京急線北品川駅で進む大規模プロジェクト:新駅舎デザイン案を発表

2025年9月1日、京浜急行電鉄は日本の鉄道路線の中でも歴史ある京急本線「北品川駅」(東京都品川区)の新駅舎デザイン案を公表しました。本事業は泉岳寺駅から新馬場駅までの区間を対象とし、鉄道と道路を高架化する連続立体交差事業(連立事業)の一環として進められています。今回の新駅舎案は地域の歴史や文化と調和し、まちとまち、人と人を「つなぐ」ことを重視した施設コンセプトで計画されているのが特徴です

旧東海道の街並みと調和するデザイン

新たな北品川駅のデザインの最大の特徴は、旧東海道の宿場町「品川宿」の景観に調和した意匠であることです。駅舎の外観や設えには、日本の伝統的な意匠が多く取り入れられています。代表的なのは、青海波(せいがいは)模様をモチーフとした窓や装飾で、これは古来より波が絶えず続く様子から平安や繁栄を象徴するとされ、旧東海道に息づく歴史や町並みとの連続性を意識した意匠となっています

また、駅のデザインテーマは「まちとまち、人と人とをつなぐ駅。」駅舎の高架化により、従来線路で分断されていた東西の往来がしやすくなり、駅を中心としたまちづくりが新たな段階へと進みます。公共空間や歩行者空間も創出しながら、「旧東海道の情緒ある街並みが、現代の都市生活と違和感なく溶け合う」ことが目指されています

地域住民との対話を重ねた計画

この新駅舎デザイン案は、地元住民との意見交換やアンケートを通じて集められた声を基に、複数回の議論を経てまとめられました。実際に寄せられた意見の一例として、以下のようなものがあります。

  • 「京急が走る景色:旧東海道に沿って走る京急線の景色を残してほしい」
  • 「品川宿の玄関口:近代的な品川駅から旧東海道の風情へと続く“玄関口”にふさわしい駅に」
  • 「周辺との調和:周辺の都市開発ともうまく調和しつつ、歴史ある宿場町の雰囲気を大切に」
  • 「日本文化の発信:外国人にも日本文化を感じてもらえるような駅に」
  • 「未来への伝承:旧東海道品川宿の歴史や文化を次世代に伝えたい」

こうしたさまざまな地域の声が、実際のデザインに随所で活かされています

駅施設の特徴と新たな機能

  • 高架化による利便性向上:連続立体交差による高架化によって踏切が撤去され、駅周辺の渋滞緩和や安全性が向上します。
    また、東西をつなぐ自由通路の新設や、バリアフリーの向上も大きなポイントです。
  • 「宿場町」デザインの活用:デザイン案では、夜間に灯る格子高窓(こうしまど)、外光や視線を調節する格子意匠、障子風の建具、ガラス開口部の開放感といった和の要素が盛り込まれています。これにより、昼夜で表情を変える落ち着いた駅舎が計画されています
  • ホーム延長・施設拡張:新ホームは延長約113メートル、幅は2メートルから5メートルとされており、混雑時にも余裕のある設計です
  • 新たなまちづくりへの連動:駅東側の品川浦エリアなど周辺地域においても大規模な再開発や都市機能向上が予定されており、駅の高架化・移設がまち全体の発展を後押しする基盤となっています

連立事業と「品川開発プロジェクト」の広がり

この北品川駅高架化に象徴される都市インフラの再構築は、京急電鉄が推進する「品川開発プロジェクト」と連動し、品川駅から天王洲アイル、羽田空港へのアクセス機能の強化にもつながります。
旧東海道へのリスペクトを大事にしながらも、国際都市・東京の玄関口として「こころと世界を動かすつながりの湊(みなと)」という、将来を見据えたビジョンのもとで新たなまちづくりが進行しています

今後のスケジュールと市民参加

2025年9月1日から9月30日までの間、京急電鉄はこの北品川駅新駅舎デザイン案に関して一般からの意見募集を実施しています。これにより、より多くの人々がまちづくりに直接関わることができる仕組みとなっており、「長く愛される駅舎づくり」に向けて更なるブラッシュアップが期待されています

歴史と現代を結ぶ北品川駅の役割

約400年ほど前から続く旧東海道・品川宿の玄関口として、北品川駅は多くの旅人や地元民の拠点でした。時代が移り変わり高度成長期、さらにはグローバル都市へと発展した東京でも、その役割は大きく変化しています。
今回の高架化・駅舎改築により、歴史的景観を守り伝えつつ、同時に災害対応力や環境性能の強化、さらなるバリアフリー推進にも取り組みます。これにより小さな子どもからお年寄り、訪日外国人観光客まで誰もが使いやすく、安全で心地よい駅へと生まれ変わることが期待されています。

京急線沿線の「これから」

品川―泉岳寺間の連立事業、そして北品川駅の新しい駅舎計画は、単なるハードの刷新にとどまらず、地域コミュニティ・文化・観光の新たな拠点形成として大きな意味を持ちます。
青海波模様や格子窓に代表される和の意匠は、単なる外観美だけでなく、「この土地を歩み、ここで暮らした人々のDNA」を未来へと伝える象徴でもあります。まさに「宿場町×ハブステーション」の融合です。

まとめ:「つなぐ」駅から生まれる新しい物語

京急線北品川駅の高架化・新駅舎デザイン案は、歴史と未来・人とまちを結ぶ現代的な鉄道駅の新しいモデルを提案しています。
今後も工事進捗や詳細設計のブラッシュアップ、市民参加型のワークショップなど多様な方法でまちの未来が形づくられていく予定です。
北品川の街並みを愛する皆さまと共に「つなぐ駅」が拓く新しい日常に、これからも多くの注目が集まりそうです。

参考元