京都の高校生、プロに交じり技能五輪へ——庭造りで“景色”を創造する挑戦

2025年10月17日から20日にかけて愛知県で開催される「第63回技能五輪全国大会」。この大会では、日々研鑽を積んできた全国各地の若い技能者たちが集い、機械・建築・電気・造園など多彩な職種で日本一の座を競います。今年、その大舞台に京都の高校生がプロの職人たちと肩を並べて参加することが、地元や業界内で大きな話題となっています。

技能五輪全国大会とは

技能五輪全国大会は、日本の次世代を担う青年技能者(原則23歳以下)がその技術力を大いに発揮する技能競技会です。多様な職種で競われ、選手たちには努力目標が与えられるとともに、開催地の若い世代や一般の人々にも“技能の尊さ・重要性”を身近に感じてもらうことを目的としています。また、技能日本一を決める大会であると同時に、翌年の技能五輪国際大会代表候補の選考も兼ねており、国内外からも高い注目が集まります

京都の高校生が挑む「景色を創造できる」庭造りの世界

今年、全国大会に出場する京都代表の中で、ひときわ注目されているのが造園(庭造り)部門に挑戦するある高校生です。その高校生は日々の学校生活や部活動の合間にも、地元のプロ職人に混じって“技”を磨いてきました。本人が語るには、「自分の手でひとつの景色を創り出す庭造りには、単なる作業を超えた“表現”の喜びがある」とのこと。

庭造りは、古くから日本文化に深く根差してきた伝統職種の1つです。そこには、植物の成長を見越した配置計画や繊細な石組み、そして四季や空間全体の調和を考え抜かれた設計力と実作業の確かな技術が求められます。その道のりは決して平坦ではありませんが、高校生でありながら、プロに引けを取らない意欲と着実な技術力に周囲の大人たちも期待を寄せています。

出場までの道のりと選抜方法

技能五輪のほとんどの職種では、都道府県ごとに予選が実施されています。京都府の場合、「京都府大会」での成績や、予選を実施しない職種では業界の推薦を受けて代表選手が決まります。高校生の彼も、学校や地域の支援を受けながら厳しい予選をくぐり抜け、このたび全国の舞台への切符を手にしました。

技能五輪全国大会の概要

  • 参加資格:23歳以下(職種によっては年齢制限の例外あり)
  • 実施期間:2025年10月17日(金)〜10月20日(月)
  • 開催地:愛知県
  • 競技職種:約40職種(例:機械組立て・建築・電工・左官・造園ほか)
  • 全国から予選を勝ち抜いた若手技能者が競う
  • 成績上位者は国際技能五輪大会代表候補となる

京都府からも毎年多くの若者が出場しており、第62回大会では10名中5名が入賞。旋盤やフライス盤、電工職種では銀賞や銅賞の受賞者が出ています。今年も京都から複数名が全国で競技を展開する予定です

造園職種の技能とは——現場で求められる力

造園の競技では「決められたスペースにどれだけ美しく・合理的に“景色”をまとめ上げるか」が試されます。与えられた図面やテーマの中で、樹木・石・砂利・芝生など天然素材を道具と手作業でバランス良く配置します。制限時間内の緻密な工程管理と、時には現場でのアドリブ対応も欠かせません。また、剪定や石組み、人工物の組立てといった“個々の技術”だけでなく、「全体を1つの作品として仕上げる感性」が重要視されます。

現代の日本庭園は伝統への敬意を保ちつつも、住宅や公共施設、商業空間など多様な場で進化しており、造園技能者の役割はますます広がっています。技能五輪の競技課題も、伝統的な手法と現代の感覚の両立や新しい施工法への対応力が求められています。

高校生が目指した理由——“ものづくり”の魅力を語る

「子どもの頃から庭園や公園の景色に心を惹かれていた」と語る彼は、京都という古都に育ったこともあり、伝統的な日本庭園や四季折々の風景の美しさに強く共感を覚えたそうです。高校生活では、部活動や授業のほか、地元の造園業者でインターンシップを経験し、多くのプロの指導を仰ぐ機会に恵まれました。「自分で考え、苦労して手を動かすことで、少しずつ完成に近づいていく達成感がある。庭造りは、単なる仕事を超えた“景色を創造する喜び”がある」との真剣な言葉には、将来への希望と責任感が感じられます。

現場を支える周囲の存在——地域・学校・プロの職人たち

技能五輪への挑戦は本人だけの力ではありません。学校ではものづくりコンテストや技能講習会が開かれ、卒業生やプロの指導者が後輩育成に協力しています。例えば過去には、技能五輪「電工職種」で銅賞を獲得した学生が今は指導者として後進を育て、“技”の継承が現場で息づいています。地元企業による現場研修や業界団体による推薦も、若者たちの技能向上に欠かせないサポートとなっています。

同じように造園業界からも、惜しみない指導やアドバイスが寄せられ、高校生選手はその全てを糧に日々成長しています。また、地域全体が「若い技能者の挑戦を応援する」という雰囲気に包まれていることも、京都ならではの強みです。

技能五輪が拓く未来と期待

技能五輪は単なる知識や経験だけでなく、課題ごとの“創造力”、他者との競争を通じて磨かれる“度胸”、そして全国から集まる同世代との交流を通じた“広い視野”を育みます。将来、社会の第一線で活躍する技能者として、あるいは後進を育てる指導者として、多彩な舞台が待っています。また、若い世代が技能分野に誇りと希望を持ち、手に職をつけて社会に貢献していく姿の発信は、近年叫ばれる「技能者不足」や「伝統の継承」にも新たな光を当てるでしょう。

現代社会ではAIやデジタル化が進む一方、“人の手”による細やかな感性や技が求められる場面が確実に存在します。庭造りのような伝統職種は、日本の文化や観光資源としても重要であり、技能五輪全国大会の存在意義はますます大きくなっています

おわりに——若き挑戦者たちへエール

10月、愛知県で花開く技能五輪全国大会。京都の高校生が、プロの職人に混じり「景色を創造できる」庭造りの技と心で全国の舞台に挑みます。その姿は、同世代の若者や地域社会に“手に職を持つ尊さ”と“ものづくりの感動”を力強く伝えることでしょう。多くの人たちが彼の、その一歩を見守っています。

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