エホバの証人、2025年9月に3つの言語で新たな聖書を発表

2025年9月、エホバの証人は3つの新しい言語で聖書の翻訳版を公式発表しました。ザンビアでの発表をはじめ、各地で言語ごとに新しい聖書が紹介され、世界中の会衆および地域社会に大きな関心を呼び起こしています。エホバの証人による積極的な聖書翻訳活動は、グローバルな宗教組織としての特徴の一つです。

2025年9月、ザンビアでの歴史的な聖書発表

2025年9月12日、エホバの証人のザンビア支部委員会によって、ザンビア手話の「クリスチャン・ギリシャ語聖書 新世界訳」が発表されました。この手話バージョンの聖書は、聴覚障害を持つ人々がより直接的に聖書の教えに触れられるよう、特別な工夫をこらして制作されました。同時に、他の2つの言語でも聖書が新たに発表され、その数・幅を年々拡大しています。
この発表は、障害の有無、母語の違いを乗り越え、誰もが聖書を読む機会を得られる世界の実現に向けた一歩と位置付けられています。

エホバの証人と「新世界訳聖書」の歴史

エホバの証人が発行する最大の特長の一つは「新世界訳聖書」(New World Translation)と呼ばれる独自の聖書翻訳です。この聖書は、エホバの証人による匿名の「新世界訳聖書翻訳委員会」によって編纂され、英語を含む120以上の言語に翻訳されてきました。特徴的なのは、神の名前「エホバ」を(国際的に他の教派の訳が神の名前の表記を控える中で)積極的に使用していることです。

翻訳活動と教理への反映

新世界訳聖書は、エホバの証人の教理や世界観を反映した内容となっています。そのため、翻訳方針や本文の解釈では他教派と大きく異なることがあります。例えば、「エホバ(Jehovah)」という神名の使用は、エホバの証人ならではのものであり、新約聖書の原文には見られないが、「復元」したと主張しています。異なる言語版にも神名が繰り返され、多言語の聖書においてこの点が統一されています

  • 英語やスペイン語、ドイツ語など、数多くのメジャー言語で翻訳版が発表
  • 近年は手話や少数言語、郷土語にも積極的に対応
  • 発表日、発表対象地域によって社会的反響もさまざま

各方面からの評価と議論

エホバの証人の新世界訳聖書は、一方で熱心な支持を集める一方、専門家や他のキリスト教会からは批判や懸念の声も少なくありません。他のキリスト教会では「新世界訳聖書」を独自の教義に基づいた翻訳だとし、「聖書として認めない」との立場を取る場合も見られます

また、翻訳文の意図的修正や意訳の挿入、原文では見られない語が加えられている点も指摘されています。特に、ギリシャ語原文にない「相対的な」という表現が挿入されている個所や、翻訳原則が徹底されていないケースなどが例として挙げられます。信者は一般的に翻訳の細部まで調査しませんが、研究者や元信者、専門家からはこうした議論が続いています

「誰もが聖書を読める社会」への挑戦:社会的影響

近年、エホバの証人はマイノリティ言語や障害者対応にも積極的に取り組んでいます。2025年9月に発表されたザンビア手話版をはじめ、2025年7月には14言語で聖書が発表されるなど、多様な言語と状況に対応し、「すべての人に神の言葉を届ける」活動を推進しています。

  • アフリカを中心に少数民族の言語版聖書が拡大
  • デジタル化やオーディオブック、点字出版にも注力
  • 公式ウェブサイトで無料提供やダウンロードも可

こうした活動は、信仰の自由や多様性を支える動きとして評価されています。一方で、エホバの証人の聖書解釈や独自教義・社会的立場が、家庭や地域社会、医療現場などで複雑な問題を巻き起こすケースも報告されています。

エホバの証人と現代社会:グローバル化と課題

エホバの証人は世界中に約850万人の信者を持ち、グローバルネットワークを築いています。翻訳活動にかける情熱が、出身国や文化、言語の違いを超えて交流を促進する一方で、日本を含む法制度や社会慣習との摩擦も散見されます。

特に「輸血拒否」「兵役拒否」といった信仰に基づく行動は、命や社会秩序に関わる重大な問題として取り上げられていますが、聖書翻訳の分野では「少数派の言語へのアクセス」を社会貢献として評価する声も強まっています。

今後の展望と社会へのメッセージ

エホバの証人の聖書翻訳活動は、宗教界のみならず言語学や社会学、障害者福祉などさまざまな分野で注目されています。今後もデジタル技術の発展とともに、さらに多くの言語や読みやすさへの配慮が期待されています。翻訳活動を通じて発信される「誰もが神の言葉にアクセスでき、自分の人生や価値観を見直す機会をもつ」というメッセージは、多様な社会の中で重要な意義を持つでしょう。

  • 手話や点字、読み上げ機能の拡充によるインクルーシブ社会の促進
  • 文化・宗教の違いを超えた相互理解
  • 翻訳作業による地域社会への雇用・教育機会の提供

2025年9月の「3つの言語での聖書発表」を契機として、エホバの証人による宗教活動と社会貢献、翻訳学の進展、そして多様性を認め合う時代の新しいスタンダードについて再評価が求められています。

今後も世界のあらゆる言語と文化に向けて、聖書の言葉が届けられていくでしょう。エホバの証人の翻訳活動がもたらすインパクトと、その社会的評価・論点が、引き続き注目されます。

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