大阪・関西万博最終日、イタリア館が華々しく閉幕

2025年10月13日、大阪・関西万博が閉幕を迎え、会場内で最も人気を集めたパビリオンの一つであるイタリア館も、その幕を下ろしました。最終日のイタリア館前には朝から長蛇の列ができ、開館6ヶ月間にわたって来場者を魅了し続けた展示に、最後まで多くの人々が詰めかけました。

東京から訪れた来場者は「午前10時から並んで、もう7時間も待っている」と話し、別の来場者も「どれだけ並んでも見ようかなと思っていました」と語るなど、最終日も変わらぬ人気ぶりを見せていました。会場の大屋根リングの上まで人で埋め尽くされるほどの盛況ぶりで、イタリア館は万博閉幕の日まで屈指の人気パビリオンとしてその存在感を示しました。

特別なクロージングセレモニーの開催

イタリア館では、最終日に豪華なクロージングセレモニーが開催されました。このセレモニーには、元フィギュアスケート選手のカロリーナ・コストナーさんや日本の宮原知子さんなど、著名なスケート選手が参加し、式典に華を添えました。

セレモニーの目玉となったのは、2026年冬季オリンピックの聖火リレーに使用される予定のトーチ2本の返還式でした。イタリアは2026年にミラノ・コルティナダンペッツォ冬季オリンピックを控えており、万博期間中に展示されていた聖火リレー用のトーチが、この閉館式典で正式に返還されることとなりました。この演出は、イタリアの次なる大型イベントへの期待を高める象徴的な瞬間となりました。

サプライズ演出:1日限りのスケートリンク

イタリア館の閉館を記念して、会場内には特別なサプライズが用意されていました。それが、1日限りのスケートリンクの設置です。万博会場にスケートリンクが出現するという前代未聞の演出は、多くの来場者を驚かせました。

このスケートリンクは、冬季オリンピック開催国としてのイタリアの魅力を最後まで伝えるための特別な企画でした。最終日の午前10時ごろには、イタリア館前で陸軍音楽隊による演奏も行われ、閉幕を祝う華やかな雰囲気に包まれました。

イタリア館の人気の秘密

イタリア館がこれほどまでの人気を集めた理由は、その展示内容の充実さにありました。来場者がまず鑑賞するのは、イタリアの歴史や文化を紹介する映像です。そして映像が終わると、驚きの仕掛けが待っていました。映像が流れていたスクリーンが実は扉になっており、その先に進むことができるのです。

扉を抜けた先で来場者を出迎えるのは、日本初公開となる『ファルネーゼのアトラス』という大きな彫刻でした。約1900年前に作られたこの作品は、筋肉や血管まで精巧に表現されており、宇宙を担いで知識の重みに膝をつく姿は、人間の向上心を表現しているとされています。

国宝級の芸術作品が一堂に

イタリア館には、イタリア全土から集められた国宝級の作品が数多く展示されていました。ルネサンスを代表する芸術家ミケランジェロの彫刻『キリストの復活』や、巨匠カラヴァッジョの代表作『キリストの埋葬』。さらに、レオナルド・ダ・ヴィンチのスケッチ『アトランティックコード』など、美術史に名を刻む傑作が一堂に会していました。

イタリア館のマリオ・ヴァッターニ政府代表は、「イタリア人は日本のことが大好きで、大阪に何か大事なパビリオンを作らないと」と語り、イタリアの本気度を示しました。来場者からも「日本によくこの物量というか、貴重さも含めてよく持ってこられたなと思っていて、イタリアの底力を感じました」という声が聞かれました。

毎週入れ替わる期間限定展示

イタリア館のもう一つの大きな特徴は、毎週のように入れ替わる期間限定の展示でした。イタリアの各州や町が選び抜いた特産品や芸術作品を順次陳列することで、来場者は訪れるたびに新しい発見がある仕組みになっていました。

ローマやミラノ、フィレンツェといった有名な観光地だけでなく、日本でまだ知られていない地域の魅力を伝えることが狙いでした。この戦略により、イタリア館は何度訪れても楽しめるパビリオンとして、リピーターを獲得することに成功しました。

夜を徹しての展示入れ替え作業

展示の入れ替え作業は、閉館後の夜を徹して行われていました。午前0時には作業中にもかかわらず、誕生日を迎えたスタッフのお祝いが始まるなど、万博ならではの光景も見られました。

特筆すべきは、目玉展示であるダ・ヴィンチのスケッチ『アトランティックコード』の入れ替えです。開幕から展示されていた作品は、展示によるダメージを考慮し、会期の折り返しとなる3ヶ月で本国へ返還されました。しかし、代わりにダ・ヴィンチの別のスケッチが届けられ、この作業のためだけに専門の女性スタッフがイタリアから来日しました。

本物へのこだわりが生んだ成功

傷がつくリスクがあっても、入れ替える手間をかけても、本物にこだわる。これがイタリア館の戦略でした。実際、イタリア館には一般の来場者が入ることができない特別なエリアも存在し、VIPや関係者向けの特別な空間も用意されていました。

このような徹底した品質管理と演出へのこだわりが、イタリア館を万博で最も人気のあるパビリオンの一つに押し上げました。最終日まで7時間待ちの行列ができるほどの人気は、イタリアの文化外交の成功を物語っています。

万博閉幕とともに終わった6ヶ月間の挑戦

2025年10月13日の閉幕をもって、イタリア館の6ヶ月間にわたる挑戦は幕を閉じました。国宝級の芸術作品の展示、毎週入れ替わる期間限定展示、そして最終日のスケートリンクやクロージングセレモニーまで、イタリア館は最初から最後まで来場者を魅了し続けました。

大阪・関西万博におけるイタリア館の成功は、今後の国際博覧会におけるパビリオン運営の模範となることでしょう。本物の文化や芸術を惜しみなく提供し、来場者一人ひとりに特別な体験を届けるという姿勢が、多くの人々の心に残る結果となりました。

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