ローマ・コッペデ地区100周年と国際オーディオビジュアル市場MIA2025の開催――変わる首都ローマの今
はじめに
2025年9月、イタリアの首都ローマでふたつの大きな出来事が注目を集めています。「コッペデ地区(Quartiere Coppedè)」が100周年を迎えたこと、そして第11回 ローマ国際オーディオビジュアル市場「MIA2025」が盛大に開催されたことです。本記事では、それぞれの背景と現在の姿、ローマという都市に流れる時間の重なりについて、わかりやすくご紹介します。
コッペデ地区100周年――幻想建築の街区、その歴史と魅力
異彩を放つコッペデ地区の誕生
ローマの北東部、サラリア街道とノメンターナ街道の間に位置する「コッペデ地区」は、その名の由来となった建築家ジーノ・コッペデ(Gino Coppedè)によって、1913年から1927年にかけて設計・建設されました。時は第一次世界大戦をまたぐ激動の時代、イタリアはまだ統一から間もない若い国家でした。新しい首都ローマにふさわしい高級官僚たちの住宅地として構想され、今では17の邸宅と26もの小さなアパートが美しい街並みを形成しています。
折衷主義の極致――唯一無二の建築様式
コッペデ地区の建築群の特徴は「折衷スタイル」と呼ばれる、さまざまな芸術様式の調和にあります。中世やルネサンス、バロック、アールヌーヴォー、ゴシック、そして時にはエジプト風までもが大胆に融合されています。
建物のファサード(外観)から装飾、ライトやアイアンワークに至るまですべてにおいて、コッペデの芸術的なこだわりが貫かれており、一時は「悪趣味」と評されることすらありましたが、近年はその奇抜さや独創性が再評価されています。
- 18棟のアパートと9棟の一軒家が建設されたという記録もあり、全体で31,000平方メートルの敷地に配置されている点も特筆すべきです。
- 街区内には有名な「ミンチョ広場(Piazza Mincio)」や「大使たちの館(Palazzo dei Ambasciatori)」など、訪れる人を魅了する名所が点在しています。
コッペデ建築のディテールと散策の楽しみ
コッペデ地区の住宅群は、どれも同じものがなく、多様なデコレーションが各所に詰め込まれています。鍛造ランプや華やかな彫像、モザイクなど、細部まで創意工夫が凝らされており、散策するたびに新しい発見があります。例えば大きなアーチのようなゲートをくぐると、別世界に迷い込んだかのような非日常的な感覚が味わえます。
歴史の重みと現代の活気
100年の歩みを経て、今では各国の大使館に活用されている邸宅も多く、国際色豊かな雰囲気が漂います。近隣住民だけでなく、世界中から観光客や建築研究者が訪れ、ローマの歴史的市街地の中でも「隠れた名所」として定評があります。高級住宅地としての格式を保ちつつ、独自の文化と歴史を現在に伝え続けています。
MIA2025――ローマの文化発信拠点、国際オーディオビジュアル市場
MIA国際オーディオビジュアル市場とは
「MIA(Mercato Internazionale Audiovisivo)」は、ローマで毎年開催されている国際的なオーディオビジュアル産業の見本市です。2025年で第11回目の開催となり、世界中から映画・テレビ・アニメーション・ドキュメンタリーなど多彩な業界関係者が集結しました。
2025年度の特徴とプログラム
- 業界トップ・プロデューサーやディストリビューター、映像配信プラットフォームが一堂に会合し、最新トレンドの発表や商談が展開されました。
- 新たな作品のショーケース、共同制作の提携交渉、投資家向けのピッチイベントなど、独自色の強いプログラムが特徴です。
- イタリア国内外の主要な映画祭や映画館、ストリーミングプラットフォームとも連携し、“ローマ発のコンテンツ”を世界に広める役割も果たします。
ローマと映像産業――伝統と革新の狭間で
古来より芸術と文化の中心地であるローマは、映像産業の分野でも独自の存在感を発揮しています。街全体が映画のロケ地としても知られ、多くの名作映画に登場してきました。MIAは、そうした伝統に根ざしながらも、現代のグローバル産業ネットワークにおけるハブ機能を担っています。
MIAを支える多様な人々とその交流
現地には国内外からバイヤー、クリエイター、制作者、技術開発者まで多様な人材が集い、リアルな対面商談やネットワーキングが活発です。ここから新たな映像企画や国際共同制作が生まれ、観光や関連産業への経済波及効果も大きなものです。
100年の歴史と今が交差する 「ローマ」という都市
コッペデ地区が守るもの、新しく生まれるもの
100年前のローマには、郊外の野原にポツンと新しい街区が生まれ、人々は未来に胸を膨らませて暮らしていました。コッペデ地区は、今も変わらぬ独特の個性と気品を湛え続け、時代を超えて愛される美のランドマークとなっています。
MIAが映し出すローマの未来
一方で、MIAはグローバルなエンターテインメントの最先端が集う交流の舞台として、これからの100年へ向けてローマから新たな価値を創造する役割を担っています。古き良き文化を継承しつつ、イノベーションによって都市の未来を切り拓くローマの意気込みが感じられます。
コッペデ地区を実際に歩いてみよう――見どころと楽しみ方
- ミンチョ広場(Piazza Mincio):象徴的な噴水「カエルの噴水」や壮麗な建物群で有名です。
- 「大使たちの館(Palazzo dei Ambasciatori)」:銀幕スターたちも愛した、豪奢な外観と歴史的価値の高いレジデンス。
- 細部にまでこだわった装飾、彫刻や鍛造金物、曲線を多用したバルコニーや門など。
- 交通アクセスも便利で、ローマ・テルミニ駅からバス一本で気軽に訪れることができます。
街を歩けば、「ここは本当にローマ?」と疑いたくなる幻想的な雰囲気に浸れます。芸術や建築好きにはもちろん、ローマの定番観光地とはひと味違う体験をしたい方には絶好のスポットです。
まとめ――変わりゆく都市に残るもの、響き合う伝統と革新
コッペデ地区の100周年は、ローマに刻まれた時間の重なりと、都市空間のもつ再生力の象徴ともいえるでしょう。不思議な世界観を放つこの街区は、未来へと受け継がれていくべきローマの財産です。
そして、MIA2025という一大映像イベントが示すように、ローマは芸術文化の中心都市として、過去だけでなく未来をも見据えて発展を続けています。
永遠の都ローマ――その中に生きる歴史とイノベーションの調和は、これからも私たちに多くのインスピレーションを与えてくれることでしょう。