岡山県総社市「作山古墳」で初の本格発掘調査が始まる
総社市の歴史的シンボル、作山古墳とは
岡山県総社市に位置する作山古墳は、全国でも屈指の規模を誇る前方後円墳です。全長は282メートルで、全国で10番目の大きさを持つこの古墳は、5世紀中ごろに築造されたと考えられています。壮大な姿は古墳時代の権力や技術の高さを伝え、地元住民にとっても古代のロマン溢れる歴史遺産です。大正10年(1921年)には国の史跡に指定され、保存と活用が進められてきましたが、これまで本格的な発掘調査は行われてきませんでした。
2025年9月、初の発掘調査がスタート
2025年9月1日、総社市は「作山古墳」の保存・活用計画策定のため、発掘調査に着手しました。これは古墳の規模や形状、そして内部に眠る埋蔵品を明らかにするための初めての本格的調査です。今後6年間、2030年度までの長期計画で発掘を行い、13ヵ所にトレンチ(調査用の溝)を掘り進めて謎多き巨墳の全貌解明に取り組みます。
調査の主要ポイント
- 大きさ・形状の解明:古墳の正確な大きさや構造を科学的に調査します。作山古墳は古墳時代の有力者による祭祀や葬送儀礼に使われたとされ、その形状や築造技法の分析が注目されています。
- 埋蔵品探索:これまで未盗掘の可能性が高いとされてきた作山古墳。内部に眠る副葬品や土器、器具などが発見されれば当時の人々の暮らしや信仰、交流の証拠となります。
- 特色ある構造の確認:「造り出し」と呼ばれる祭祀空間隣接の盛り土部分が今回の調査対象。もしここも造り出しとして認定されれば、全国でも極めて珍しい構造を持つ古墳として新たな価値が加わります。
地域と歴史ファンの関心高まる
今回の調査は、歴史好きはもちろん、地元住民にとっても大きな関心事です。100年以上、詳細な調査がなされなかったことから「どんな新事実が判明するのか」「吉備王国との関係は?」といった期待や疑問が集まっています。地元の学校や社会教育活動でも調査内容を活用し、古代史に親しむ機会が広がりそうです。
保存と観光振興への活用
総社市は発掘調査で得られるデータを基に、作山古墳の保存活用計画を策定します。将来的には、古墳を中心とした歴史公園の整備や観光資源としての充実、教育・文化の発展にもつなげる方針を示しています。
調査期間と作業手順
- 調査期間:2025年~2030年(6年間)
- 調査箇所:前方部端や西側側面の計4カ所(2025年度)、全体では13カ所でトレンチを掘削
- 注目点:「造り出し」周辺、他にも土器や副葬品の出土に期待
作山古墳の位置づけと重要性
作山古墳は、古代吉備王国の権力者に関連する古墳群の一部とみられています。その規模、位置、構造から「吉備の巨大前方後円墳」として、同地域の歴史解明には欠かせない遺跡です。今後の調査が進めば、吉備王国成立の過程や、古墳時代の政権、対外交流の新たな情報が得られ、日本古代社会史に画期的な成果をもたらす可能性もあると研究者の間で期待されています。
初日の調査で見つかったものは?
調査初日にはさっそく歴史的な手掛かりが出土しました。詳細は今後の公表が待たれますが、未盗掘が有力視されるだけに、これからの発掘成果にはいっそう注目が集まります。
今後の展望と市民へのメッセージ
総社市は、今回の発掘調査をきっかけに「地域の歴史を守るとともに、その価値を次の世代につなげたい」と述べています。地元小学校や中学校では古墳見学が増え、ワークショップや説明会も頻繁に企画されていく予定です。市民参加型で調査成果を発信し、「ふるさとの歴史をみんなで支える」取り組みも広がるでしょう。
作山古墳と岡山県の古墳群
岡山県は吉備地方の古墳群、特に造山古墳や作山古墳が並ぶ地として全国的にも有名です。こうした大型前方後円墳が築かれた背景には、古墳時代最大級の王権とそのネットワークがあったことが示唆されます。今後の発掘で埋蔵品や構造に新たな発見があれば、日本全国の古墳研究にも大きな影響を与えるでしょう。
総社市による情報発信と今後の参加機会
- 調査中の経過報告は市公式サイトや地元メディア、地域説明会などで随時公開予定
- 古墳ガイドツアーやシンポジウム、発掘体験イベントの拡充も計画
- 調査資料や出土品は、地域資料館や教育現場で一般公開を検討
まとめ:作山古墳発掘調査がもたらすもの
今回始まった作山古墳の発掘調査は、“未踏の古代史”の扉を開く重要なプロジェクトです。今後6年間の調査で得られる成果は、岡山のみならず日本全体の歴史理解を深め、次の世代に誇れる文化財として活用されていくことでしょう。歴史ファンから市民まで、誰もが参加できるこの古墳調査。地域の未来へ向け、古代からのメッセージを読み解き、受け継いでいく取り組みが今、始まります。