グレートバリアリーフ、記録的なサンゴの大規模死を迎える
世界最大のサンゴ礁、オーストラリアのグレートバリアリーフが2024年と2025年の連続した大規模な白化現象により、記録史上最大のサンゴ減少に見舞われています。オーストラリア海洋科学研究所(AIMS)の最新調査によると、過去40年にわたるモニタリングで最も深刻な年次サンゴ被覆率の低下が確認され、北部、中央部、南部の全域で大幅な衰退が続いていることが明らかになりました。
記録的な白化現象の実態
グレートバリアリーフは1998年以降、2016年、2017年、2020年、2022年、そして2024年から2025年にかけての大規模なサンゴ白化に繰り返し見舞われてきました。特に2024年から2025年の白化は過去最悪の規模で、AIMS調査では北部地域のサンゴ被覆率が39.8%から30%へ25%の減少、中央地域でも33.2%から28.6%に13.9%低下、南部は38.9%から26.9%と約3割の大幅な下降が記録されました。
原因は気候変動による海水温の上昇
主な原因は地球温暖化に伴う海水温の上昇による熱ストレスであると指摘されています。サンゴは熱により共生藻を追い出し白化(珊瑚白化現象)し、そのままの状態が続くと死に至ります。高度に白化したサンゴの死亡は、サンゴ礁の生態系全体に甚大な影響を与え、魚類など多様な海洋生物の生息環境を脅かしています。
調査の詳細と専門家の見解
- 調査主体:オーストラリア海洋科学研究所(AIMS)
- 期間:2024年から2025年の年間調査
- 調査地域:グレートバリアリーフ北部(ケープ・ヨーク~クックタウン)、中央部(クックタウン~プロサーピン)、南部(プロサーピン~グラッドストーン)
同研究所長のマイク・エムスリー博士は、「今回のサンゴ被覆率の急激な低下は、過去15年にわたり観察されてきた生態系の不安定化を示すものです。これまでのような穏やかな増減ではなく、極端な変動が頻発していることは、環境ストレスが強まっている証拠です」と述べています。
自然災害と生態系の圧力も影響
加えて、サイクロンの頻発や「オニヒトデ」の大量発生もサンゴへのダメージを加速させています。オニヒトデはサンゴを食べることで知られ、元々の自然現象ですが、バランスが崩れることで被害が拡大しています。これらの複合的なストレスにより、サンゴ礁の回復力が低下しています。
白化の歴史と地球温暖化の関係
過去の大規模白化では、2016年に極めて広範囲での白化が確認され、93%ものサンゴ礁に被害が及んだケースもありました。以来、海水温の高止まりや強力なエル・ニーニョ現象の影響で白化は頻発しています。専門家は今後も温暖化が続く限り、この傾向は加速すると警鐘を鳴らしています。
生態系と経済への長期的影響
グレートバリアリーフは多様な海洋生物の生息地であるだけでなく、観光や漁業にも大きな価値を持っています。サンゴ礁の崩壊は生物多様性の喪失だけでなく、地域経済の打撃にも直結します。世界自然保護基金(WWF)オーストラリアのリチャード・レック氏は「今回のサンゴ大量死は、2035年までの温室効果ガス削減目標の現実的かつ迅速な実施を強く求める声をさらに強めています」とコメントしています。
今後の展望と対策の重要性
生き残ったサンゴの繁殖や新たな成長を促進し、被害の回復を目指す動きもありますが、その効果は海水温の上昇が抑えられなければ限定的です。気候変動対策と共に、サンゴ礁保護のための具体的な行動が世界的にも求められています。
気候変動によるストレスを抑えながら、グレートバリアリーフのかけがえのない自然環境を未来に残していくためには、地球規模の協力と迅速な対応が不可欠です。