松嶋菜々子が重厚に魅せる母性愛と葛藤──NHK朝ドラ『あんぱん』第23週に迫る

はじめに

2025年9月1日よりNHK連続テレビ小説『あんぱん』が第23週「ぼくらは無力だけれど」に突入しました。本作は、日本中で知られる国民的キャラクター〈アンパンマン〉の生みの親・やなせたかし氏とその妻・小松暢さんをモデルに、激動の時代を生き抜いた夫婦の人生と愛、勇気を描いた作品です。近年ドラマ界を牽引する脚本家・中園ミホ氏による心揺さぶるシナリオ、主演の今田美桜さんをはじめとした実力派キャストが熱演を繰り広げていますが、特に松嶋菜々子さん演じる登美子の母性愛と繊細な葛藤に今、注目が集まっています

ドラマ『あんぱん』のあらすじ〜“何者でもなかった”ふたりの軌跡〜

『あんぱん』は、まだ漫画家として名を成す前のやなせたかし(劇中名:柳井嵩/北村匠海さん)と、ヒロイン・朝田のぶ(今田美桜さん)が出会い、悩み、支えあいながら愛と夢、”逆転しない正義”を信じて暮らした日々を描きます。朝田のぶの生き方は「アンパンマンのドキンちゃん」のモデルでもあるといわれた小松暢さんの実人生を映し出しており、夢に向かって何度も立ち上がる姿が多くの視聴者の心を掴んでいます

第23週「ぼくらは無力だけれど」──物語はいよいよクライマックスへ

  • ラジオドラマ「やさしいライオン」の放送が大きな話題となり、世間から反響が巻き起こる
  • 嵩(北村匠海さん)は義母・登美子(松嶋菜々子さん)の反応をひどく気にし、揺れ動く。
  • のぶ(今田美桜さん)は彼を励まし、羽多子(江口のりこさん)が登美子を柳井家に連れてくることで、家族の在り方、母子の絆が問い直される。
  • 嵩は週刊誌の漫画懸賞の募集を目にし、のぶの後押しで「これが最後」と覚悟を決めて応募を決意、自らの夢に挑戦する

松嶋菜々子、登美子役が映し出す複雑な母心

本作で松嶋菜々子さんが演じる登美子は、決して一筋縄ではいかない存在です。母として子供を思う気持ち、過去の経験や価値観からくる戸惑い、息子である嵩との距離感。ラジオドラマへの反応一つ、柳井家での立ち振る舞い一つに、松嶋さんならではの緻密な演技が光ります。「共感できる母親像」として、SNSや視聴者の間では登美子への共感や批判、さまざまな意見が飛び交っていますが、その多彩な感情こそがドラマにリアリティと深みを与えています。

第23週では、嵩の漫画家としての苦悩、家庭への葛藤、そして“無力さ”を感じながらも家族や周囲に支えられ、一歩を踏み出そうとする姿が描かれ、母・登美子の存在が物語の大きな軸となります。

脚本家・中園ミホの“実話”と自画像──オリジナリティの秘密

NHK朝ドラ112作目となる本作の脚本は、中園ミホさん。『花子とアン』以来2作目の朝ドラ執筆であり、今作でも彼女ならではの視点が大きな魅力です。中園さんは、物語の中に「少女時代のクソガキな自分」をモデルにしたキャラクターを投影したと公言。事実、脚本制作の過程で、6歳時の自身がやなせたかし氏に描いてもらった似顔絵を公開し、「これが実話なんです!」と話題を呼びました。まさにフィクションと実体験が絶妙に交錯し、作品に独自の奥行きを与えています。

また、「何者でもなかった」主人公たちがいかにして〈愛と勇気〉を得ていくか、アンパンマンのキャラクター哲学にも直結する”逆転しない正義”のあり方が随所に描かれています

キャスト・音楽・演出──作品の世界観を支える力

  • 主演の今田美桜さんは、強くたくましい、やさしさ溢れるのぶ役を等身大で熱演。
  • 嵩役:北村匠海さんは、夢と現実のはざまで揺れる若者の葛藤を繊細に表現。
  • 登美子役:松嶋菜々子さんの包容力ある芝居が、物語の深い情念を語る。
  • 羽多子役:江口のりこさん、蘭子役:他、ベテラン・個性派キャストが彩り豊かに脇を固める。
  • 主題歌はRADWIMPS「賜物」。物語を優しく包み込み、視聴者の心に届く。
  • ナレーションは林田理沙アナウンサーが担当。

『あんぱん』が今の時代に問いかけるもの

戦後の混乱期、社会的にも個人的にも小さく、無力に思える毎日を懸命に生き抜く登場人物たち。彼らの「無名時代」「苦労」「夢へのリベンジ」は、現代を生きる私たちにも響く普遍性があります。ラジオドラマや漫画への挑戦、そして愛する人との別れや再会。人生のどんな局面にも“アンパンマン”の根底に流れる「やさしさ」「勇気」「諦めない心」が現れており、作品自体が“一歩ふみ出す勇気”を多くの人に与えていると言えるでしょう

松嶋菜々子、朝ドラで新たな代表作へ──登美子という役柄の持つ意味

1990年代から現在に至るまで数々の名作で主演・助演を務めてきた松嶋菜々子さんですが、本作で演じる登美子は“昭和の母”を象徴しつつも現代的な葛藤、柔らかさ、強さを持ち合わせています。困難な時代に我が子の成長と幸福を願いながらも、時に自分の過去や想いと向き合いきれず苦しむ。その人間臭さこそが、朝ドラ世代だけでなく幅広い年代の視聴者に響いています。

また、登美子と嵩、のぶをめぐる家族の物語は、「家族とは何か」「夢をどう応援するか」といった時代・世代を超えたテーマを問いかけており、全国の視聴者の間で熱い議論と感動を呼び起こしています。

今後の展開と期待——最終章へ向かう『あんぱん』

第23週を経て、物語はいよいよ最終週へ。嵩、のぶ、登美子、それぞれが人生の分岐点に立ち、「夢」「家族」「自分自身」と向き合います。一度は諦めかけた夢――それは嵩にとっての漫画家としての再挑戦であり、その背中を後押しする家族と母・登美子の存在が、最終章の大きな鍵となります。

時代も場所も違えど、自分を信じて一歩を踏み出す勇気。『あんぱん』はこの普遍のテーマを、愛と涙、微笑みとともに鮮やかに描き続けます。今後の展開にもぜひご注目ください。

おわりに

NHK連続テレビ小説『あんぱん』第23週「ぼくらは無力だけれど」では、家族の再生と挑戦、そして“ささやかな勇気”の大切さが、松嶋菜々子さん演じる登美子の想いとともに丁寧に描かれています。日々の無力さに打ちひしがれそうになる時、それでも夢に、家族に、人生に手を伸ばす登場人物たちの姿が、多くの視聴者にやさしく温かな力を与え続けているのです。

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