美輪明宏主演、伝説の名作映画「黒蜥蜴」がNHK BSで放送へ
~江戸川乱歩原作×三島由紀夫脚色×深作欣二監督による“美”と“ミステリー”の饗宴~

はじめに—再び光を放つ映画「黒蜥蜴」

1968年に公開された映画「黒蜥蜴」が、2025年11月25日にNHK BSで放送されます。これは、名優・美輪明宏(当時は丸山明宏)が主演し、三島由紀夫による戯曲をもとに深作欣二監督が映画化した傑作です。さらに、三島由紀夫自身も本作に特別出演しており、映画、文学、舞台の“美”と“知性”が結集した作品として日本映画史上に燦然と輝き続けています。この放送を機に、多くの新旧ファンが「黒蜥蜴」の世界に再び浸ることになるでしょう。

物語—“美”を愛する妖艶な女怪盗と名探偵の攻防

映画「黒蜥蜴」は、江戸川乱歩による同名小説を原作とし、美しいものを愛しすぎるがゆえに犯罪へと手を染めていく女怪盗「黒蜥蜴」(緑川夫人)の数奇な運命を描きます。「黒蜥蜴」が狙うのは、宝石商・岩瀬の美しい一人娘・早苗。自身の美的欲望と犯罪、そして危うい愛を抱え、追い詰められながらも名探偵・明智小五郎との命を賭けた駆け引きを繰り広げます。

この作品は単なる犯罪ミステリーにとどまらず、“美しいものを自分のものにすること”への執念や、犯罪者と探偵、二人の間に芽生える複雑で危険な感情の交錯など、人間の深い欲望と孤独、憧れと諦めが静かに、しかし濃密に綴られていきます。

キャストとスタッフ—唯一無二の豪華座組

  • 主演・黒蜥蜴/緑川夫人:美輪明宏(丸山明宏)—「美」の象徴として作品世界を支配する女怪盗役。妖艶さとミステリアスな存在感で観客を魅了します。
  • 明智小五郎:木村功—名探偵役で、美輪との知的な攻防を繰り広げます。
  • 岩瀬早苗:松岡きっこ
  • その他、川津祐介、西村晃、丹波哲郎ら名優陣が脇を固めます。
  • 特別出演:三島由紀夫—世界的作家であり、本作の戯曲を執筆し、自らもカメオ出演を果たしています。
  • 原作:江戸川乱歩
    脚本:成沢昌茂
    監督:深作欣二

作品の魅力—“究極の愛”を描く世界観

「黒蜥蜴」の最大の魅力は、妖しげで耽美的な映像美と、緊張感あふれるサスペンス、そして男女の愛が交錯する危うい空気です。物語は、単なる盗賊と探偵の対立軸から逸脱し、「自分と真逆の者に惹かれ合う歪んだ愛と、それに突き動かされる人間の本質」を深く描写しています。美輪明宏が体現する黒蜥蜴は、美のためなら手段を選ばず突き進む一方、明智への特異な想いを持ちます。その終局には、見る者を驚愕させる“究極の愛”の形が待ち受けています。

同時に、深作欣二監督によるトリッキーで流麗な演出や、豪華な美術・衣裳・映像表現も見どころです。時代背景に合わせたきらびやかなセットと妖艶な雰囲気が融合し、観客を唯一無二の世界へと誘います。

「黒蜥蜴」の歴史的意義と後世への影響

1968年に公開された「黒蜥蜴」は、日本映画史において画期的な存在となりました。公開時には“黒蜥蜴ブーム”とも言える社会現象が巻き起こり、評論家のみならず多くの観客から絶賛されました。美輪明宏による黒蜥蜴像は、従来のジェンダー観や善悪観を揺るがす斬新なものであり、その後の舞台・映画・ドラマへの影響は計り知れません。

また、本作は美輪明宏、深作欣二、三島由紀夫という異分野の表現者たちがコラボレーションした希少な芸術作品でもあります。三島由紀夫は、映像と文学の融合をこの作品で体現し、日本文化に美意識とダイナミズムを新たな形でもたらしました。

主なストーリー〜あらすじ〜

  • 宝石商・岩瀬の愛娘、早苗の誘拐をきっかけに物語が始まる。
  • 緑川夫人こと黒蜥蜴は、華麗な手口で警察や明智小五郎を翻弄しつつ、“美”への欲望に突き動かされる。
  • 対する明智探偵は、冷静な頭脳と推理力で黒蜥蜴を追い詰めるも、次第に彼女に特別な想いを抱き始める。
  • 幾多の罠や駆け引きの末、二人が行き着くのは「究極の愛」とも呼べる衝撃のラストである。

ここには、単なる“正義vs悪”ではなく、お互いに惹かれ合う歪んだ感情・価値観・美学の葛藤、そして背徳と純粋が同居したグラデーションが丁寧に描き出されます。

ビジュアルと音楽—エレガントで妖艶な美の極地

「黒蜥蜴」の映像世界は、鮮やかでエキゾチックな美術、ゴージャスな衣裳、独特の照明演出によって、非日常的な空気感を醸し出します。美輪明宏の存在感を最大限に引き立てるステージのようなセットや、力強くも繊細な音楽が、観客を幻想的な物語空間へと誘います。

NHK BSでの放送意義—今、あらためて蘇る日本文化の財産

2025年11月25日の放送は、“昭和時代の異才たち”による歴史的協働作品が、半世紀以上の時を超えて新たな世代へと引き継がれる機会でもあります。また、近年は多様な価値観や表現が求められる時代だからこそ、「黒蜥蜴」が持つジェンダー観・美意識・愛のかたちが、現代にも重要な示唆を与えることでしょう。

さらに、本作の放送にあわせて、Blu-ray&DVD化も話題となっています。未見の新しい観客にとっても、懐かしさを覚える往年の映画ファンにとっても、改めて本作の凄みや魅力を体感する絶好の機会といえるでしょう。

黒蜥蜴—名シーン・名セリフの余韻

本作には「美しいものを自分のものにしたい」という黒蜥蜴の衝動や、「愛する人はどこまで許されるのか」という深淵な問いが、随所に散りばめられています。特に終盤、黒蜥蜴と明智の間に生じる複雑な感情や、自己犠牲をも含んだ愛の表現は、観客に強い余韻と考えさせる間を残します。こうした余韻のあるセリフや情景は、今なお多くの人々に語り継がれています。

関連情報・周辺作品

  • 同時期にDVD・Blu-ray化された「黒蜥蜴」と美輪主演「黒薔薇の館」も、新たなB級ミステリーブームとして注目されています。
  • 江戸川乱歩のその他の小説や、三島由紀夫戯曲の映像化作品にも再び関心が集まっています。
  • 深作欣二監督のその他のフィルモグラフィーも、再評価の流れの中で振り返られつつあります。

過去から現在、未来へと受け継がれる「黒蜥蜴」の世界観は、“美しさ”と“人間の業”を描き切った、本物の芸術作品であると言えるでしょう。

最後に—再発見される「黒蜥蜴」 世代を超えて響くメッセージ

ブラックユーモア、サスペンス、美意識、そして哀しみ…。多彩な色を放ちながら、映画「黒蜥蜴」は今もなお、観る人に新しい感動と発見を与えています。2025年11月25日、本作が再び多くの人々の目に触れることにより、時代を超えた普遍的なメッセージが、日本中に静かに、しかし力強く響き渡ることでしょう。

参考元