で活躍する人を招く試みは、就職活動の枠にとどまらない「キャリア」の広がりを学生に示してくれるものです。
「安定した仕事」だけを目指すのではなく、「自分が何に心を動かされるのか」「社会にどう関わりたいのか」を考えるきっかけとして、音楽というテーマは非常に親しみやすく、かつ奥行きのある題材となっています。

UR団地に広がる外国人居住と「日本人ファースト」論争

一方で、社会全体に目を向けると、「共生」や「多様性」をめぐる議論がさまざまな場面で起きています。その一つが、UR団地(都市再生機構の賃貸住宅)における外国人居住者の増加をめぐるニュースです。

一部のUR団地では、入居者の中で外国人の割合が高まり、「外国人が溢れかえっている」といった表現とともに、治安や生活マナーへの不安、地域コミュニティの変化などを懸念する声が紹介されています。こうした状況から、「日本人ファースト」を掲げ、日本人を優先すべきだという主張も出ています。

しかし同時に、日本は少子高齢化と人口減少が加速しており、地域によっては空き家や空き住戸が増えている現実もあります。UR団地に外国人が住むことは、家賃収入や地域の人口維持にとってプラスに働いている面もあり、一概に「問題」とだけ捉えることはできません。

このニュースは、私たちに次のような問いを投げかけています。

  • 暮らしの場における多様性と安心感を、どう両立させるのか
  • 言葉や文化が異なる人と、どのように共生していくのか
  • 「日本人ファースト」という考え方は、何を守り、何を排除してしまうのか

単に賛成・反対を競うのではなく、それぞれの立場にある不安や願いを丁寧に見つめることが求められます。

日本経済は「外国人労働者なし」で回るのか

UR団地の話題とも関連して語られているのが、「日本経済は外国人労働者無しでも回るのか」というテーマです。
一部では、「まず日本人の雇用や生活を優先すべきだ」「外国人を受け入れ過ぎると社会が不安定になる」といった意見も根強く存在します。

しかし現実には、介護、建設、農業、飲食、宿泊など、多くの現場で人手不足が深刻になっており、その一部を外国人労働者が支えていることは広く指摘されています。
日本人だけで今の経済規模や生活水準を維持できるのか、という問いに対しては、慎重な検証が欠かせません。

さらに、ニュースの中では、海外の研究結果などをもとに「難民」と「労働移民」の違いが紹介され、「誰を、何の目的で受け入れるのか」という視点が重要であることが示されています。

海外研究が示す「難民」と「労働移民」の違い

「外国人」とひとくくりにされがちですが、その背景や立場は大きく異なります。特にニュースで取り上げられているのが、難民労働移民の違いです。

  • 難民:戦争や迫害などから逃れるために、やむをえず故郷を離れた人々。保護されるべき立場にあり、人道的支援が重視される。
  • 労働移民:より良い仕事や生活を求めて、自らの意思で国境を越えて移動する人々。経済政策や労働市場の議論と密接に関わる。

海外の研究では、難民受け入れが長期的には経済成長にプラスに働くとの分析や、労働移民が特定の産業の生産性を高める一方で、受け入れ側の社会制度やサポート体制が不十分な場合には摩擦が生じやすいといった指摘もあります。
つまり、「外国人を受け入れるかどうか」だけでなく、「どのような立場の人を、どのようなルールと支援のもとで受け入れるのか」が重要ということです。

企業経営者の7割が感じる「外国人材による組織の活性化」

こうした社会的議論とは対照的に、企業の現場では、外国人材の受け入れをプラスに評価する声が少なくありません。
G.A.コンサルタンツ株式会社が実施した「外国人材の受け入れによる組織の変化に関する実態調査」によれば、外国人材を受け入れている企業の経営者の約7割が、「組織が活性化した」と回答しています。

具体的には、次のような変化が挙げられています。

  • 社内のコミュニケーションが活発になった
  • 日本人社員の意識が変化し、視野が広がった
  • 新しいアイデアや価値観が仕事に取り入れられた
  • 海外展開やインバウンド対応など、新たなビジネスチャンスにつながった

もちろん、言語の壁や文化の違いから、最初は戸惑いやトラブルが生じることもあります。それでも、多くの企業が「受け入れてよかった」と感じている背景には、適切なサポートや制度づくりを行えば、多様性は組織の力になるという実感があると考えられます。

「日本人ファースト」とどう向き合うか

UR団地のニュースや、日本経済は外国人労働者なしで成り立つのか、という問いかけの背景には、「自分たちの生活が脅かされるのではないか」という不安があります。
家賃、仕事、治安、教育環境など、日々の暮らしに直結する問題だからこそ、感情的な対立が起きやすくなる側面もあります。

一方で、企業の調査が示すように、実際に外国人材と一緒に働いている現場では、「多様なメンバーがいることで学びが増えた」「若い社員が刺激を受けた」といった前向きな変化が起きていることも事実です。

「日本人ファースト」という言葉には、守りたいものを守ろうとする気持ちが込められている一方で、「自分たちと違う人」を遠ざけてしまう危うさもあります。
大切なのは、「誰か一方だけが我慢する」関係ではなく、お互いに安心して暮らし、働けるルールや環境をどう整えるかを考えることです。

龍谷大学の学びと社会課題――学生が向き合うべきテーマ

こうした社会の動きは、大学で学ぶ学生たちにとっても無関係ではありません。むしろ、龍谷大学のようにキャリア教育や社会課題への取り組みを重視する大学では、授業やゼミ、課外活動を通じて、これらのテーマに触れる機会が増えています。

例えば、今回の「音楽のちから」をテーマにした特別授業をきっかけに、

  • 音楽や文化が、異なる背景を持つ人々をつなぐ力
  • マイノリティや弱い立場の人の声を、表現を通じて社会に届ける方法
  • エンターテインメントと社会問題、ビジネスをどう結びつけるか

といった問いを深めていくこともできるでしょう。

また、心理学、法学、経済学、社会学など、学問分野ごとに見える景色は少しずつ異なります。
心理学部であれば「偏見や差別はなぜ生まれるのか」、法学部であれば「外国人の権利や制度はどうなっているのか」、経営系の学部であれば「多様な人材がいる組織はなぜ強くなるのか」など、それぞれの専門性を通じて、社会のニュースを自分ごととしてとらえることができます。

「音楽」と「多様性」が交わるところへ

こやまたくやさんの音楽活動は、明るくユニークな歌詞やキャッチーなメロディで、多くのリスナーに愛されています。その一方で、ライブハウスという場は、年齢も職業も国籍も違う人が集まり、一体感や解放感を共有できる、ある意味で「多様性の交差点」ともいえる空間です。

音楽は、言葉が十分に通じなくても、リズムやメロディを通じて気持ちを共有できる力を持っています。これは、異なる文化や背景を持つ人が共に暮らし、働く社会において、とても大きなヒントになります。

外国人住民が増えるUR団地、外国人材を受け入れる企業、そして、多様性の中で自分のキャリアを考える大学生。
そのどれもが、「違い」をきっかけに、対立ではなく学び合いと創造につなげていけるかどうかの、試される場でもあります。

これからの社会をつくる世代へ

龍谷大学で行われた特別授業「音楽のちから」は、単なるゲスト講演ではなく、これからの社会をどう生きていくかを学生一人ひとりに問いかける時間でもあったはずです。

日本社会は今、労働力不足や少子高齢化、外国人の受け入れ、難民問題など、多くの課題に直面しています。
その中で、大学で学ぶ若い世代には、

  • ニュースをただ消費するのではなく、自分の言葉で考え、語ること
  • 異なる背景を持つ人と協力し、新しい価値を生み出すこと
  • 自分自身の「キャリア」と「社会への関わり方」を結びつけて考えること

が求められています。

音楽、UR団地、外国人材、難民、企業、大学――一見バラバラに見えるニュースも、視点を変えれば「多様な人が共に生きる社会をどうつくるか」という一本の線でつながっています。
龍谷大学の教室で交わされた対話が、こうした大きな問いに向き合う最初の一歩になっていくことが期待されます。

参考元