沼津・仲見世商店街が「声のスタジオ」に みんなのポッドキャストフェス開催

静岡県沼津市の中心市街地・仲見世商店街を舞台に、地域と全国の音声配信者がつながるイベント「第2回 みんなのポッドキャストフェス powered by STAR OVERALL」が開催されました。商店街全体が1日限定で「声のスタジオ」となり、公開収録やトークセッションが行われた今回のフェスには、多くの市民やポッドキャストファンが訪れ、にぎわいを見せました。

商店街で公開収録 全国のポッドキャスターが沼津に集結

フェスの会場となったのは、JR沼津駅南口からほど近い沼津仲見世商店街です。アーケードの下に伸びる商店街の各所に特設ブースが設けられ、全国から集まったポッドキャスト番組の公開収録が行われました。

イベントの開催時間は11時から16時までで、11時〜15時のあいだ、商店街内の複数のスポットで公開収録が実施されました。 書店前や商店街の中心付近に設けられたブースにはマイクやミキサーが並び、普段は買い物客が行き交う通りが、この日だけは本格的な「音声スタジオ」のような雰囲気に包まれました。

ステージに立ったのは、地元・静岡県東部で活動する配信者だけでなく、全国各地を拠点に番組を制作するポッドキャスターたちです。 商店街を歩く人々に向かって、日頃はイヤホン越しに聴いているトークが「生」で届けられ、通りがかりの親子連れや高齢者も足を止めて耳を傾けていました。

また、その場で番組づくりを体験できる配信体験ブースも用意され、子どもから大人までがマイクの前に立ち、「パーソナリティ気分」を味わいました。 日常の出来事や好きなものを話したり、インタビュー形式で友達と会話してみたりと、気軽に音声配信の世界に触れられるコーナーとなりました。 こうした体験を通じて、「聴く」だけでなく「話す」側になる楽しさを知った参加者も多かったようです。

「Podcast × 地域創生」を掲げた街なかフェス

「みんなのポッドキャストフェス」は、「Podcast × 地域創生」をコンセプトに掲げる街なかイベントです。 主催は、沼津を拠点にポッドキャスト配信を行うチーム「ぬまずっきゅーん」と、全国21拠点で母親・父親たちによるラジオ制作プロジェクトを展開する「ママ夢ラジオ」を中心としたみんなのポッドキャストフェス実行委員会です。

会場となった仲見世商店街をはじめ、沼津市が後援し、沼津仲見世商店街振興組合が協力するなど、行政と商店街、そして市民や企業が一体となってイベントを支えました。 メインパートナーとしてSTAR OVERALL × 山本被服株式会社が参加し、音声を活用した地域のにぎわいづくりを後押ししています。

主催者は、「地域のヒト・モノ・コトを、自らの声で発信する人や団体」に光を当てる場として、このフェスを位置づけています。 ポッドキャスターと地元商店街、市民、企業、自治体が交わることで、新しいつながりやコラボレーションが生まれることを期待しています。

秀島史香さんが登壇 メイントークセッションに注目集まる

フェスの目玉のひとつが、音声配信の可能性をテーマにしたトークセッションです。 仲見世商店街内にある「Bar ねこと白鳥」を会場に、14時から15時45分にかけてオープニングとメインの2つのセッションが行われました。

メイントークセッションには、ラジオパーソナリティでナレーターとしても活躍する秀島史香さんがゲストとして登壇しました。 長年ラジオの現場でリスナーと向き合ってきた経験をもとに、「地域と音声メディアの新しい関係」「声だからこそ届けられる温度や距離感」といったテーマで語り、会場の参加者は熱心に聞き入っていました。

トークセッションでは、自治体が自ら音声配信を行う取り組みや、ポッドキャストを通じて地域の魅力を発信している事例も紹介されました。 沼津市が後援する本イベントならではの視点として、観光情報や移住・定住促進、子育て支援など、行政が市民に伝えたい情報を「声」で届ける可能性についても議論が交わされました。

質疑応答の時間には、地元で配信を始めたばかりの人や、これからマイクを握ってみたいという参加者から、「どんなふうにテーマを決めればいいか」「続けるコツは何か」といった質問が寄せられました。秀島さんは、自身の経験を交えながら、「背伸びをしすぎず、自分の言葉で話すことの大切さ」を丁寧に伝え、会場はあたたかな空気に包まれました。

キーワードラリーやガラポン抽選会も 家族連れで楽しめる仕掛け

フェス当日は、音声コンテンツだけでなく、商店街を歩きながら楽しめる参加型企画も多数用意されました。

  • キーワードラリー:商店街の複数箇所を巡り、ポスターや配布物に記されたキーワードを集めるラリー企画。
  • お買い物レシート ガラポン抽選会:商店街での当日のお買い物レシートを提示すると、ガラポン抽選に参加できるコーナー。
  • 協賛企業ブース:地域企業や団体が出展し、商品やサービス、取り組みを紹介するブース。

これらの企画により、ポッドキャストを目当てに訪れた人と、日常の買い物で商店街を利用する人の動線が自然に交わるよう工夫されています。 子ども連れの家族がラリー台紙を片手に商店街を歩き回る姿や、高齢の買い物客が抽選会場でスタッフと会話を楽しむ様子など、世代を超えた交流が生まれていました。

ポッドキャスター同士の交流会で生まれる新たなつながり

フェスの終盤、16時から17時にかけては、「Bar ねこと白鳥」を会場にポッドキャスター交流会も開かれました。 交流会には、公開収録に参加した番組の制作者をはじめ、音声配信に関心を持つ市民やクリエイターが集まり、情報交換や意見交換を行いました。

普段はオンライン上でつながっていることが多いポッドキャスターたちが、同じ場所に集まり顔を合わせて話すことで、新しいコラボレーションや番組企画のヒントが生まれるきっかけにもなったようです。 「次は自分の地元でもイベントを開きたい」「沼津と別の地域を結ぶコラボ番組をつくろう」といった声も聞かれ、今回のフェスを起点に、地域を越えた「声のネットワーク」が広がっていくことが期待されます。

沼津から広がる「ポッドキャストの街」の輪

「みんなのポッドキャストフェス」実行委員会は、沼津での取り組みを通じて、「ポッドキャストの街 沼津」を育てていきたいとしています。 商店街という日常の場にマイクとスピーカーを持ち込み、通りすがりの人も巻き込んでいくスタイルは、「まち」と「音」が自然に混ざり合う光景を生み出しました。

また、沼津市が後援として名を連ね、前回開催時には静岡新聞や東京新聞、地元の沼津経済新聞、ポータルサイトなどでも取り上げられるなど、メディアからの注目も高まっています。 市外・県外からも参加者が訪れることで、観光や商店街の利用促進といった波及効果も期待されています。

今回のフェスに参加したポッドキャスターたちは、それぞれの地元に戻った後も、番組のなかで沼津や仲見世商店街の様子を発信していきます。 そうして各地のリスナーに沼津の魅力が伝わり、また新たな来訪者や参加者が生まれていく――。主催者は、このような「声の循環」こそがイベントの大きな価値だと語っています。

日常の買い物客が行き交う商店街で、耳を澄ませばどこかから楽しいトークや笑い声が聞こえてくる一日。沼津・仲見世商店街発の「みんなのポッドキャストフェス」は、地域の人と人をつなぐ新しい文化イベントとして、その存在感を着実に高めています

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