スポーツカーの新潮流を語る――インフィニティ「エマージ」と日産「ダットサンベビィ」にみる先進と伝統の融合
はじめに
近年、自動車業界ではエコ技術と走行性能が高度に融合したスポーツカーが注目を集めています。特に、インフィニティのコンセプトスポーツEV「エマージ」(Emerg-E)、そして日産の小型スポーツカー「ダットサンベビィ」は、その代表格と言える存在。両車は異なる時代と背景を持ちながらも、“コンパクトなボディに秘めた本格的な走り”という共通項によって、多くの自動車ファンを魅了し続けています。
インフィニティ「エマージ」――未来を感じさせる高性能EVスポーツカー
インフィニティ「エマージ」(Emerg-E)は、2012年のジュネーブモーターショーで披露され、世界中のスポーツカーファンだけでなく環境技術に関心のある層にも強い衝撃を与えました。
大きな特徴は、1.2リッター3気筒エンジンを発電専用として搭載し、2基のモーターが合計で約402馬力(300kW)もの出力を実現している点です。このツインモーターは、停止状態からわずか4秒で時速60マイル(約96km)まで加速するほど圧倒的なパワーを発揮。全長は約4.4mという、現代スポーツカーとしてはコンパクトながら、車幅やホイールベースのバランス設計によって、抜群のハンドリング性能を誇ります。
- エンジン:1.2L直列3気筒(発電専用)
- モーター出力:合計300kW(約402馬力)
- 全長:約4.4m
- 駆動方式:ミッドシップレイアウト
- 0-100km/h加速:4秒以下
- 重量:約1,600kg
- 車両価格(参考):約1,200万円
デザインにも強いこだわりが感じられます。インフィニティらしい芸術的なラインが生み出す独特の美しさと、空力性能を徹底的に追求したボディ。インテリアにも高級ブランドらしい品格が現れ、未来的なガジェット類や素材使いが印象を際立たせます。
さらに「エマージ」は、今でこそ普及しつつある“レンジエクステンダー”という考え方をいち早く提案。バッテリーだけでなく発電用エンジンを備えて航続距離を大幅に延長する仕組みは、次世代スポーツカーのあり方を示す先駆的存在となりました。
小型で本格派、伝説の「ダットサンベビィ」――“軽”フェアレディZの魅力を探る
次にご紹介するのは、日産の「ダットサンベビィ」です。あのフェアレディZを連想させる小型で本格的なスポーツカーとして、今再び脚光を浴びています。その最大の特徴は、全長わずか3mというコンパクトさと、タフな“空冷エンジン”を搭載していること。外見は愛らしくもあり、どこかひょうきんさも混じるデザインですが、走りはまさに“本物”。
このモデルは、元々1960年代に誕生し、当時のモータリゼーション黎明期に多くの日本人に「クルマとは何か」「スポーツカーとは何か」という体験を提供しました。
- エンジン:空冷エンジン(スペックにバリエーションあり)
- 全長:約3m
- 本格的なスポーツカー設計
- 軽自動車規格を意識したサイズ
「フルサイズのスポーツカーでは体験できない、日常の中で気軽に“走る楽しさ”を味わえる」――それがダットサンベビィ最大の魅力です。
この小柄なボディは、都市部の路地や狭い道でもストレスなく操作ができ、しかもしっかりした足回りやコーナリング性能により、「小さいくせに…!」と驚かせてくれるのです。
世代を超えて「ダットサンベビィ」は中古市場やイベントなどで愛され続け、今や日本の“名車”の一台に数えられます。最近は「令和の軽フェアレディZ」として再評価されているほどです。
技術進化の最前線──スポーツカーはどこへ向かうのか
この2台を通じて見えてくるのは、自動車が目指すべき“効率とパフォーマンスの両立”という1つの理想形です。エマージのような最新テクノロジーによる環境性能の進化、そしてダットサンベビィのような走る楽しさ・身近なモビリティとしての価値。この両者のバランスこそ、今後のスポーツカーの進化方向を示唆していると言えるでしょう。
- 電動化とスポーツ性能の高次元融合
- 車体軽量化による運動性能の向上
- 街乗りも楽しめる日常性の獲得
- 所有する喜び、ドライビングの充実感
時代を越えて人の心を動かすクルマづくり
“走る喜び”という一貫したテーマを持ちながらも、クルマは時代ごとに異なる姿を見せてきました。エマージは近未来の技術と高級車ブランドの気概を示し、ダットサンベビィは昭和の大衆車ブームを支えた小さな英雄――どちらにも共通するのは、作り手の“クルマが好きだ”という情熱です。
ユーザーの生活様式や社会背景が変化しても、スポーツカーというジャンルは「人々に夢を与える乗り物」であり続けています。
まとめ──スポーツカーの新しい価値観
燃費性能やコストを追求するだけでなく、「乗ること自体が楽しい」と感じさせるクルマづくりが、今また求められています。インフィニティ「エマージ」は未来のエコスポーツの姿を、ダットサンベビィは原点回帰の楽しさを体現。今後もこの2つの流れが車業界に刺激を与え続け、人々の心をときめかせてくれるでしょう。



