映画『男神 OTOKOGAMI』、クロアチアとロシアで快挙続々 ― ザグレブの街並みとともに世界へ羽ばたく日本映画

日本映画『男神 OTOKOGAMI』(監督:井上雅貴)が、クロアチアとロシアの国際映画祭で立て続けに快挙を成し遂げ、世界的な注目を集めています。クロアチア・ザグレブで開催された「第3回クロアチア日本映画祭」では二冠を達成し、さらにロシア南部で開かれた「第18回オレンブルク国際映画祭」では、日本人として初めてグランプリ(Best Film賞)を受賞しました。本記事では、『男神』が歩んできた受賞の軌跡と、美しい街ザグレブの魅力を、やさしい言葉でわかりやすくお伝えします。

クロアチア・ザグレブで二冠達成 ― 第3回クロアチア日本映画祭とは

まずは、今回のニュースの中心となる「第3回クロアチア日本映画祭」からご紹介します。『男神 OTOKOGAMI』公式サイトによると、本作は2025年12月にクロアチアの首都ザグレブで開催された同映画祭に正式出品され、その結果、主演女優賞衣装デザイン賞の二冠を達成しました。

クロアチア日本映画祭は、その名の通り、日本映画に焦点を当てた映画祭で、クロアチアの観客に日本の多様な作品世界を紹介する場として開催されています。第3回となる今回は、現地の映画ファンや日本文化に関心の高い観客が多く集まり、日本映画ならではの繊細な演出やテーマ性が注目されました。

『男神』はその中でも特に高い評価を受け、主演女優の演技力と、物語世界を支える衣装デザインの美しさ・独自性が高く評価された形です。主演を務めた彩凪翔にとっても、本作は初のヒロイン映画として話題を集めており、ザグレブでの受賞はキャリアにおいて大きな一歩となりました。

映画『男神 OTOKOGAMI』とは? ― 日本神話と家族の絆を描くホラー作品

『男神 OTOKOGAMI』は、日本の神話的モチーフと、現代の家族の物語を重ね合わせたホラー映画として製作されました。公式情報によると、本作は2025年9月19日に日本で全国公開され、彩凪翔の初ヒロイン作品としても注目を集めています。

  • 監督:井上雅貴
  • ジャンル:ホラー(海外ではサスペンス/伝記ミステリー的側面も評価)
  • テーマ:見えない存在への畏敬、家族の在り方と絆、日本神話的世界観

ロシアでの上映では、『男神』は『ハングリーゴッド(Hungry God)』というタイトルで紹介され、「伝記ミステリーやサスペンスのような重厚さがある」と評価されています。単なる恐怖演出だけでなく、人間の内面や精神性を掘り下げる内容が、国境を越えて観客の心に届いたと言えるでしょう。

審査員の一人であるオペラ歌手リュボヴィ・カザルノフスカヤ氏は、「人類が精神的な進歩を必要とする現在、日本の神話を題材としたストーリーは大変意味深い作品として捉えました」とコメントしており、作品が持つ精神的な深みが高く評価されたことがわかります。

ロシア・オレンブルク国際映画祭で日本人初のグランプリ

『男神』の快進撃を語る上で欠かせないのが、ロシア南部のオレンブルク州で開催された「第18回オレンブルク国際映画祭」での受賞です。本映画祭の国際コンペティション部門には、世界各国から245作品が応募し、そのうち10作品がノミネートされました。

その厳しい選考を勝ち抜き、『男神』はコンペティション部門の最高賞にあたる「Best Film賞(グランプリ)」を獲得しました。審査は審査員満場一致での選出であり、オレンブルク国際映画祭において日本映画がグランプリを受賞するのは史上初という歴史的快挙となりました。

受賞にあたっては、エグゼクティブプロデューサーの志賀司氏が現地でトロフィーと賞状を受け取り、日本映画として初のベストフィルム受賞であることが強調されています。現地での上映会では観客から大きな反響が寄せられ、今後ロシアでの一般公開も予定されていると伝えられています。

井上雅貴監督のコメントと、作品が評価された理由

井上雅貴監督は、オレンブルク国際映画祭での受賞を受け、「この映画が間違っていなかったということを、受賞を通して実感できた」と喜びと手応えを語っています。また、『男神』は国内ではホラー映画として作られたものの、海外ではよりドラマ性や精神性の強い作品として受け止められ、「伝記ミステリー」「サスペンス」といった言葉で紹介されています。

評価の理由としては、以下の点が挙げられています。

  • 見えない存在への畏敬の念が丁寧に描かれていること
  • 家族の在り方やといった普遍的なテーマが物語の芯にあること
  • 日本の神話を思わせる奥深さと世界観が、異文化の観客にも強い印象を残したこと

これらの要素が組み合わさり、単なるホラー表現を超えた“精神性の高い作品”として受け止められたことが、審査員満場一致のグランプリにつながったとされています。

また、国際ジャーナリストであり映画監督でもある樽谷大助氏は、受賞記念イベントで「映画監督として、この名誉ある偉業を心から祝福したい」と述べ、続編制作への期待も口にしました。会場では万歳三唱が起こり、井上監督の凱旋を観客全体で祝福する温かな雰囲気に包まれたと伝えられています。

ザグレブという街の魅力 ― 「まるでメルヘン」と形容されるクロアチアの首都

『男神』が二冠を達成したザグレブは、クロアチアの首都であり、歴史ある建物と可愛らしい街並みが調和した人気の観光都市です。NHKの「世界ふれあい街歩き」などでも取り上げられ、「まるでメルヘンの世界のよう」と表現されることがあります。

中世から続く旧市街には、赤い屋根の家々が連なり、石畳の路地や教会、マーケットなどが点在しています。クリスマスシーズンにはイルミネーションや屋台が彩りを添え、ヨーロッパらしい温かい雰囲気に包まれます。そんな絵本のような街で、日本映画『男神』が評価されたことは、作品にとっても、関係者にとっても、特別な意味を持つ出来事と言えるでしょう。

クロアチア日本映画祭は、こうした歴史と文化が息づくザグレブの街を舞台に、日本映画とクロアチアの観客をつなぐ架け橋のような存在です。『男神』のキャストやスタッフも、この街の人々の温かさや、日本文化への関心の高さを肌で感じたはずです。

日本から世界へ ― 『男神』が切り開く新たな可能性

『男神 OTOKOGAMI』は、国内上映に続き、クロアチアとロシアの映画祭での成功によって、「日本発のオリジナル作品が、神話・家族・精神性といったテーマを通じて世界と共鳴し得る」ことを示しました。

公式サイトのニュースでも、「さらに世界へ歩みを進めていきます」といった前向きな姿勢が示されており、今後もさまざまな国や地域での上映・映画祭参加が期待されます。すでにロシアでの公開が予定されているほか、国際的な評価を背景に、配信や海外映画祭での展開も広がっていく可能性があります。

一方で、日本国内でも、オレンブルク国際映画祭ベストフィルム賞受賞記念の凱旋舞台挨拶や、公開記念の舞台挨拶などが行われ、観客との交流の場が設けられています。こうした動きは、日本の観客があらためて自国発の作品の魅力を再発見するきっかけにもなっています。

クロアチアと日本映画のこれから

クロアチア日本映画祭での二冠達成は、『男神』にとっての快挙であると同時に、日本映画とクロアチアとの文化交流にとっても重要な一歩です。日本の作品がクロアチアの観客にどのように受け止められ、どのような感想が生まれるのか。その一つひとつが、今後の映画制作や配給のヒントになっていくことでしょう。

また、ザグレブのように「まるでメルヘン」と表現される街で上映される日本映画は、作品世界とは異なる風景と出会うことで、新たな意味を帯びることもあります。和の神話世界と、ヨーロッパの歴史的街並み。その対比は、観客の心の中に、より強い印象として残るのかもしれません。

『男神 OTOKOGAMI』がこれからどの国で、どのような観客と出会うのか。その歩みはまだ始まったばかりです。クロアチア・ザグレブでの二冠、ロシア・オレンブルクでの日本人初のグランプリという出来事は、その大きな第一章と言えるでしょう。

今後の動向に注目しつつ、日本から生まれた物語が世界でどう受け止められていくのかを、温かい目で見守っていきたいところです。

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