和歌山・アドベンチャーワールドが新時代のパンダ体験を提供
和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドが、パンダファンに向けた新しい取り組みを次々と展開しています。2025年6月に飼育していた全てのジャイアントパンダが中国へ帰国したことを受け、パークは新たな形でパンダとの絆を深める活動をスタートさせました。
パンダ不在の中で生まれた新しいコンセプト
アドベンチャーワールドは1994年より30年以上にわたり、日中双方でジャイアントパンダの保護・繁殖に取り組んできた施設です。これまでに20頭のパンダたちがこのパークで暮らし、多くの来園者に愛されてきました。しかし、2025年6月に最後の4頭が中国へ帰国したことで、パークは初めて「パンダ0頭」という状況を迎えることになりました。
この大きな転換期を迎え、アドベンチャーワールドは過去30年間の歩みと想いを次世代へつなぐ新たな取り組みとして、「PANDA LOVE CLUB」という画期的なプロジェクトを立ち上げました。これは、パンダでつながり、広がる「ありがとう」と「大好き」をテーマに、パンダエデュテイナー(飼育スタッフ)とファンが一緒に創るクラブ活動という、これまでにない形のパンダ体験です。
新アトラクション「Panda Keeper’s Lab」の登場
PANDA LOVE CLUBの活動の一環として、パンダ飼育スタッフの疑似体験ができる新しいアトラクション「Panda Keeper’s Lab 飼育の裏側、覗いてみない?」が登場しました。このアトラクションでは、来園者が実際の飼育スタッフの視点から、パンダの世話や管理について学ぶことができる特別な体験を提供しています。
これまで一般の来園者には見ることのできなかった飼育の裏側を体験できることで、パンダの生態や保護活動への理解を深めることができます。実際にパンダがいなくても、30年以上にわたって蓄積されたノウハウや知識、そしてパンダへの愛情を次世代に伝えていくという、新しい形の教育的アプローチとなっています。
特別なファン感謝イベントも開催
PANDA LOVE CLUBの活動として、2025年10月22日(水・休園日)には「PANDA LOVE CLUB 感謝DAY」という特別な貸切イベントが開催されました。このイベントは、アドベンチャーワールドで暮らした20頭のパンダたちに想いを馳せながら、感謝の想いを伝える特別な一日として企画されました。
イベント内容は非常に充実しており、参加者は以下のような特別な体験をすることができました:
- パンダラブとブリーディングセンターのバックヤード見学
- PANDA LOVE CLUB ファン感謝DAY特別トークイベント
- イベント限定のビュッフェランチとノベルティ
- パンダのキャラクター「すみれ(Smile)」の登場
定員90名、参加費20,000円という特別なイベントには、抽選販売が実施され、その人気の高さから再販売も行われました。パンダエデュテイナーによるスペシャルトークイベントでは、2025年6月に中国へ帰国した4頭の誕生日を記念して、パンダファミリーの思い出やエピソードが楽しく語られました。
2025年春に開催されたパンダイベント
パンダが中国へ帰国する前の2025年春には、「SPRING ADVENTURE 2025」の一環として、様々なパンダ関連イベントが開催されていました。
特に人気を集めたのが、「ジャイアントパンダとお花見」というイベントです。このイベントは2025年3月28日(金)から4月4日(金)までの8日間限定で開催され、桜の開花に合わせてブリーディングセンター屋外運動場にお花見特設エリアが設置されました。
イベントでは、以下のような特別なコンテンツが用意されました:
- イベント限定グルメ「お花見パンダだんご」の販売(800円・2本入りお茶付き)
- 「新種パンダワールド」から”屋台パンダ”として「すみれ(Smile)」が登場
- 飼育スタッフによる「お花見パンダトーク」
- 桜色のコーディネートで来園したゲストへの「パンダ×桜 チェキ™」プレゼント企画
これらの企画は、パンダと一緒に春の訪れを楽しむという、日本ならではの文化とパンダを融合させた素晴らしいアイデアでした。
アニメーション「パンダコパンダ」とのコラボレーション
2025年1月17日(金)から3月11日(火)までの期間には、ジャイアントパンダ日中共同繁殖研究30周年を記念して、「パンダコパンダ展 ~和歌山・アドベンチャーワールドの巻~」という特別な展覧会が開催されました。
「パンダコパンダ」は、高畑勲さんと宮﨑駿さんがコンビを組んで制作された中編アニメーションで、1972年に中国から上野動物園に贈られたジャイアントパンダをきっかけに日本で大ブームを巻き起こした作品です。劇場公開から50周年を経たこの作品の世界をまるごと紹介する体験型展覧会は、過去に宮城県石巻市で約4万人、岡山県岡山市で約2.5万人もの来場者を迎えた大人気のイベントでした。
パンダ不在でも続く保護活動への貢献
アドベンチャーワールドの新しい取り組みは、単なる過去の思い出を振り返るものではありません。30年以上にわたって培ってきたパンダの保護・繁殖に関する知識や経験、そしてパンダへの深い愛情を、次世代に確実に伝えていくための教育的なプログラムとして位置づけられています。
「Panda Keeper’s Lab」のような新しいアトラクションでは、来園者が飼育スタッフの視点でパンダについて学ぶことができ、野生動物保護の重要性や、種の保存に向けた国際的な協力の意義について理解を深めることができます。これは、実際にパンダがいた時代とはまた異なる形で、パンダ保護活動に貢献する取り組みと言えるでしょう。
ファンとスタッフをつなぐ新しいコミュニティ
PANDA LOVE CLUBの最大の特徴は、パンダエデュテイナー(飼育スタッフ)とファンが一緒に活動を創り上げていくという点にあります。これまでのような「見る」「観察する」という一方向的な体験ではなく、ファン自身が主体的に参加し、パンダへの想いを共有し、その愛を次世代につなげていくという双方向的なコミュニティが形成されています。
このような取り組みは、日本の動物園や水族館における新しいファンエンゲージメントのモデルケースとなる可能性を秘めています。動物がいなくなっても、その動物との思い出や学んだことを大切にし、保護活動を継続していくという姿勢は、持続可能な野生動物保護の在り方を示唆しているとも言えるでしょう。
今後の展開への期待
アドベンチャーワールドのこれらの新しい取り組みは、パンダ不在という大きな転換期を、新たな可能性へと変えていく挑戦的な試みです。30年以上にわたって蓄積されたパンダ飼育のノウハウと、パンダを愛する人々の想いが結びつくことで、これまでにない形のパンダ体験が生まれています。
今後も「Panda Keeper’s Lab」をはじめとする新しいアトラクションやイベントを通じて、パンダの魅力や保護の重要性を伝え続けていくことでしょう。パンダという動物を通じて、人と自然、人と動物の関わり方について考えるきっかけを提供し続けるアドベンチャーワールドの取り組みに、今後も注目が集まります。