三浦半島の磯で体感する「いのちの教室」― 國學院久我山の生物観察実習

神奈川県南部に広がる三浦半島は、豊かな自然環境とさまざまな生物が生息することで知られ、毎年多くの学校や教育団体が生き物観察などの体験実習を行っています。2025年9月、國學院久我山中学校の1年生たちは、三浦半島の観音崎で臨海実習を実施し、磯の生物観察やカニ・ヤドカリの採集といった活動を通じて、自然の恵みや海洋生態系について実感を伴いながら学びました。

三浦半島とは―豊かな自然が残るフィールド

三浦半島は神奈川県の南東部に位置し、相模湾と東京湾に囲まれた独特の地形を持ちます。変化に富んだ海岸線が形成するや干潟、砂浜、森が点在しており、多種多様な動植物が生息しています。そのため、都心からアクセスしやすいにもかかわらず自然教育や環境学習の場として長年にわたり親しまれてきました。

観音崎臨海実習の概要

國學院久我山中学校の中学1年生たちが訪れたのは、三浦半島東部にある観音崎です。ここは磯遊びや生物観察に適した海岸地形で、多くの生物を間近に観察できることで知られています。実習ではクラスごとに数名のグループに分かれ、引率の先生や現地レンジャー、ネイチャーガイドの案内のもと、磯での生物観察や採集活動を体験しました。

  • 日程:2025年9月3日
  • 場所:三浦半島・観音崎
  • 対象:國學院久我山中学校 1年生
  • 内容:磯の生物観察・採集、生息環境の学習、記録と発表

どんな生き物を観察できた?

観音崎や芝崎海岸など三浦半島の磯では、大潮や中潮の日に合わせて実施すると、さまざまな海洋生物が姿を見せます。今回の実習でも、生徒たちは以下のような生物を実際に観察し、手に取ってその特徴や生態を確かめました。

  • カニ(イソガニ・アカテガニなど):素早く動き、磯の石の隙間に多く生息。
  • ヤドカリ:貝殻を背負い、浅瀬を歩く姿に生徒たちも大興奮。
  • 小魚(ハゼ・メジナの稚魚など):潮だまり(タイドプール)の中を泳ぐ姿が観察できる。
  • 貝類(カサガイ・カメノテ・ヒザラガイなど):岩にしっかりとくっついているため、観察にはコツも必要。
  • ウニやヒトデ:岩場の隙間や陰に生息しており、触れると柔らかさや硬さの違いが分かる。

磯場観察は、ただ見るだけでなく、時には小さな網やバケツを使ってそっと生き物をすくい上げ、観察ケースに入れて特徴を調べました。自分たちの手で生物を捕まえ、実際に触れてみることで「命の重み」を実感したという声もありました。

環境学習とその意義

このような体験的な自然学習には、子どもたちが座学や教科書の知識だけでは得られない「気づき」がたくさん詰まっています。三浦YMCAグローバル・エコ・ヴィレッジなど、地域の団体も積極的に磯の生物観察プログラムを実施しており、参加者は生き物の生態や海洋環境問題への意識を高めています。環境に優しい行動や、多様な生き物との共生の大切さを実体験を通して学ぶことができます。

実習の最中、現地ガイドや先生は「生き物に優しく接し、観察が終わったら元の場所に必ず戻す」というルールを生徒へ繰り返し伝えました。こうした姿勢もまた、環境倫理や生物多様性保全の入り口となります。

安全に配慮した実習運営

生き物観察を安全に行うためには、いくつかの注意点があります。

  • 帽子やマリンシューズ、軍手などの着用で安全確保
  • 熱中症やケガ防止のための水分補給・準備運動
  • 滑りやすい岩の上ではしゃがんで移動する
  • 毒を持つ生き物への注意と知識の共有
  • 観察活動の後は、手指の消毒・手洗いを徹底

三浦半島の海岸は、四季を問わず天候や潮位の変化が大きい場所です。そのため、日程選びも重要で、特に大潮や中潮に合わせて実施することで、より多くの生物に出会うことができます。

多彩な教育プログラムと三浦半島の連携

三浦半島では、今回のような生物観察だけでなく、他にも自然体験活動や海洋ごみの回収活動、科学実験、里山散策などさまざまなプログラムが提供されています。

  • ウニの人工受精・発生観察
  • 夜間のウミホタル観察・発光実験
  • 照葉樹林の森探検
  • 潮間帯の生物観察と海岸清掃
  • ダイビングを通じた水中ごみの回収体験

地域のネイチャーガイドやNPO法人、地元の科学館・自然博物館が一丸となり、子どもたちを「自然の教室」へといざなう取り組みが数多く展開されています。特に観音崎自然博物館は雨天時も全天候型で生物観察が可能な設備を備え、屋内外で多彩な体験プログラムを用意しています。

子どもたちに広がる「自然を愛する心」

参加した生徒からは「いろいろなカニを実際に捕まえて形や色の違いが分かって楽しかった」「教科書だけでは分からなかった生き物の動きや環境が体で感じられ、自然への興味が深まった」という声が多く寄せられました。グループで協力しながら活動することで仲間意識や探究心も刺激され、これまで抱いていた自然環境や生物多様性についての見方が大きく広がりました。

地域連携による継続的な自然体験の推進

このような地道な自然体験・生物観察活動は、子どもたちの未来への「基礎体力」となり、環境保全意識や地域への愛着心も着実に育っていきます。三浦半島では今後も学校と地域、科学館やNPOが連携し、多くの子どもたちに学びと体験の場を提供し続けていくことでしょう。

保護者と地域社会に求められるサポート

子どもたちが安心して自然体験をできる環境づくりには、保護者や地域社会のサポートが欠かせません。安全対策やマナー指導、施設への理解と協力、イベント時のボランティアなど、さまざまな形で地域が子どもたちの体験を後押ししています。これからも「三浦半島の自然のバトン」を未来の子どもたちへとつなぐために、多くの大人の関わりと支えが期待されています。

まとめ

三浦半島の豊かな自然と生き物は、子どもたちの「生きる力」を伸ばす最高の教材となっています。國學院久我山中学校1年生の観音崎臨海実習は、体験を通じて得た発見や感動、仲間と共有した思い出が、これからの学びや人生の糧となることでしょう。今後も多くの学校や団体が三浦半島での自然体験を重ねていくことで、地域と自然を大切に思う人の輪が広がっていくことが期待されます。

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