琵琶湖の底から1万年以上前の縄文土器が発見 ほぼ完全な形での出土は極めて珍しい

滋賀県は11月25日、琵琶湖北部の葛籠尾崎(つづらおざき)湖底遺跡で、縄文時代初期のほぼ完全な形の土器が見つかったと発表しました。この土器は約1万500年前から1万1000年前のものと推定されており、これまでこの遺跡で発見された最も古い土器となります。

水深60メートルの湖底で無人探査機により発見

今回発見された土器は、長浜市の琵琶湖沖合に位置する葛籠尾崎湖底遺跡の水深約60メートルから64メートル付近で見つかりました。調査に当たっては無人潜水機が使用され、湖底の詳細な調査を通じて、ほぼ完全な状態でこの貴重な遺物が発見されたのです。

この土器の形状には特徴的な点があります。底部が尖って砲弾のような形をしており、縄文時代初期の土器の典型的な特徴を備えています。同時期の縄文土器がこのようにほぼ完全な形で見つかることは非常に珍しいとされており、考古学的な価値が極めて高い発見といえます。

古代における琵琶湖での船舶交通の証拠

この発見は、単なる土器の発掘にとどまりません。滋賀県の担当者は、この土器が発見された場所の深さと位置について注目しています。水深60メートルを超える深い場所に土器が存在すること自体が、古代人がどのような方法で琵琶湖を移動していたかを物語っています。

「おそらく船じゃないとここまでたどり着けませんので、琵琶湖で船を使って湖上を交通していたということの証拠にもなるのではないか」と、調査担当者は指摘しています。つまり、縄文時代初期の段階で、琵琶湖の人々はすでに船を駆使して湖上での活動を行っていたことが、この発見から推測されるのです。

このことは、古代社会における技術的な発展と社会的な活動の範囲を示す重要な証拠となります。1万年以上前の時代に、人々が単に湖畔に定住していたのではなく、船を使って積極的に湖上を行き来していたという事実は、当時の社会構造と生活様式を理解する上で極めて重要な示唆を与えてくれます。

これまでの発見との比較と重要性

葛籠尾崎湖底遺跡では、これまでにも重要な発見が相次いでいました。約1万年前のものとみられる土器などが以前に発掘されていたのです。しかし、今回発見された土器は、その最古のものより500年から1000年さらに古いものであり、現在この遺跡で最も古い遺物となっています。

また、調査では古墳時代中期の土器6つなども発見されているため、この遺跡は縄文時代から古墳時代にかけての長期間にわたって、人間の活動の舞台であり続けたことがわかります。琵琶湖底に眠る遺跡は、日本の古代史を解き明かす貴重な情報源として、今後の調査の期待もますます高まっています。

今後の調査と研究への期待

滋賀県は、今後も国などの関連機関と連携を強化し、この遺跡の詳細な調査を進めていく方針を示しています。琵琶湖の底部には、まだ多くの謎が眠っているとみられ、さらなる発見の可能性も十分に考えられます。

今回のほぼ完全な縄文土器の発見は、単なる考古学的興味の対象ではなく、日本の古代社会と技術、そして人間活動の歴史を理解するための極めて重要な手がかりとなるでしょう。今後の調査の進展と研究成果の発表が、大いに期待されています。

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