今日マチ子原作アニメ「cocoon〜ある夏の少女たちより〜」特集──沖縄戦と少女たちの物語

はじめに ― 戦争を描く2025年夏の大作

2025年8月25日、NHK総合で放送された特集アニメ「cocoon〜ある夏の少女たちより〜」。本作は、漫画家今日マチ子さんによる話題作「cocoon」を原作とし、沖縄戦を舞台とした戦争体験を、少女たちの視点から丁寧に描いたアニメです。戦後80年となる今、改めて平和や命の重みについて考えるきっかけを与えてくれる作品として注目を集めています。

「cocoon」の原作漫画について

「cocoon」は、2009年に発表された今日マチ子さんの代表作です。沖縄戦を背景に、学徒隊として戦場に動員される少女たちの姿を描きます。戦争の理不尽さや、日常の尊さ、絶望と希望、そして「痛い、怖い」といった生々しい感情をも誤魔化さずに描写する点が高く評価されています。

  • 沖縄戦をテーマにした少女漫画の先駆け
  • 「戦争は怖いもの」と正面から伝える
  • 傷つくこと、失われることの痛みを可視化
  • 現代の読者、特に若い世代にも大きな影響を与える

痛みや苦しみを遠ざけることなく、戦時下の日常に生きる少女たちの感情を、繊細かつ深く表現しているのが特徴です。

アニメ「cocoon〜ある夏の少女たちより〜」の制作陣

  • 監督:伊奈透光
  • 音楽:牛尾憲輔
  • 声優:マユ役/満島ひかりサン役/伊藤万理華
  • アニメーションプロデューサー:舘野仁美(元スタジオジブリ)
  • アニメーション制作会社:ササユリ
  • 制作:NHKエンタープライズ
  • 主題歌:「ずっと ずっと ずっと」伊藤万理華(羊毛とおはな楽曲をカバー、原田郁子アレンジ)

元スタジオジブリの舘野仁美さんがプロデューサーとして参加。映像美と空気感、そして少女たちの揺れる心情をやさしく、時に厳しく描く表現力で高く評価されています。

物語の舞台 ― 沖縄戦の女子学徒隊

「cocoon」は太平洋戦争末期の沖縄を舞台としています。作中では、女子校に通う少女マユとサンが主要キャラクターとなり、学徒隊として戦場へ赴くことになります。物語は彼女たちの視点で進み、戦争のなかで日常が一瞬にして崩れ、友人たちが傷つき、命が失われていく現実を決して控えめにせず描写します。

  • 少女たちが学徒動員で戦地へ
  • 一瞬で消える平和な日々
  • 家族や友人との別れ
  • 「痛い」「怖い」といった正直な感情の吐露
  • 生き抜くこと、そして命の尊さへの希求

マユとサンを中心にした少女たちが体験する過酷な現実を、フィクションであると同時に記録的・教訓的な意味でも後世に伝える力を持った作品です。

「痛み」も「恐怖」も隠さない──作者・今日マチ子さんのこだわり

今日マチ子さんは、戦争というテーマから目を逸らさず、あえて「痛い」「怖い」と感じる瞬間をきちんと描いています。それは、戦争漫画やアニメにありがちなヒロイズムや感傷とは一線を画するものです。人間としてのリアルな感情――恐れや傷み、絶望と希望――を作品全体に散りばめることで、読者や視聴者に「戦争は遠い過去の出来事ではなく、“今”につながる現実である」と語りかけています。

  • 美化しない、改竄しない歴史の表現
  • 戦争体験を次世代へとつなぐ使命感
  • 「痛み」を共有することで命の重さに気づく
  • 若い世代にも伝えるために、やさしく、しかし厳しく描く

こうした姿勢により、「cocoon」は「戦争を知らない世代」へと、大切なメッセージを届ける役割を果たしています。

キャスト・スタッフのインタビューと制作意図

主演の満島ひかりさんは、「マユという少女を通じて、“命とは何か”を改めて考え直す機会になった」とコメント。伊藤万理華さんも、「サンの目線で描かれる痛みや恐怖は、決して誰か遠い人が味わったものではなく、私たち一人ひとりが考えるべき現実だと思う」と語っています。
監督の伊奈透光さんは「美化せず、しかし希望も込めて描きたい」と制作意図を明らかにし、舘野仁美プロデューサーは「スタジオジブリで学んだ“感情を動かす映像”を最大限発揮した」と制作現場の想いを語っています。

アニメ版「cocoon〜ある夏の少女たちより〜」の特徴

  • リアルな戦場の描写と少女たちの日常の対比
  • 淡い色彩と繊細な作画で、現実と幻想の境界を表現
  • 内面の痛み、恐怖、希望を静かに浮かび上がらせる
  • エンディングには「羊毛とおはな」の主題歌カバーが響く
  • 60分の特集アニメとして制作、地上波放送は2025年8月25日

また、2025年3月にはNHK BSで先行放送も行われています。地上波放送は夏休み終盤という時期のため、親子で観て語り合う機会にもなっています。

「cocoon」を通して考える「今」の平和

戦後80年を迎えた2025年。戦争を「ただの昔話」として忘れてしまわないように――この作品が届けるメッセージは、“痛み”や“恐怖”を知ることから始まる命の大切さです。アニメーション作品として、また漫画原作として、多くの人々が時代を越えて戦争と向き合うきっかけとなっています。
家族、友だち、隣にいる人の命の重みについて、そして自分自身の生き方について、考える一助となるでしょう。

原作漫画「cocoon」1話まるごと試し読みキャンペーン

アニメ放送に合わせて、「cocoon」1話まるごと試し読み企画も実施されています。原作に興味を持った方が気軽に読める機会として、書店や電子書籍ストアで体験できるようになっています。アニメ視聴後に「漫画でもう一度読みたい」「家族や友人と感想を語り合いたい」と感じた方にもおすすめです。

まとめ―「痛み」とともに、希望を描く新しい戦争アニメ

「cocoon〜ある夏の少女たちより〜」は、戦争の「痛み」と「怖さ」を伝えると同時に、失われた命や平和の日々の「尊さ」、「生き抜くことへの希望」を静かに、しかし力強く描いた作品です。今日マチ子さんの原作漫画に込められたメッセージと、アニメならではの映像・音楽表現が融合し、2025年の夏に一つの到達点を示しました。今後も語り継ぎ、学び続けたい“戦争と命”の物語です。

参考元