安田菜津紀さんと高橋美香さんが伝える「パレスチナの猫」写真展――十和田・焼山で開催
パレスチナの現実と、すぐ傍らの猫たちを映し出す写真展
フォトジャーナリスト安田菜津紀さんと写真家高橋美香さんによる写真展「パレスチナの猫」が、2025年秋、青森県十和田市・焼山地区にて開催されました。この写真展は、長い紛争と占領に苦しむパレスチナの「日常」と、そこに生きる猫たちの姿を捉えたものです。両氏による写真は、「暴力や不条理に晒されながら、それでも生きる」という人びとと猫たちの共存する空間を、優しいまなざしで映し出しています。
猫がつなぐ、遠い国の日常への共感
「パレスチナ」と聞くと、多くの日本人にとっては遠い地名かもしれません。しかし、「猫」を通してみると、その土地の現実が身近に感じられるようになります。焼山での写真展では、観光客の減った旧市街で歩く猫、夜の難民キャンプで突然の銃声に怯える猫――そんな日常の一コマが静かに展示されています。
- 占領下にあるパレスチナでは、多くの人びとが不条理な現実と向き合っています。
- 猫たちは、暴力や恐怖の中でも、おだやかな眼差しを持ち、土地に寄り添い生きています。
- 「猫に興味はあるけど、パレスチナって?」そんな方にも、写真がおだやかに問いかけます。
写真展の内容と展示の様子
会場には、安田菜津紀さんと高橋美香さんが現地で撮影した数十点の写真が並びました。そこには、昼下がりの石畳を悠然と歩く猫たち、物陰にちいさく身を寄せ合う家族猫、こどもたちと戯れる野良猫など、多様な猫の姿が溢れています。そして写真の背後には、銃声や爆発の音が日常的に響く土地の「それでも続く暮らし」が静かに語られます。
- 展示の説明パネルには、現地での猫たちの生活や人びとの思いが丁寧に紹介されています。
- 会場は自由に飲食できるカフェスペースを兼ねており、写真を眺めながらゆっくりとその世界観に浸ることができます。
- 両氏のプロフィールやエピソードも展示され、作品への理解が深まります。
安田菜津紀さん・高橋美香さん――写真で伝える想い
安田菜津紀さんは、神奈川県出身でNPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)の副代表です。東南アジア・中東・日本国内など、多様な土地で貧困や難民、災害について広く取材し、その現場の「小さな声」を伝え続けるフォトジャーナリストです。東日本大震災以降は陸前高田市も継続して記録し、著書・講演などでも幅広く活躍しています。
高橋美香さんは、広島県府中市生まれの写真家。世界各地の「いとなみ」をテーマに現地を歩き、働く人びとや家族、日常の営みに寄り添いながら撮影を続けています。パレスチナ関連の著作も多く、現地の日常を暖かな視点で紹介しています。
「パレスチナの猫」展の意義と社会的メッセージ
この写真展の主なメッセージは「遠い土地の日常や声が、こんなにも身近に感じられる」という驚きと、「暴力の傍らでも暮らしは続く」という希望です。パレスチナの猫は、生きる環境こそ日本と大きく異なるものの、どこか親しみを覚えます。
- 写真を通じて、紛争地に暮らす人びとの現実を”自分ごと”として想像するきっかけとなります。
- 猫の存在が、私たちの共感や理解への扉をそっと開いてくれます。
- 展示の終わりには「これから私たちができる、小さな一歩は何だろう」と考えさせられます。
この展覧会は、対象を猫に絞ることで、抽象的・遠いテーマとなりがちな「パレスチナ問題」を誰にでも親しみやすい切り口で身近に感じてもらう工夫がなされています。暴力や不条理のなかにあっても、猫たちは日々をしなやかに生き、土地に根付いています。その姿は、パレスチナに生きる人びとの希望や誇りと重なります。
写真展を通して感じてほしいこと――来場者の声
来場者からは、「猫たちの素朴で無垢な姿に癒された」、「パレスチナについて考えるきっかけになった」などの感想が寄せられました。特に、現地の情勢を知らなかったという方から、「猫を通して現地の日常や困難に初めて思いを馳せた」との声も多く聞かれます。
- 「猫の写真展だと思って来場したが、パレスチナの日常も知れてよかった」
- 「遠い国の出来事ではなく、猫という共通項で身近に感じた」
- 「展示写真から、困難な現実を生きる力強さを感じた」
全国各地で広がる「パレスチナの猫」展の波
本展覧会は、昨年から各地で連続して開催されてきました。毎回、異なる地域で多くの共感が生まれ、「パレスチナの猫」の写真展は、社会課題に触れるイベントとして着実に広がりを見せています。また、今後は、佐藤慧さん(Dialogue for People)も新たに加わり、「パレスチナと猫」というテーマで展示や講演が行われる予定です。
最後に――写真を通して小さな一歩を踏み出そう
紛争地域の現実は、ニュースや報道だけでは「自分とは遠い場所の話」と感じがちです。しかし、写真展「パレスチナの猫」は、猫という身近な存在を通して、現地に生きる人びとの姿とその「希望」を優しく伝えています。今回の展示をきっかけに、一人ひとりが遠い国の「声」に耳を傾け、小さな共感の輪が広がっていくことを願います。