井上真央さんが語る「浜マーケット」――昭和レトロの名残と時代の移ろい
横浜市金沢区の一角に息づく「浜マーケット」。そこは、時代を超えて地元の人々の暮らしに寄り添い、数々の思い出を刻んできた商店街です。
近年、相次ぐシャッターの降下に象徴されるように、昔ながらの風景が失われつつある中、女優・井上真央さんが自身の思い出とともにこの商店街の今を語りました。
今回は、2025年9月28日放送のフジテレビ「ザ・ノンフィクション『浜マーケットに日は暮れて～人情商店街とクリームソーダ～』」にナレーターとして参加した彼女の言葉や、浜マーケットが歩んだ歴史に迫ります。
浜マーケットの歩み――戦後から地域とともに
「浜マーケット」は、80年前に戦後の闇市として誕生しました。
最盛期には60軒以上の店舗がひしめき合い、肉屋、魚屋、花屋、総菜屋、和菓子屋など、暮らしに密着した店々が並びました。
昭和の香りが色濃く残り、子どもたちの声や買い物袋を提げた人々が行き交う情景は、今も多くの地元住民の記憶に息づいています。
地域と共にあった“レジェンド級”の商店街
「浜マーケット」の存在は、地元出身の井上真央さんにとっても特別でした。
「祖母や母もよく行っていた。私は頻繁に通っていたというほどではないけれど、家族や友人のお母さんたちも利用していたので、名前を聞くだけで懐かしさがこみ上げます」。
子どもの頃、大みそかには皆が買い出しに集い、活気にあふれていたことが、強い印象として心に刻まれているそうです。
- 最寄駅から徒歩15分、全長140mのアーケードに並ぶ商店群
- 買い物以外にも、ご近所同士の“おしゃべり”や、年中行事の交流の場所
- 「時が止まったような風景」が、今も一部に残る
変わらぬ風景と、変わりゆく現実
しかし、時代の移ろいは「浜マーケット」をも静かに覆いました。
近年、大型スーパーの進出や交通の便の悪さが重なり、徐々に客足が減少してきました。
最盛期の60軒から、2025年現在では営業を続けているのはわずか20軒。立ち並ぶシャッターは、経営の厳しさと高齢化が進む地域社会の現実を物語っています。
井上さんも取材を振り返り「シャッターが目立つ光景にはショックを受けた」と胸の内を明かしています。
一方で、「近くを通ると、“変わっていないな”と思えるのが嬉しい」。そして「スーパーにはない良さがこの商店街には残っている」と、今なお残る昭和レトロの人情や手仕事、店主とのやり取りのあたたかさに価値を見いだしています。
今も変わらぬ“人情”と店主たち
ドキュメンタリー「浜マーケットに日は暮れて」では、店主やお客さんのリアルな暮らしや交流が丁寧に描かれました。
各店舗では、手間を惜しまず作り続ける昔ながらの総菜や和菓子、季節の花のアレンジ、対面販売ならではの心のこもった会話などが、今も生活文化として息づいています。
高齢になりながらも「店をたたみたくない」「地域のみんなの暮らしを支えたい」と語る店主の姿には、地元への誇りと責任感がにじみます。
- 「子どもの頃から通っています」「ここでしか味わえない味がある」――地元客の声
- 「自分たちがやめてしまったら、この町の味や思い出も消えてしまうかもしれない」――店主の思い
- 「顔を覚えてもらえる、そんなあたたかさがスーパーとは違う」
時代を超える“町の記憶”をつなぐために
浜マーケットの現状は、人と人のつながりを重んじてきた「昭和の町」の縮図でもあります。
シャッターが下りる店舗が増える一方、残るお店や店主と常連客との間には、新たな出会いと交流が息づいています。
地域を支える役割や、人情文化の継承をどう守っていくのか――。それは「浜マーケット」に限らず、日本の多くの商店街に共通する課題でもあります。
井上真央さんは、そんな浜マーケットの姿を「この場所、この記憶を次世代にも残していきたい」と語ります。「たくさんの人の思い出が詰まった場所。時代が移り変わっても、どこかに温もりや彩りを感じられる町であってほしい」と願いを込めました。
商店街に息づく希望――「ノンフィクション」が伝えたもの
2025年9月28日の放送では、商店街の1年間の季節の移ろいと人びとの営みが丁寧に描かれ、ナレーションによる井上真央さんの優しい語りも大きな反響を呼びました。
番組では、時代の流れに抗えない「寂しさ」、その中で守られてきた「温もり」、商店街を愛する人々の「誇り」を感じ取ることができます。
- 長く続く商店街で大切にされてきた人情
- 買い手と売り手の信頼関係
- 家族3世代以上に受け継がれる思い出
- 時の流れと共に失われゆく風景への郷愁
「浜マーケット」から考える、地域と暮らしのこれから
「浜マーケット」は、もはや単なる買い物の場ではなく、地域の“記憶の場”であり“つながりの場”。
今後も、時代に合わせた形でコミュニティの拠点として存続し続けられるのか、地元住民や各店舗の工夫と挑戦が問われています。
井上真央さんが伝えた「一人ひとりのあたたかな記憶」。それは、都市化や効率化が進む現代社会にあってなお、大切なものを次世代に手渡すためのヒントとなるはずです。
終わらぬ物語――「浜マーケット」が教えてくれること
最後に井上真央さんは、「たまに浜マーケットの近くを通ると“変わっていないな”と感じる。この奇跡のような風景が、これからも誰かの心を温かくする町であって欲しい」と静かに語りました。
地域とともに歩んできた長い歴史。その1ページに触れたくなったら、一度「浜マーケット」を訪れてみてはいかがでしょうか。
