金沢文芸館の五木寛之文庫――「流されゆく日々」連載と企画展「活字とラジオのあいだには」
石川県・金沢市で、文豪・五木寛之の足跡を今に伝える「金沢文芸館」が注目を集めています。この記事では、2025年10月の最新情報として、五木寛之にまつわる連載企画と、金沢五木寛之文庫で開催中の特別展「活字とラジオのあいだには~伝説的ラジオ番組『五木寛之の夜』の世界~」について、詳しくご紹介します。
五木寛之文庫とは
金沢文芸館は、レトロな雰囲気を残す国登録有形文化財の建物です。館内2階には「金沢五木寛之文庫」が設けられており、五木氏の著作や直筆原稿、愛用品など、貴重な資料が展示されています。五木寛之は『朱鷺の墓』や『浅野川暮色』など、金沢を舞台にした作品も多く残しており、地元の文化風土と深く結びついた作家として知られています。
「五木寛之 流されゆく日々」――新着連載の注目点
「日刊ゲンダイDIGITAL」では、「金沢文芸館のこと」と題した連載企画が展開中です。今回ご紹介したいのは、最新3回(12203回・12204回・12205回)の内容です。いずれも「五木寛之 流されゆく日々」をテーマに、五木氏の人生や著作、そして金沢文芸館での活動について掘り下げています。
連載では、五木氏がなぜ金沢の地で創作活動を続けてきたのか、また地域の人々との交流や、作品に反映された金沢の風景や文化に注目しています。その文章は、五木氏の温和で繊細な人柄がにじみ出ており、読者に親しみやすい語り口で綴られています。また、五木氏の「片づけ」や「ものの選び方」にまで言及しており、日常生活の細かなエピソードから、人生哲学を見出そうとする試みもあります。
特別展「活字とラジオのあいだには」――ラジオと活字が交差する世界
2025年10月、金沢五木寛之文庫では企画展「活字とラジオのあいだには~伝説的ラジオ番組『五木寛之の夜』の世界~」が開催されています。この展示は、五木氏が25年もの長きにわたって出演した全国放送のラジオ番組「五木寛之の夜」に焦点を当てた、今までにない試みです。活字で言葉を綴る作家・五木寛之にとって、「語る」という行為が持つ意味を、ラジオ番組の音源や関連資料を通じて多角的に紹介しています。
展示では、番組で使われた台本や放送当時のリスナーからの手紙、五木氏自身のメモなど、貴重な資料が並びます。「五木寛之の夜」は1979年から約25年間にわたって放送され、多くのファンにとって「心のよりどころ」とも言える番組でした。五木氏の温かな語り口と、時折の諧謔や人生訓は、リスナーの心に深く刻まれました。その「声」に触れることで、作品だけでは伝わらない五木氏の人間味や、社会との関わり方を感じていただける構成です。
五木寛之と金沢の接点
五木寛之は、実際に金沢に居住した経験があり、浅野川や主計町など、市内の風景を作品に数多く描いてきました。地元の人々からも愛された作家で、特に浅野川沿いの老舗割烹「太郎」は、五木氏お気に入りの店として知られています。川のせせらぎを聞きながら、四季折々の食材で作られた鍋や懐石料理を味わい、創作のヒントを得ていたと言われます。
また、金沢は室生犀星、泉鏡花、徳田秋声といった文豪たちのふるさとでもありますが、現代において五木寬之が果たした役割は大きいと言えるでしょう。地元とのつながりを大切にしながら、全国に向けて金沢の魅力を発信し続けた功績は、今も多くのファンや読者に語り継がれています。
これからの金沢文芸館と五木寛之文庫
今回の特別展「活字とラジオのあいだには」も含め、金沢文芸館では今後も五木寬之の業績をさまざまな角度から発信していく予定です。五木氏が「活字」と「ラジオ」の両方で表現した世界をつなぐ展示は、これまでの作家展にはない新しい試みであり、若い世代にも親しみやすい内容となっています。また、企画展の成功を受けて、今後はさらに五木氏の足跡を辿るイベントや、地域の文化・歴史と絡めた連携事業も計画されているようです。
まとめ
金沢文芸館は、五木寬之という希有な作家の生涯と作品を、地元・金沢の文化とともに未来に伝える貴重な拠点です。今回の連載や特別展は、五木氏の「流されゆく日々」というテーマに沿って、その人となりや作品の奥深さを、やさしく丁寧に紹介しています。活字と声、地元と全国。その間を自由に、しなやかに往来した五木寬之の世界に、ぜひ触れてみてください。
- 金沢文芸館の公式サイトや展示情報をチェックすれば、より詳しい情報やイベントの予定を知ることができます。
- 五木寬之の作品やエッセイを読んでみたい方は、「金沢五木寬之文庫」へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
- 展示やイベントは定期的に入れ替わりますので、最新情報を確認のうえご来館ください。
五木寬之が愛した金沢の街と、その温かな文化に思いを馳せながら、文芸の秋を楽しんでみませんか?