中村勘九郎・中村七之助が語る、歌舞伎を「もっと近くに」春暁歌舞伎特別公演2026
中村勘九郎と中村七之助を中心とした中村屋一門が、2026年3月7日から25日にかけて全国11カ所で開催する「春暁歌舞伎特別公演2026」が大きな話題を呼んでいます。毎年行われるこの全国巡業公演は、2005年の開始以来、各地のファンはもちろん、歌舞伎初心者まで多くの人々に愛されている企画です。今年の公演では、特別な演目が用意されており、歌舞伎役者による上演が78年ぶりとなる作品の復活上演が予定されています。
歌舞伎をもっと身近に届ける使命
春暁歌舞伎特別公演は、時期によって「新緑」「陽春」「錦秋」など異なる名称で展開されてきました。この企画の特徴は、歌舞伎の本場である江戸情緒を全国各地に届けることにあります。中村勘九郎と中村七之助は、この公演について「歌舞伎を初めてご覧になるお客様にも見やすい演目を意識しながら構成している」と述べており、敷居の高いと思われがちな歌舞伎を、より多くの人々に親しんでもらうことを重視しています。
中村七之助は取材の中で、「本当に毎年、やっている意味があるなと感じております。まだまだ続くように一所懸命勤めます」と力強く決意を表明しました。この言葉からは、単なるチケット販売のための巡業ではなく、地方の観客との関係構築と歌舞伎文化の発展に対する真摯な姿勢がうかがえます。
78年ぶりの復活演目「墨塗女」
2026年の春暁歌舞伎特別公演の最大の注目点は、江戸狂言を原点とする珍しい舞踊作品「墨塗女」が、歌舞伎役者による上演として78年ぶりに復活されることです。この演目は、従来の格調高い歌舞伎とは異なり、コミカルで親しみやすい内容が特徴となっています。
中村七之助は「女のしたたかさや、滑稽さを描くシンプルな作品で、初めて歌舞伎をご覧いただくお客様にも見やすい、締めにぴったりの演目」とコメントしており、演目選択の際にも観客層を意識した配慮がなされていることがわかります。また、同演目では中村勘九郎、中村七之助、中村鶴松の三人でせりふのある松羽目物を行うのは、中村屋の巡業では初めてとなるとのこと。この初の試みが、どのような舞台を生み出すのかに期待が集まっています。
中村鶴松の成長が即戦力をもたらす
今回の公演で注目される若き役者として、中村鶴松の存在があります。中村勘九郎は「鶴松は今年2度目の自主公演を成功させましたし、11月歌舞伎座での三谷幸喜さんが書かれた作品でもいいお役をいただいているので、本当に即戦力だなと感じています」と高く評価しています。次世代を担う役者の才能が開花しつつある中での公演となり、新旧の舞踊手による新しい表現が生まれる可能性も秘めています。
全国各地での開催予定
2026年の春暁歌舞伎特別公演は、東京・府中から始まり、全国11カ所で開催されます。府中の森芸術劇場では3月7日に開演予定で、その後、練馬(3月8日)、刈谷市(3月11日)など、各地で順次公演が予定されています。各公演ともに複数回の上演が予定されており、観客の利便性に配慮した時間設定がなされています。
歌舞伎の伝統と革新の融合
春暁歌舞伎特別公演が20年近く継続して実施されている理由には、伝統的な歌舞伎の作品を守りながらも、新しい表現方法や観客層への対応に積極的に取り組む姿勢があります。「墨塗女」の78年ぶりの復活上演は、単なる懐古的な試みではなく、古典作品の再発見と現代的な再解釈を目指すものです。
中村勘九郎や中村七之助が語る「歌舞伎をもっと近くに」というコンセプトは、この公演の根底にある哲学そのものです。地方への巡業を通じて、江戸の文化や伝統が現代の観客にどのように受け入れられるのか、また新しい世代の役者たちがそれをどう解釈し表現するのか—こうした試みの積み重ねが、歌舞伎文化の持続的な発展につながっていくのです。
チケット情報と観劇の準備
春暁歌舞伎特別公演2026のチケットは、各公演ごとにプレイガイドが異なります。府中、練馬、刈谷市など各地の会場ごとに、異なるチケット販売窓口での対応となる予定です。料金も会場により異なるため、観劇を希望する方は事前に各会場の公式情報をご確認いただくことが重要です。
歌舞伎初心者にとっても楽しめるよう配慮された演目構成と、地方での開催という点を考えると、普段は歌舞伎に接する機会が限られている多くの方々にとって、貴重な文化体験の場となることが期待されます。中村勘九郎と中村七之助率いる中村屋一門が贈る2026年の春の陣は、歌舞伎の未来を担う重要な公演となりそうです。


