中村獅童、Eテレ「NHKアカデミア」登場と歌舞伎座での最新挑戦――古典歌舞伎とデジタル表現の最前線

歌舞伎俳優の中村獅童さんが、2026年1月24日に行われるEテレ番組「NHKアカデミア」のオンライン公開収録に講師として登場します。各界のトップランナーが自らの経験や思いを語る人気講座シリーズで、第52回の講師に選ばれたのが中村獅童さんです。

一方で舞台では、歌舞伎座での公演を通じて、「次世代へと手渡す表現の行方」を体現するような試みを展開。古典歌舞伎の世界に、最先端のデジタル技術を融合させた壮大な物語づくりに挑んでいます。さらに、次世代ネットワーク構想として注目されるIOWNとのコラボレーション「歌舞伎×IOWN」によって、「これまでの常識を覆す」とも言われる新しい舞台表現にも踏み込んでいます。

今回は、NHKアカデミアのオンライン収録情報を軸にしつつ、歌舞伎座でのデジタル表現や「歌舞伎×IOWN」の動きもあわせてご紹介します。

NHKアカデミアに中村獅童が登場:オンライン公開収録の概要

「NHKアカデミア」は、各界の第一線で活躍する人物が講師となり、「今こそ共有したい」テーマについて深く語る講座番組です。今回、第52回の講師として登場するのが、歌舞伎界を代表する存在のひとり、中村獅童さんです。

番組では、オンライン公開収録に参加する視聴者を募集しており、パソコンやスマートフォンから参加できるスタイルが取られています。インターネット環境があれば自宅から参加できるため、全国どこからでも「ライブ感」のある講義に触れられるのが魅力です。

  • 収録日:2026年1月24日(土)
  • 開演時間:午後4時~午後6時(予定)
  • 形態:オンライン公開収録(事前申込制)
  • 参加費:無料(NHKサイトからの申込が必要)
  • 応募締切:2026年1月6日(火)午後11時59分まで

応募はNHK公式サイトの専用フォームから受け付けており、応募多数の場合は抽選となります。当選者にはメールで案内が届き、指定のURLにアクセスし、認証コードを入力して参加する仕組みです。

なお、このオンライン公開収録の模様は、後日Eテレで放送される予定です。放送は2026年3月4日(水)と11日(水)の午後10時30分からを予定しており、2週にわたり放送されます。生で参加できない方も、テレビ放送を通じて中村獅童さんの「芸の原動力」に触れられる機会が用意されています。

テーマは「歌舞伎界への想い」と「芸の世界に向き合う原動力」

今回のNHKアカデミアでは、「歌舞伎界への想い」や、「芸の世界に向き合う原動力」が大きなテーマとして掲げられています。番組案内では、「映画の大ヒットなどで歌舞伎界に注目が増す今、何を思うのか」「歌舞伎にとどまらない『芸』の世界に向き合い続ける原動力とは何か」といった問いかけがなされています。

中村獅童さんは、8歳で歌舞伎座の舞台に立ち、二代目中村獅童を襲名して以来、古典歌舞伎から新作歌舞伎まで幅広い演目に挑戦してきました。さらに、時代劇や現代劇のドラマ、映画、声優など、多彩な分野で活躍を続けています。

学生時代にはロック音楽に傾倒していたというエピソードも知られており、「歌舞伎界の異端児」として紹介されることもあります。伝統芸能に身を置きながらも、最新テクノロジーとの掛け合わせに積極的に取り組み、新しい表現に挑み続けている点が、中村獅童さんならではの特徴と言えるでしょう。

オンライン収録では、こうした生い立ちやキャリアに加えて、若い頃の不安や挫折、そこからたどり着いた「ゆるぎない知性」ともいえる考え方について語られることが予告されています。伝統と革新のはざまで模索してきた道のりや、今なお舞台に立ち続ける理由が、本人の言葉で語られる貴重な時間になりそうです。

視聴者と直接つながる「質問コーナー」も

NHKアカデミアの大きな特徴のひとつが、オンラインイベントでありながら、「参加者が直接質問できるコーナー」が設けられていることです。憧れのトップランナーと双方向でコミュニケーションを取れるのは、テレビ番組としても貴重な試みと言えます。

今回の収録でも、参加者からの質問を受け付ける時間が予定されており、中村獅童さんに直接問いかけることができる場が用意されています。歌舞伎役者としての日常、舞台に臨む心構え、家族や師匠との関係、また、デジタル技術とのコラボレーションに対する考えなど、どのような質問が飛び出すのかも見どころのひとつです。

イベント当日は、参加者の様子が会場のモニターに映し出されるほか、収録映像の一部として放送や配信で使用される可能性もあると案内されています。そのため、視聴者も一体となって番組をつくる感覚を味わえるのが、このオンライン公開収録の魅力といえるでしょう。

歌舞伎座で示す「次世代へと手渡す表現の行方」

NHKアカデミアで語られる「芸の原動力」は、中村獅童さんが実際の舞台で行っている挑戦とも深く結びついています。その象徴ともいえるのが、歌舞伎座での公演で示している「次世代へと手渡す表現の行方」です。

中村獅童さんは、古典歌舞伎の演目を大切にしながらも、現代の観客、とくに若い世代にどう届けるかを常に意識していると紹介されています。その一環として、AR(拡張現実)やプロジェクションマッピング、立体音響といったデジタル技術を取り入れ、伝統的な所作や型を損なうことなく、新しい見せ方を模索してきました。

こうした取り組みは、「古典と最先端デジタルが融合した壮大な物語」として語られることもあり、歌舞伎座という歴史ある空間で、現代のテクノロジーが違和感なく共存する舞台づくりが行われています。たとえば、舞台背景にデジタル映像を投影することで、物語の世界観をダイナミックに変化させたり、立ち回りの場面で映像効果を重ね、迫力を増す工夫が凝らされています。

とはいえ、あくまで中心にあるのは役者の芝居であり、肉体を通して表現される感情や、声の力強さです。デジタル技術はあくまで物語を支える「道具」であり、歌舞伎が長年育んできた美意識やリズムを崩さないよう、バランスを取りながら取り入れていく姿勢がうかがえます。

「歌舞伎×IOWN」が切り開く新しい舞台表現

中村獅童さんの挑戦を語るうえで、近年とくに注目されているのが「歌舞伎×IOWN」の取り組みです。IOWN(アイオン)は、次世代の通信・情報処理インフラとして構想されている技術で、超高速かつ低遅延のネットワークを実現しようとするものです。

このIOWNの技術と歌舞伎を掛け合わせる試みでは、「これまでの常識を覆す」ような表現が模索されています。たとえば、遠く離れた場所にいる役者同士が、ほとんど遅延のない通信を通じて、まるで同じ舞台に立っているかのように共演する可能性や、客席と舞台をリアルタイムに双方向でつなぐ演出が構想されています。

また、IOWNの高い映像伝送能力を活かし、超高精細な映像を舞台と組み合わせることで、これまでにない臨場感を生み出すことも視野に入れた取り組みが進んでいます。観客が劇場にいながら、別の場所で演じられている映像とライブの芝居がシームレスにつながるような構成が可能になれば、歌舞伎の物語世界はさらに広がっていくでしょう。

こうしたデジタル技術とのコラボレーションは、一見すると伝統芸能とは対極にあるようにも思えますが、中村獅童さんは、歌舞伎がもともと「時代の最先端」を取り入れながら進化してきた芸能であることを踏まえ、現代の最新技術と組み合わせることに積極的な姿勢を見せています。

伝統を守りながら、未来を切り開くスタンス

中村獅童さんの取り組みには、「伝統を守ること」と「未来を切り開くこと」の両立を目指すスタンスが色濃く表れています。祖父に昭和の名女方と謳われた三世中村時蔵さん、父に三喜雄さんを持つ歌舞伎の家に生まれ、幼い頃から厳しい稽古と舞台経験を重ねてきました。

その一方で、学生時代にはロックバンドに傾倒し、映画やドラマといった映像の世界にも早くから関わるなど、歌舞伎の「外」にも活動の場を広げてきました。このような経歴が、歌舞伎とデジタル技術を自然に結びつける発想の土台になっていると考えられます。

NHKアカデミアのオンライン収録では、若い世代に向けて、「自分の居場所をどう築いてきたのか」「伝統の世界で新しい挑戦をする際に、どんな葛藤や工夫があったのか」といった具体的なエピソードが語られることが期待されています。歌舞伎ファンはもちろん、エンターテインメントや芸術に関心を持つ方、また、これから何かに挑戦しようとしている学生や社会人にとっても、ヒントの多い時間になりそうです。

オンラインとテレビ放送で広がる「芸」の学びの場

今回のNHKアカデミアの取り組みは、オンライン公開収録とEテレでのテレビ放送を組み合わせることで、多様な人々に「芸」の世界に触れてもらう仕組みになっています。

オンラインでの公開収録は、インターネット環境さえあれば、自宅や遠方からも参加できるため、これまで劇場やイベント会場になかなか足を運べなかった人にも門戸が開かれています。一方で、後日のテレビ放送は、オンライン参加が難しい人にとっても、番組として編集された内容を落ち着いて視聴できるメリットがあります。

こうした形で、中村獅童さんの考えや、歌舞伎という伝統芸能の魅力、そしてデジタル技術とのコラボレーションが、世代や地域を超えて共有されていくことでしょう。

おわりに:中村獅童が見据える「次の歌舞伎」

NHKアカデミアでの講義、歌舞伎座でのデジタルを取り入れた公演、そして「歌舞伎×IOWN」の取り組み。これらはいずれも、中村獅童さんが「次世代へと手渡す表現」を模索し続けていることの表れです。

長い歴史を持つ歌舞伎は、常に時代とともに変化し、新しい要素を取り込みながら生き続けてきた芸能です。その最前線に立つ中村獅童さんが、どのような言葉で「芸の原動力」を語り、そしてこれからどんな舞台を見せてくれるのか。オンライン収録と今後の公演の両方に、注目が集まっています。

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