調布市の新たな挑戦 ――中学生の初海外派遣事業、その感動と広がる未来
はじめに ――調布市で生まれた新しい「学び」の形
調布市は2025年、初となる中学生海外派遣事業をスタートしました。市内公立中学2年生を対象に20名の生徒が厳正な選考の末、オーストラリア・パースへの9日間のプログラムに参加しました。現地の家庭にホームステイし、現地校での授業や文化交流、フィールドワークなど、日本では味わえない環境で多くの刺激を受けて帰国しました。
海外派遣までの道のり ――期待と準備の日々
本事業には市内8校から100名以上が応募し、書類・面接を経て20名が選ばれました。出発までに4回の事前学習会が設けられ、英語やオーストラリアの文化、現地生活のマナーを学び、「英語で自分の思いを伝える」練習も重ねたそうです。市としても大きな挑戦でしたが、地域や保護者の協力のもと、慎重かつ熱心に準備が進められました。
オーストラリア・パースでの体験 ―多様性と発見
- ホームステイ:現地の家族と一緒に生活しました。慣れない食文化や生活様式、家族とのコミュニケーションを通じて、異文化を肌で感じる貴重な時間となりました。
- 現地中学での授業体験:「アーシュラ・フレイン・カトリック・カレッジ」に3日間通い、地元の生徒たちと一緒に授業を受け、調布市を紹介しました。日本語を学ぶ現地生徒との交流授業では、ソーラン節を踊ったり、浴衣を着て抹茶をふるまったりと、相互理解を深める活動も行われました。
- フィールドワーク:大学生の案内で、ヨーロッパの面影を残す港町「フリーマントル」を訪れ、街並みや歴史を学びました。最終日にはホストファミリーとハイキングやスポーツ観戦も楽しみ、家族との絆も深まりました。
これらの経験を通じ、多様なバックグラウンドを持つ人々との出会いは、生徒たちに「自分の当たり前」が異文化においては特別であること、「伝えようとする気持ち」の大切さ、「相手を尊重する姿勢」の重要さを実感させました。「現地校の自由な雰囲気と、日本のルールの多さの違い」も印象的だったとの声も多く聞かれました。
帰国後の報告会――次世代へつながる思いを共有
11月9日には調布市文化会館たづくりで帰国生報告会が開催されました。保護者や教育関係者が見守るなか、生徒たちは撮影した動画を交え、英語と日本語で体験を発表。堂々とした姿は、彼らの成長をはっきりと示していました。
後半では、長友貴樹市長も交えたトークセッションが行われました。市長からの「海外で驚いたことは?」「伝えるのに工夫したことは?」などの問いかけに対し、参加生徒たちは
- 「英語が苦手でも、アイコンタクトやジェスチャー、リアクションが大切だと気づいた」
- 「間違いを恐れず気持ちを伝えることがカギ」
- 「現地の自由な校風は自分の個性や意見を大切にしてくれると感じた」
と率直に答え、経験から得た学びを素直な言葉で伝えました。
市長は最後に「皆さんが得たものをぜひ周りの生徒たち、後輩に伝えて欲しい。調布市の第1期生としての役割を果たしてほしい」と期待を込めてエールを送りました。
調布第六中の「トークカフェ」――経験を広げる取り組み
帰国後も交流は続いています。特に調布第六中学校では、海外に派遣された3名の生徒が昼休みに「トークカフェ」を自主開催しました。これは、後輩となる1年生に自身の体験をじかに伝え、質問や相談にも答える場です。
参加した1年生たちは、「海外がぐっと身近に感じた」「自分も海外に行ってみたいと思った」といった前向きなコメントを寄せており、事業の効果が身近な学校コミュニティの中で着実に波及していることがうかがえます。
ホストファミリーとの絆、続く国際交流
帰国後も、派遣生徒の多くは現地のホストファミリーとSNSなどで連絡を取り続けているそうです。オーストラリアでの家族との体験が「一生の財産」になったという声もあり、プログラムの意義の大きさが実感されます。
海外で得た友人や家族、異文化を理解する心――これらは、これからのグローバル時代に必要不可欠な「生きる力」と言えるでしょう。
広がる地域の国際教育――世田谷区などとの比較
東京都内では、世田谷区などでも類似した小中学生海外派遣事業が長年行われています。世田谷区の事例では、現地家庭へのホームステイや現地校との交流、「国際理解ワークショップ」といったプログラムが盛り込まれており、調布市でも今後参考にできる点は多いでしょう。
他自治体の実践を吸収しつつ、調布市独自の特色や文化も盛り込みながら、事業を発展させていくことが期待されています。
市内に生まれる変化――生徒の意識と学校現場の波及効果
- 生徒たちが自ら発信者となり、後輩や地域の子どもたちに体験を伝え始めている
- 英語だけでなく「翻訳を超えた意思疎通」「多様な価値観を尊重する態度」が育まれている
- 海外での経験を活かし、今後も国際交流やSDGs、多文化共生教育といった新たな活動へと連鎖が生まれ始めている
このような好循環が、市全体の「グローバル教育力」を底上げし、「自分の言葉で世界とつながる」新しい時代の担い手を育成しつつあります。
ワールドスポーツにも注目!女子団体追い抜き W杯日本チームV
今回のニュースの合間には、もう一つの明るい話題も。スピードスケートW杯で、日本女子の団体追い抜きが優勝を飾りました。世界を舞台に果敢にチャレンジし、頂点をつかむ日本チームの姿は、まさに調布市の中学生たちとも重なります。グローバルな舞台で培う挑戦力と、互いを信じ支えるチームワーク。これからの若者たちにも、大きな勇気と希望を与えてくれる出来事です。
今後への展望――すべての子どもが「グローカル」な時代へ
調布市の中学生海外派遣事業は始まったばかり。参加できなかった生徒、まだ海外に興味を持てない生徒も、学校や地域を通じて多様化する世界への扉を開くチャンスが広がっていくことでしょう。
さまざまなバックグラウンドを持つ人々と出会い、違いを認め合い、伝え合う経験は、やがて調布市全体の未来を切り開く力になるはずです。今後ますます豊かになる国際交流の歩みに、地域みんなで期待を寄せたいと思います。




