和の彩りと課題も浮き彫りに――広がる「シュトーレン」ブームのいま

ドイツ発祥のクリスマスパン「シュトーレン(シュトレン/シュトーレン)」が、日本でこれまでになく注目を集めています。
ヨモギや黒蜜、抹茶といった和の食材を取り入れた個性豊かな一品が話題になる一方で、人気老舗店では「転売」への注意喚起という異例の動きも出てきました。
クリスマスに向けて盛り上がる“シュトーレンブーム”の現状と、その魅力、そして新たに浮かび上がった課題を整理してお伝えします。

ドイツ発祥の「クリスマスパン」シュトーレンとは

シュトーレンは、ドイツ発祥のクリスマスの伝統菓子・パンです。バターをたっぷり使った生地に、洋酒に漬け込んだドライフルーツやナッツ、マジパンなどを練り込み、表面を粉砂糖で真っ白に覆うのが特徴とされています。
ドイツでは、クリスマスの約4週間前から少しずつスライスして食べながら、キリストの誕生を待ち望む慣習があります。日本でも同様に、日ごとに生地になじんでいくバターやフルーツの風味の変化を楽しむ食べ方が紹介され、じわじわとファンを増やしてきました。

近年は、百貨店の特設イベントや通販サイトでも「シュトーレン特集」が組まれ、全国各地の人気ベーカリーや洋菓子店が趣向を凝らした商品を展開しています。こうした流れの中で、今年は特に“和の食材を取り入れたシュトーレン”と、“人気商品の転売問題”がニュースとして取り上げられています。

和の食材で彩る新しいシュトーレン

ヨモギ、黒蜜、抹茶…「和シュトーレン」が人気に

ニュースでは、ドイツ発祥の伝統的なお菓子であるシュトーレンに、ヨモギ、黒蜜、抹茶などの和素材を組み合わせた商品が人気を集めていると伝えられています。
もともと日本では、パンやケーキに抹茶やきなこ、あんこなどを取り入れる“和洋折衷”の発想が定着していますが、その流れがシュトーレンにも及んできた形です。

和のシュトーレンには、例えば次のような工夫が見られます。

  • ヨモギ生地:草餅などでおなじみのヨモギを生地に練り込み、ほんのりとした苦みと香りをプラス。
  • 黒蜜や和三盆:黒蜜や上品な甘さの和三盆糖を使うことで、しっとりしたコクとやさしい甘みを表現。
  • 抹茶:生地やマジパン、アイシングに抹茶を取り入れ、鮮やかな緑色とほろ苦さで“和のクリスマス”を演出。
  • あんこ・和栗・きなこなど:ドライフルーツやナッツの代わり、あるいは組み合わせとして加え、和菓子の要素をミックス。

こうした和素材を取り入れたアレンジは、洋酒やスパイスが強い伝統的なシュトーレンが少し苦手な人にも受け入れられやすく、「和菓子とパンのあいだ」のような新しい楽しみ方として支持を広げています。

百貨店イベントでも多様なフレーバーが登場

大阪の百貨店・阪神梅田本店では、「パン&シュトーレン クリスマス2025」と題したイベントが開催され、パンシェルジュが全国から厳選した50種類以上のシュトーレンが集結しています。
同店では、昨年は会期5日間のうち最終日を待たずにほぼ完売してしまったほどの人気ぶりで、今年は在庫を約3割増やして対応しているといいます。

出店する店舗の多くが、従来のラム酒×ドライフルーツ×ナッツの“王道スタイル”に加え、紅茶や柑橘、チョコレートなど様々なフレーバーを打ち出しています。
こうした流れのなかで、和素材を使ったシュトーレンも一つのトレンドとして位置づけられ、年ごとにバリエーションが増えています。消費者にとっては、“今年はどんな味に出会えるか”を楽しみにしながらクリスマスを待てるイベントとなっています。

人気の裏で浮上した「転売」問題

老舗洋菓子店がSNSで「転売に注意」呼びかけ

一方で、今年のシュトーレンブームを象徴する出来事として、老舗洋菓子店がSNS上で転売への注意喚起を行ったというニュースも注目されています。
報道によると、この老舗店で販売される数量限定のシュトーレンが大きな人気を集めるなか、フリマアプリやオークションサイトなどで高額転売されるケースが確認されたことから、店舗側が公式SNSで購入者に対し注意を促したものです。

投稿では、正規の販売ルート以外での購入は品質管理や保存状態を保証できないことや、定価を大きく上回る価格設定がなされている場合があることへの懸念が示されました。
洋菓子店側は、「安全においしく食べていただくためにも、店舗や公式オンラインショップなど、適正な管理のもとで販売された商品をお求めください」と呼びかけ、消費者に冷静な対応を求めています。

なぜシュトーレンが転売の対象になるのか

こうした転売が起きる背景には、いくつかの要因があると考えられます。

  • 数量限定・期間限定で販売されるため、一部の商品は入手が難しく「プレミア性」が高まりやすい。
  • 人気店のシュトーレンは、口コミやSNSで評判が広がり、発売直後に完売するケースも多い。
  • 常温である程度日持ちがするため、他の生菓子と比べて転売しやすいと受け止められている。

しかし、シュトーレンは日持ちするとはいえ、保存状態や温度管理によって品質は大きく変わる繊細な商品です。
正規の保管基準に従わない扱いを受けた場合、商品の劣化や風味の損なわれるリスクもあり、「製造元の意図しない形で消費者に届いてしまう」ことを懸念する声は根強くあります。

転売問題はシュトーレンに限らず、人気スイーツや限定コラボ商品などでもたびたび話題になってきましたが、クリスマスの象徴的な菓子としてのシュトーレンがその対象になっていることに、残念さを感じるファンも少なくありません。

「絶品シュトーレン」の魅力とは

日ごとに味が変化する“熟成を楽しむ菓子”

各メディアで特集が組まれている「絶品シュトーレン」の最大の魅力は、なんといっても日ごとに味わいが変化していく点です。
バターをたっぷり含んだ生地に、ラム酒などで漬け込んだドライフルーツやナッツが時間をかけてなじんでいくことで、焼き上がり直後・数日後・クリスマス直前と、香りと食感が少しずつ変わっていきます。

この“熟成”こそが、普通の菓子パンとは異なるシュトーレンならではの楽しみ方であり、「クリスマスまでのカウントダウンを味わう菓子」と呼ばれる理由でもあります。

素材と作り手の個性が光る「1本ごとの物語」

近年の日本では、全国各地のベーカリーや洋菓子店が、それぞれの個性を生かしたシュトーレンを発表しており、そのバリエーションは年々豊かになっています。
同じ「シュトーレン」という名前でも、次のような違いがあります。

  • ドライフルーツの種類や漬け込み期間:レーズン、オレンジピール、イチジク、クランベリーなど、使うフルーツや洋酒の種類、漬け込む期間によって味が大きく変化。
  • スパイスの配合:シナモン、カルダモン、ナツメグ、クローブなどをどの程度効かせるかは、店ごとのこだわりポイント。
  • 生地の食感:しっかりとした食べ応えのあるタイプから、しっとり・ほろほろと崩れるソフトタイプまで幅広い。
  • 和素材やチョコレートなどのアレンジ:抹茶やヨモギ、黒蜜のほか、チョコレートベースの“シュトーレン風ガトーショコラ”など、伝統とモダンが交差する商品も登場。

こうした違いがあるため、「今年はどの1本を“相棒”として迎えるか」を選ぶ行為そのものが、クリスマスを楽しむ一つのイベントになっています。
なかには、「毎年同じ店のシュトーレンを買い続けている」「家族それぞれが好きな店のものを一本ずつ買い、少しずつシェアして食べ比べる」といった楽しみ方をしている人もいます。

初心者でも楽しめる「ライトなシュトーレン」も拡大

「洋酒やスパイスが強い本格派のシュトーレンは少しハードルが高い」と感じる人向けに、アルコールを使わないタイプや、チョコレートケーキにシュトーレンの要素を取り入れた商品なども人気を集めています。
ドライフルーツの量を控えめにして食べやすくした商品や、甘さを抑えた“大人向け”のアレンジも登場し、「はじめての一本」に選びやすいラインアップが広がっています。

安心して楽しむために――購入時のポイント

正規ルートでの購入と保存方法の確認を

転売への注意喚起が話題になったこともあり、あらためて「どこで、どのようにシュトーレンを買うか」が問われています。安全でおいしく楽しむためには、次の点を意識すると安心です。

  • 正規販売店・公式オンラインショップを利用:製造元が品質管理した状態で届けてくれるルートを選ぶ。
  • 保存方法・賞味期限の確認:常温・冷暗所・冷蔵など、それぞれの商品に適した保管方法がラベルなどに記載されているか確認する。
  • カット後は早めにラップで密封:切り口が乾燥しないよう、ラップで包んで保存し、できるだけ早めに食べ切る。

また、人気店のシュトーレンは、百貨店のイベントやオンライン予約などで早めに受付を開始する場合が多いため、事前に情報をチェックしておくと、転売商品に頼らずに入手しやすくなります。

「わが家の一本」で楽しむクリスマス

和素材を取り入れた新しいシュトーレン、伝統レシピを守り抜く老舗の一本、そしてスイーツとして進化した“シュトーレン風”商品――。
今年のシュトーレン市場は、過去にも増して多様性と個性にあふれています。

一方で、その人気の高まりが転売問題を生み、作り手が消費者に向けて注意を呼びかけざるを得ない状況になっていることは、改めて考えるべき課題です。
クリスマスまでの時間をゆっくり楽しむお菓子だからこそ、作り手の思いと、安全・安心な食体験を大切にしながら、「わが家の一本」と出会いたいところです。

今年は、ヨモギや黒蜜、抹茶で彩られた“和のシュトーレン”にチャレンジしてみるのか、それとも王道のドイツ風に回帰するのか。
好みやシーンに合わせて、あなただけのシュトーレンを選ぶ時間もまた、クリスマスの楽しみの一部になりつつあります。

参考元