“ビートルズマニア”和田唱が語る、ジョン・レノンへのあふれる愛――ドキュメンタリーと「ダブル・ファンタジー」がつなぐ現在
ロックバンド TRICERATOPS のボーカル・ギターとして知られ、音楽ファンの間では「筋金入りのビートルズマニア」としても名高い 和田唱 さん(50)。
そんな和田さんが、公開中のドキュメンタリー映画『夢と創造の果てに ジョン・レノン最後の詩』の上映後トークイベントに登壇し、その止まらないジョン・レノン愛で会場を沸かせました。
さらにトークでは、ジョン&ヨーコの共同アルバム『ダブル・ファンタジー』にまつわる、自身の若き日の「ヨーコ飛ばし」経験を正直に告白。今では「あれ込みで『ダブル・ファンタジー』」と感じているという、聴き方の変化も語られました。
この記事では、そのイベントの様子と、ドキュメンタリーが描くジョン・レノンの姿、そして『ダブル・ファンタジー』というアルバムの魅力を、やさしい言葉でじっくりひもといていきます。
和田唱、ビートルズに「中学のときからずっと夢中」
イベントが行われたのは、都内の映画館。上映後のステージに登場した和田唱さんは、冒頭からビートルズ愛全開でした。
和田さんはまず、自身とビートルズとの出会いを振り返ります。
「中学のときに夢中になって、この間50歳になりましたけれども、いまに至るまで夢中にさせてくれるグループはほかにいない」と語り、会場のビートルズファンからも大きな共感のうなずきが起こったといいます。
ビートルズの魅力については、単に楽曲の良さだけではないと強調しました。
- 「楽曲もさることながら、人間としての魅力」
- 「あれだけ速いスピードで変化していたのにもかかわらず、あれだけ売れていた、というギャップ」
和田さんは、ビートルズが短い活動期間の中で、作品ごとにサウンドも表現も大きく変化し続けたこと、そのうえで常にトップを走り続けたことに強く心をつかまれたと語りました。
こうした言葉の端々から、「ただのファン」をはるかに超えた、研究者にも近い目線がうかがえます。
止まらないジョン・レノントークにMCも制止?
今回の上映後トークでは、ビートルズ研究家であり、ドキュメンタリーの字幕監修も務めた藤本国彦さんと一緒に、ジョン・レノンについて熱い対談が繰り広げられました。
MCを務めたのは、俳優・タレントの汐月しゅうさん。ところが、トークが始まると、和田さんのジョン・レノンへの思いがあふれ出します。
話題は、映画で描かれたエピソードから、ビートルズ解散後のジョンの創作姿勢やプライベートな側面まで、次々と広がっていきました。
オリコンニュースによると、和田さんはMCから制止が入るほど話が止まらず、持ち時間の終わりが近づいても「あと1分」とツッコまれる場面もあったといいます。それほどまでに、語らずにはいられないほどの情熱があったのでしょう。
トークを終えたあとの和田さんは、満面の笑みで写真撮影に応じ、その表情からも「やりきった」充実感が伝わってきたと報じられています。
ドキュメンタリー『夢と創造の果てに ジョン・レノン最後の詩』とは
今回のイベントのベースとなったのが、現在公開中のドキュメンタリー映画『夢と創造の果てに ジョン・レノン最後の詩』です。
この作品は、ジョン・レノンの生涯最後の10年間に焦点を当てています。
- ビートルズ解散後、ソロアーティストとしてどのように独自の進化を遂げていったのか
- 反戦運動の最前線に立ち、社会に対してどのようなメッセージを発していたのか
- 未公開を含む膨大なアーカイブ映像や、関係者の証言から見える、ひとりの人間としての葛藤と希望
などが、多角的に描かれています。
単なる「伝説のロックスター」としてではなく、夫であり、父であり、一人のアーティストとしてのジョン・レノンの素顔を追いかける構成になっているのが特徴です。
和田さんはこのドキュメンタリーについて、率直な感想を口にしました。
「僕は正直にいろんなことを言っちゃうんですけど」と前置きしつつ、「このドキュメンタリーは、近年見たビートルズ関連のドキュメンタリーの中で一番おもしろかったです」と断言。
さらに、
- 「すごいたくさん知りたかったことが知れた」
- 「腑に落ちたポイントがたくさんあって、ちょっと僕はうれしかった」
と、ファンとして長年抱いてきた疑問に答えてくれる内容だったと語っています。
ビートルズやジョン・レノン関連の映像作品は数多くありますが、その中でも「一番おもしろかった」と言い切るあたり、和田さんの評価の高さがうかがえます。
「ヨーコ飛ばし」から一転――『ダブル・ファンタジー』を“丸ごと”愛せるようになるまで
今回のトークイベントで大きな話題になったのが、1980年に発表されたジョン・レノン&オノ・ヨーコの共同アルバム『ダブル・ファンタジー』についてのエピソードです。
『ダブル・ファンタジー』は、ビートルズ解散後、家庭に重心を置く生活に入っていたジョンが、音楽シーンに戻ってきたことを印象づける作品であり、ジョンとヨーコが“対話するように曲を交互に並べた”構成が特徴的なアルバムです。
しかし若いころの和田さんは、ある“聞き方”をしていたことを打ち明けました。
報道によると、和田さんは、ジョンとヨーコの曲が交互に入っている構成の中で、オノ・ヨーコさんのパートを飛ばして聴いていた、いわゆる「ヨーコ飛ばし」をしていた時期があったと振り返っています。
これは、ビートルズやジョン・レノンのソロ作品を聴き込んできたファンのあいだでも、しばしば語られてきた“あるある”の一つでもあります。ロック的なサウンドに馴染んだ耳には、ヨーコさんの前衛的で実験的な表現が、当初はなかなか受け止めきれないこともあるからです。
ところが、和田さんの現在の受け止め方は、当時とは大きく変わっています。
今では、「あれ込みで『ダブル・ファンタジー』」だと考えていると語り、ヨーコさんのパートも含めたアルバム全体を、ひとつの作品世界として愛せるようになったことを明かしました。
つまり、
- ジョンの曲だけを切り取るのではなく
- ジョンとヨーコ、それぞれの視点や声が呼応し合う構造そのものを楽しめるようになった
ということです。
ビートルズマニアとして、長年にわたり作品に向き合ってきたからこそ見えてきた変化であり、年齢を重ねることで作品の聴こえ方が変わる、という音楽ファンならではの深い実感がにじんでいます。
ファンだからこそ語れる、ジョン・レノン像の“アップデート”
ドキュメンタリーとアルバム『ダブル・ファンタジー』の話が交差する今回のトークには、ひとつの共通したテーマがあります。
それは、「ジョン・レノン像を、いまの時代にどうアップデートして受け止め直すか」ということです。
ドキュメンタリー『夢と創造の果てに ジョン・レノン最後の詩』は、アーカイブ映像や関係者証言を通じて、ジョンの最後の10年を、できるだけ偏りのない目線でたどろうとしています。
そこには、
- ロックスターとしての輝き
- 政治的メッセージを発する活動家としての顔
- 家庭人として子どもと向き合う父親の側面
など、さまざまなジョンの表情が織り込まれています。
和田さんは、その映像を観たうえで、自身が長年追いかけてきた「頭の中のジョン像」と、今回新たに得られた情報とを突き合わせ、「腑に落ちたポイントがたくさんあった」と語りました。
同じように、『ダブル・ファンタジー』に対する受け止め方も、若いころと現在とでは大きく変わりました。
かつては「ジョンの曲だけを聴きたい」と思っていた時期もあったものの、今ではヨーコさんのパートも含めた“ひとつの物語”としてアルバムを味わえるようになった――。
この変化は、単に「ヨーコの良さがわかった」というだけでなく、
- 作品を部分ではなく全体で受け止める視点が育まれた
- ジョンとヨーコの関係性や、二人の創作への向き合い方まで含めて想像できるようになった
という、いわばファンとしての成熟を示しているとも言えます。
藤本国彦と読み解く「最後の10年」――濃密なトークの中身
対談相手となった藤本国彦さんは、長年ビートルズ研究を続け、多くの著書や監修で知られる存在です。今回のドキュメンタリーでも字幕監修を担当しました。
イベントでは、
- 映画本編で描かれたエピソードを、和田さんが自分なりの視点で読み解き
- 藤本さんが、資料や研究に基づいた補足情報や解釈を加える
というかたちで、濃密なトークが展開されたと伝えられています。
たとえば、
- ビートルズ解散後のジョンが、どのようなプロセスを経て音楽活動を再開したのか
- 反戦運動に取り組む中で、メディアや世間との距離感にどう悩んでいたのか
- ニューヨークでの生活や、家族と過ごした時間が創作にどんな影響を与えたのか
といったトピックが、映画の具体的なシーンと結びつけられながら語られたようです。
ジョン・レノンという人物は、いまだに世界中でさまざまなイメージをもって語られます。
- 「平和の象徴」
- 「尖ったロッカー」
- 「複雑な人間関係の中でもがき続けたアーティスト」
――どれも間違いではありませんが、一面だけでは語りつくせません。
だからこそ、今回のように、
- 膨大な資料と証言をもとにした映像作品
- 長年のファンと研究家による対話
という二つのアプローチを組み合わせることで、より立体的なジョン像が浮かび上がってくるのでしょう。
“今あらためて見る”ジョン・レノン――作品と向き合うきっかけに
ジョン・レノンがこの世を去ってから、すでに多くの年月が流れました。それでもなお、新しいドキュメンタリーが作られ、イベントが開かれ、世代を超えて語り継がれているのは、彼の音楽やメッセージが、今も多くの人にとって「現在進行形」であり続けているからです。
今回のイベントのように、
- 映画館でジョンの“最後の10年”を体感し
- その余韻のまま、和田唱さんや藤本国彦さんのトークに耳を傾ける
という時間は、ジョンの作品を今の自分の感覚で受け止め直すための、貴重なきっかけにもなります。
そして、トークの中で語られた『ダブル・ファンタジー』のエピソードは、多くの音楽ファンにとって、「聴き返してみようかな」と思わせてくれる刺激的な話でもあります。
もし、かつての和田さんのように、
- 「ジョンの曲だけを聴いていた」
- 「ヨーコの部分は飛ばしてしまっていた」
という経験がある方は、一度その“癖”を封印して、アルバムを最初から最後まで通しで聴いてみるのもおすすめです。
ジョンとヨーコ、二人の声が呼び合い、響き合うように並べられた曲順は、いま改めて耳を傾けると、当時とは違った意味や感情を呼び起こしてくれるかもしれません。
和田唱さんが、「あれ込みで『ダブル・ファンタジー』」と言うようになった、その感覚を、あなた自身の耳で確かめてみるのも楽しい時間になりそうです。
おわりに――ジョン・レノンを通して、自分の“音楽の歩み”を振り返る
ビートルズやジョン・レノンの音楽は、出会った年齢や時代によって、心に残るポイントが変わっていきます。
- 中学生や高校生のときには、ストレートなメロディや反骨精神に胸を打たれ
- 大人になると、歌詞に刻まれた迷いや揺れ、家族との関係に共感が生まれ
- さらには、パートナーとの共同制作や、社会との距離感にも目が向くようになる
そうした“聴き手の変化”を映し出してくれる鏡としても、ジョン・レノンの音楽は生き続けています。
和田唱さんが、中学生のころから50歳になる今まで、ずっとビートルズとジョン・レノンに夢中でいられたのは、その音楽が常に「新しい意味」を見せてくれる存在だったからかもしれません。
ドキュメンタリー『夢と創造の果てに ジョン・レノン最後の詩』と、アルバム『ダブル・ファンタジー』。
この二つの作品は、過去の名曲や伝説を懐かしむだけでなく、今の自分自身と音楽との距離を静かに問いかけてくる、そんな“入り口”にもなってくれるはずです。



