スラマン聖地の鎌倉、ご当地ナンバープレート交付停止へ 観光公害対策で住民配慮
神奈川県鎌倉市は、人気漫画「スラムダンク」の聖地として知られる江ノ島電鉄鎌倉高校前駅の踏切をデザインした原付きバイク用のオリジナルナンバープレートの交付を、2026年1月末で停止することを発表しました。ファンの殺到による観光公害と住民への迷惑が深刻化していることが理由となっています。
ナンバープレートが生み出した予想外の集客
鎌倉市が交付していたこのナンバープレートは、スラムダンク作中に登場する有名な踏切風景を描いたデザインになっていました。このご当地ナンバーの存在が、アニメや漫画ファンにとって大きな話題となり、記念撮影を目的とした観光客が大量に押し寄せることになりました。
特に問題となったのは、ナンバープレートのデザインが集客につながることに対して、地域住民から不快感の声が上がったという点です。市民の多くは、このナンバープレートが観光客をさらに呼び込んでしまうことへの懸念を表明していました。
深刻化するオーバーツーリズムと住民の負担
鎌倉高校前駅の踏切周辺は、すでに長年にわたってスラムダンクファンの聖地として知られていました。しかし、ご当地ナンバープレートが登場したことで、その訪問者の数はさらに急増することになったのです。
踏切周辺では、記念撮影のため線路上や駅の構内に無断で立ち入る観光客、危険な行為をしながら写真を撮影する人々、そして交通を妨害する行為が相次いでいます。こうした状況は、地域住民の日常生活に深刻な支障をきたしており、鎌倉市も対応を余儀なくされていました。
またナンバープレートの存在により、より多くの人がこの地を訪れるようになることで、駅周辺の混雑が加速し、地元の商店街や住宅地にも影響が波及していることが指摘されていました。
鎌倉市の判断と今後の対応
鎌倉市が下した決断は、観光と地域住民の生活環境のバランスを取るための苦渋の選択だったと言えます。市側の公式な見解では、「デザインが集客につながると不快に感じる市民がいる」ということを明確に述べており、住民の声を重視した姿勢が示されています。
ナンバープレートの交付停止は2026年1月末からの実施となります。すでに交付されているプレートについては、市から回収する方針が示されています。この対応によって、今後ナンバープレートを目当てにした新たな観光客の増加は抑止されることになるでしょう。
観光地と地域住民の関係を考える
今回の決断は、日本全国の人気観光地が直面する「オーバーツーリズム」という課題を浮き彫りにしています。スラムダンクという世界的に人気の高い作品の聖地として自動的に観光地化してしまった鎌倉高校前駅ですが、その人気が思わぬ形で地域住民に負担をもたらしていました。
観光客による経済効果を期待する一方で、地域の安全や快適さが損なわれてしまっては本来の目的を失ってしまいます。鎌倉市のこの決断は、観光業の振興と地域住民の生活環境の保全の両立がいかに重要であるかを示す事例となっています。
地域経済への影響を懸念する声も
一方で、このナンバープレート交付停止による地域経済への影響を懸念する声もあります。観光客が増えることで潤ってきた周辺の商店街や宿泊施設にとって、この決断は売上減少につながる可能性があるからです。
ただし、市側の判断は「持続可能な観光」を目指すものだと解釈できます。短期的な集客増よりも、長期的に地域が安定した形で観光と共存していくことの方が、結果的には地域全体にとってプラスになるという考え方に基づいているのです。
スラムダンク聖地を守るための取り組み
鎌倉市は、ナンバープレート交付停止と並行して、踏切周辺の安全管理や観光客のマナー啓発活動をより強化していく方針です。看板設置による注意喚起や、駅員による巡回の増加なども検討されています。
スラムダンクの聖地としての価値を損なわないようにしながら、同時に住民の生活環境を守るというバランスの取れた対応が求められています。
今後の観光地のあり方を考える
このケースは、観光地経営における重要な教訓を提供しています。新しい施策が思わぬ形で観光客の流入を加速させることもあり、それが地域に負の影響をもたらす可能性もあるということです。
ナンバープレート交付停止という決定は、地域住民の声に真摯に耳を傾けた結果であり、今後の観光地運営において「住民ファースト」の重要性を改めて示すものとなるでしょう。
鎌倉市のこの判断が、他の観光地における参考事例となることを期待します。



