宇和島・吉田のミカン収穫に香川大生30人が参加 豪雨被災からの復旧支援が縁となる

愛媛県宇和島市吉田町で行われているミカン収穫の季節を迎え、香川大学の学生30人がボランティアとして収穫作業に参加しています。この協力関係は、豪雨による被災園地の復旧支援がきっかけとなり、地域と学生の絆を深める新しい取り組みとなっています。

極早生ミカンの季節到来

宇和島市吉田町の農業経営者・池田耕作さん(62歳)の園地では、今週火曜日から本格的な収穫作業がスタートしました。この時期に収穫される極早生ミカンは、最も早い時期に取れる温州ミカンで、宇和島市を中心に栽培される特産品です。爽やかな酸味が特徴で、全国の市場、特に関東地方を中心に出荷されています。

JAえひめ南によれば、今シーズンは天候に恵まれ、糖度と酸度ともに平年並みで、玉太りのよいミカンに育っているということです。ただし、夏場の高温による実の落ちが増加したため、生産量は平年並みだった一昨年の86パーセント、およそ3,500トンに留まる見通しとなっています。

香川大学学生との協力体制

今回、収穫作業を支援する香川大学の学生30人の参加は、単なるボランティア活動ではなく、より深い背景があります。豪雨による被災を経験した宇和島の園地の復旧協力がきっかけとなり、その後の関係が築き上げられてきました。学生たちが復旧支援に訪れたことが、地域の農業者との信頼関係を生み出し、今回のミカン収穫時期での参加へと発展したのです。

このような協力関係は、都市部の大学生と地方の農業地域を結ぶ貴重な橋渡しとなっています。学生たちは現場での労働を通じて、日本の農業の現状と課題を直接学ぶ機会を得られます。一方、農業経営者たちは労働力不足の解消と、若い世代への農業への理解を深めることができるという、相互にメリットのある取り組みです。

ミカン農家の想い

池田さんは、「今は暖かい気候で温度がある時期だから、冬のミカンと比べたら日持ちが短い。なるべく早く食べてもらえたら」とコメントしており、極早生ミカンが新鮮さを保つ短い期間に消費者の手に届く重要性を強調しています。

宇和島市吉田町は、愛媛みかん発祥の地として知られており、江戸時代から200年以上の歴史を持つミカン栽培の伝統を守り続けています。この地で栽培されるミカンは、崖上の傾斜地での栽培により、水はけが良く、甘く濃厚な味わいが特徴です。海が近く潮風によるミネラルが降り注ぐ独特の環境が、高品質なミカンを生み出しています。

地域と学生をつなぐ新たなモデル

香川大学学生30人の参加は、豪雨災害という困難な状況から生まれた新しいネットワークです。自然災害により打撃を受けた農業地域が、若い世代からの支援を受けることで、新しい形の産業振興が始まっています。これは、単なる一時的なボランティア活動ではなく、将来的には持続可能な農業の担い手育成へもつながる可能性を秘めています。

学生たちが現場で感じた農業の大変さと、ミカン栽培の奥深さは、彼ら自身のキャリア選択にも影響を与えるかもしれません。また、宇和島の農業者たちにとって、若い世代との交流は、これからの農業経営の新たな展開を考える上でも重要な財産となるでしょう。

季節の風物詩から地域振興へ

極早生ミカンの収穫は、宇和島の秋から冬への季節の移ろいを告げる風物詩です。今年の収穫時期には、香川大学の学生たちの若々しい力が加わり、この伝統的な農作業に新しい息吹をもたらしています。

豪雨による被災という悲しい出来事から始まった支援の輪が、こうして季節ごとに続く関係へと発展していく—これは、災害からの復興が単なる施設や経済の回復だけではなく、人と人、地域と地域をつなぐ力を持つことを示しています。

宇和島市吉田町のミカン収穫に参加する香川大学の学生たちが、このシーズンに生み出すであろう「つながり」と「信頼」は、今後の日本の農業が直面する課題解決のヒントになるかもしれません。

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