「古米奮闘」が最優秀作に 2025年の世相を映す創作四字熟語
ことし1年の世相を4文字で表現する恒例の「創作四字熟語」で、2025年の最優秀作品に選ばれたのは「古米奮闘(こまいふんとう)」でした。
このニュースは、コメの価格高騰に直面した私たちの暮らしぶりと、人々の知恵と工夫をユーモラスに、そして少し切なく映し出しています。
「古米奮闘」とはどんな言葉?
「古米奮闘」は、本来の四字熟語である「孤軍奮闘(こぐんふんとう)」をもじった言葉です。
- 古米(こまい)…備蓄米として放出された古いコメや、家庭に残っている古いお米のことをイメージ
- 奮闘(ふんとう)…困難な状況の中で必死に頑張ること
コメの価格が上がり、なかなか新米を気軽に買えないなかで、家にある古米や備蓄米をやりくりしながら、なんとか生活を守ろうとする姿が「奮闘」という言葉に込められています。
「コメを買うのにこんなに並ぶとは…」にじむ生活実感
背景には、2025年に大きな話題となったコメ価格の高騰があります。 ある報道では、「コメを買うのにこんなに並ぶとは…」という、買い物客の声が紹介されました。
スーパーや量販店では特売日になると長い行列ができ、家計を守ろうとする人たちが、いつも以上に「お米売り場」に神経をとがらせる光景が見られました。 そんな現実を、たった4文字で象徴的に表したのが「古米奮闘」なのです。
また、政府や自治体が備蓄していたコメを市場に放出する動きもあり、「備蓄米」「古米」といった言葉がニュースで頻繁に登場しました。 それらのキーワードを上手に取り入れている点も、高く評価されました。
創作四字熟語とは?
創作四字熟語は、その年の出来事や社会の雰囲気、人々の思いを四字熟語の形で表現する企画です。
- 漢字4文字で、その年の「世相」を端的にあらわす
- 既存の四字熟語をもじったり、新しい組み合わせを考えたりする
- ユーモアと皮肉、そしてちょっとした希望が込められることも多い
今回の「古米奮闘」も、もともとの「孤軍奮闘」という熟語のもつ「たった一人で頑張る姿」というイメージを残しながら、「古米」という身近な言葉に置き換えることで、日々の暮らしの大変さをやわらかく伝えています。
優秀作品「操虎関税」「ミャク点満点」など多彩なことしの世相
最優秀作「古米奮闘」のほかにも、ことしの世相を映し出す優秀作品が数多く選ばれました。
その中には、次のようなユニークな四字熟語が含まれています。
- 操虎関税(そうこかんぜい)
- ミャク点満点
「操虎関税」は、もともとの四字熟語「虎穴(こけつ)に入らずんば虎子(こじ)を得ず」や、「虎を操る」ような危うさを連想させつつ、「関税」という経済用語を組み合わせた作品です。 国際的な貿易摩擦や、関税をめぐる駆け引きが続いた年を象徴する言葉として、印象的です。
一方の「ミャク点満点」は、「百点満点」をもじりつつ、「ミャク」という音から、ことし話題となった「バズる」「トレンド」「脈アリ」などの言葉遊びを感じさせる作品です。 時代の空気を軽やかに切り取った表現として注目されました。
なぜ「古米奮闘」が最優秀になったのか
創作四字熟語の審査では、ことしを象徴する「世相性」と、言葉としての「うまさ」「おもしろさ」が重視されます。
「古米奮闘」には、次のようなポイントがありました。
- コメ価格の高騰という、多くの人が実感した出来事を取り上げている
- 「古米」「備蓄米」など、ニュースでよく耳にしたキーワードを取り入れている
- 「孤軍奮闘」をもじったことで、読みやすく、意味も伝わりやすい
- ユーモラスでありながら、生活の厳しさや不安もにじませている
コメは日本人の食卓に欠かせない存在であり、価格の変動は家庭の台所事情に直結します。「お米の値段が上がる」というニュースが、単なる経済記事ではなく、私たち一人ひとりの暮らしの不安として広がった年だからこそ、「古米奮闘」は多くの共感を呼んだといえます。
高校生の書道パフォーマンスも会場を盛り上げる
発表の場では、高校生による書道パフォーマンスも行われ、「古米奮闘」の4文字が大きな紙に力強く書き上げられました。
観客の前で音楽に合わせて筆を運ぶ姿は、ことしの世相を「書」で表現する若い世代の感性とエネルギーを感じさせます。 四字熟語というと、少し堅苦しいイメージを持つ人もいるかもしれませんが、このようなパフォーマンスを通じて、言葉とアートが融合した新しい楽しみ方が広がっています。
四字熟語が教えてくれる「ことし」と「これから」
四字熟語は、たった4文字で多くの意味を含む、とても凝縮された表現です。ことし生まれた「古米奮闘」や「操虎関税」「ミャク点満点」などの創作四字熟語は、その年を象徴するだけでなく、数年後、数十年後に振り返ったときにも、「ああ、あの頃はこんなことがあったな」と思い出す手がかりになります。
特に、物価の上昇や生活の不安定さは、すぐに解決するとは言えない課題です。だからこそ、少しユーモラスに自分たちの状況を見つめ直す「ことばの余裕」を持てることは、とても大切なのかもしれません。
「古米奮闘」という言葉には、厳しい現実の中でも、知恵と工夫でなんとか乗り切ろうとする人々への、ささやかなエールが込められているようにも感じられます。
私たちも「自分の四字熟語」を考えてみよう
創作四字熟語のニュースに触れた今、自分自身の1年をふりかえって、「自分だけの四字熟語」を考えてみるのもおすすめです。
- 仕事や勉強の1年を表す四字熟語
- 家族や友人との出来事を表す四字熟語
- うれしかったこと、つらかったことをこめた四字熟語
既存の四字熟語をもじってみるのもよし、まったく新しい組み合わせを考えてみるのもよし。ことしの「古米奮闘」のように、生活の実感やちょっとしたユーモアをつめこんでみると、きっとおもしろい言葉が生まれます。
ことば遊びを通じて、少し笑いながら、そして少し真面目に、自分と社会を見つめ直す――創作四字熟語は、そんな時間を私たちに与えてくれます。




