中国人留学生と慶應義塾大学の入試制度 ― なぜ今、慶應が「2年で8割合格」なのか
2025年現在、慶應義塾大学への中国人留学生の合格状況や入試制度が大きな話題となっています。なぜ「普通の中国人留学生でも2年勉強すれば、80%の確率で慶應に合格できる」とまで言われているのでしょうか。また、なぜ日本に中国人留学生が急増しているのか。その背景には、日本人受験生と留学生の受験科目の違いや、留学から就職、さらに永住権取得までの流れなど、複数の事情が絡み合っています。
慶應義塾大学留学生入試の現状
慶應義塾大学の外国人留学生入試は、日本人受験生とは試験方式・難易度が大きく異なります。日本人の場合、共通テストと2次試験合わせて6教科8科目、さらに文・理系それぞれに4教科5科目もの厳しい学科試験を突破する必要があります。しかし、留学生には専門の入試枠(EJU:日本留学試験)が設けられており、受験科目は「日本語」「数学」「理科または総合科目」の3科目のみとなっています。
- 日本人受験:共通テスト+2次試験(合計6教科8科目+4教科5科目)
- 外国人留学生受験:EJU+小論文・面接(合計3科目+2次試験は面接・小論文のみ)
このため、特に中国人留学生の間では「日本人より圧倒的に受験科目が少なく、難易度も易しい」との認識が広がり、専門予備校の校長も「普通の中国人留学生でも2年勉強すれば、80%の確率で慶應に合格できる」と証言しています。
「中3レベルの入試」という現実
慶應義塾大学が課す留学生入試は、中国国内でも「中学校3年生レベル」と評されることが多いです。具体的には、EJUの配点は以下の通りです。
- 日本語400点
- 数学200点
- 総合科目または理科200点
- 合計800点満点
東京大学や早稲田大学、そして慶應義塾大学の合格目安はEJUで「680点」とされ、年2回(6月・11月)の試験で最大4回チャレンジできるため、高い合格率を実現しています。
日本人受験生との「公平性」の議論
多くの日本人受験生は、厳しい教科・科目の壁を越えなければなりません。例えば、東大の受験では共通テスト6教科8科目に加え、2次試験で学力の差まで問われる一方、留学生の場合はEJUの3科目と、2次試験は小論文・面接のみで学科試験がありません。このため、日本の入試制度の「公平性」や「難易度差」が議論されています。
- 日本人には:知識量・応用力・総合力が厳しく問われる
- 留学生には:限られた3科目への特化型対策のみ
この現状を受けて、SNSやメディアでは「中国人留学生は日本人に比べて容易に難関大学へ進学している」という声や、「今や慶應は2年の準備で合格できる」といったコメントが頻出しています。
留学生急増の背景 ― 永住権取得というルートの魅力
2024年末時点で在留中国人は87万人と過去最多となっています。その理由のひとつが、「留学→就職→永住」という明確なルートの存在です。日本での大学卒業後に高度人材ポイント制度を活用し、永住権を比較的短期間で申請できる仕組みが整っています。
- 大学卒業で10点
- 修士課程修了で20点
- 年収600万円台で20点
- 日本語能力試験N1合格で15点
ポイントが80点以上なら1年で永住権申請可能、70点以上で3年で申請可能という制度が、将来を見据えた多くの中国人留学生にとって極めて魅力的に映っています。
政治的緊張と「留学は政治と関係ない」という若者の声
日中関係が政治的に緊張する中でも、「留学は政治とは関係がない」とする中国の若者が増加傾向にあります。彼らは、日本の大学の質や生活環境、将来のキャリアの広がりなどを理由にあげており、「中国には留まらず、日本に来て2年間勉強した方がよほど未来が開ける」とする留学生予備校校長のアドバイスを参考にしています。
- 日中関係の悪化にもかかわらず、留学志向は堅調
- 学歴、就職、永住権取得という現実的な進路への期待
留学生受験対策予備校の活況
東京都内には中国人留学生専門の予備校が数多くあり、そこでEJU対策や面接・小論文指導が徹底されています。「普通の中国人でも2年間専門予備校で勉強すれば、慶應大学に8割合格できる」という言葉の根拠には、日々の合格者実績や指導ノウハウがあります。
- EJU試験は年2回、2年間有効(最大4回チャレンジできる)
- 志望理由書や面接対策が重要視される
今後の課題 ― 「多様性」と「公平性」の揺れる教育現場
この流れを受け、日本の大学教育現場では「多様性の促進」と「入試の公平性・質維持」の両立が課題となっています。中国人留学生の学力や日本語能力、大学卒業後の進路、将来的な社会定着率など、多角的な視点での議論が続いており、慶應義塾大学としても入試方式や受け入れ制度の改良が求められています。
- 外国人留学生向け入試要項の見直し
- 日本人受験生と留学生の出願・合格基準の情報公開
- 卒業後の進路や社会定着支援の制度化
まとめ ― 今なぜ「慶應は2年で8割合格」なのか
今回の話題は、単なる中国人留学生の増加だけではなく、受験方式の違いと制度設計、そして個人の進路・夢を実現する現実的なルートが複合的に交差していることがわかります。グローバル化の中で、今後も日本の大学教育と入試制度は変化を続けていくでしょう。日本人受験生と中国人留学生、それぞれの立場と現状を踏まえ、より公正で持続可能な大学教育の在り方が問われています。
- 中国人留学生は、3科目中心のEJU方式により難関大学合格のハードルが低い
- 永住権申請を含めた進路の広がりで留学熱が高い
- 「留学と政治は関係がない」という前向きな若者が増えている
- 今後は公平性と多様性を両立した教育の在り方が求められる


