国慶節と中秋節の8連休、香港と中国本土における観光・消費トレンドの現在
はじめに
2025年の国慶節は、中秋節との連休も重なり、各地で大きな賑わいを見せています。特に香港では出入境者総数が876万人に及ぶと予測され、その規模は前年を大幅に上回るものと注目されています。また、中国本土でも消費拡大策や観光キャンペーンが打ち出され、国全体が祝祭ムードに包まれました。
国慶節とは?
国慶節(こっけいせつ)は、中華人民共和国の建国を記念する祝日で、毎年10月1日にあたります。大型連休「ゴールデンウィーク」として知られ、多くの人々が国内外を旅行する時期としても有名です。今年は中秋節と連動し、最大8連休となったことで一層の盛り上がりを見せました。
香港:過去最大級の人流・観光ラッシュ
香港入境事務処の発表によると、2025年の国慶節連休期間(10月1日から8日まで)には、香港・中国本土双方の市民や観光客を含め876万人が陸海空の境界を出入境する見込みです。特に10月1日の入境ピーク時には61万人、10月4日の出境ピーク時には66万人が移動するとされ、主要な陸路の管制ポイントには大規模な人流が集中します。
このうち本土からの入境者は約154万人、昨年の同時期より前年比11%増と大幅な伸びを記録しました。旅行業関係者によると、旅行団の数も1200を超え、日平均旅行団数は前年並み。また、出入境の約90%が陸路によるもので、特に落馬洲支線や高鉄西九龍駅の利用が顕著でした。
観光業界・イベントの盛況
- ビクトリアハーバーの国慶節花火ショーには33万人以上が来場し、過去最高級の人流となりました。
- 中秋節の伝統行事「大坑舞火龍」や「中秋彩灯会」も大勢の観光客を集めました。
- ホテルの稼働率も急上昇し、連休前半4日間で90%に達したとのデータもあります。
- セクター全体で盛事経済の加速が見込まれ、香港政府や観光関連団体も多様なプロモーションを展開しました。
特に今年は、市民向けの映画半額キャンペーン「10.1半價睇好戲」に計18.9万人が動員されるなど、家族連れや若年層にも広く訴求するイベントが展開されました。
交通・社会インフラの対応
急増する人流への対応として、香港政府は関係省庁や業界団体と連携し、交通・出入境管理・観光案内・公共交通拡充など多角的な手を打ちました。特に旅行客の集中が予想される西貢万宜水庫東坝では、警察による交通・人流対策も強化されました。
「一連8日間、祝祭イベントと観光を楽しむ来訪者に快適な滞在を提供できるよう、各部門と政府が一丸となって準備・対応した」と、政務司司長もその成果を強調しています。
中国本土:積極的な観光・消費促進策
中国本土では国慶「文化・観光消費月」と題したキャンペーンが始動し、地方政府や民間企業が連携して旅行・娯楽・ショッピング分野に大規模な消費補助(総額約3.3億元)を提供するなど、観光と内需活性化に力を入れています。
- 補助金施策のほか、各地の文化・歴史資源を活かした「ニッチ」な観光商品が注目を集めています。
- 都市部だけでなく、田園体験や歴史村、現代アートツアーなど多様な体験型消費が拡大。
- SNSや動画配信を活用した「ライブコマース」型の現地発信も充実し、若年層の消費・旅行意向を牽引。
中国観光市場全体で“ニッチ覚醒”という新たな消費トレンドが台頭し、個性や体験性を重視する層の動きが今後の消費拡大の鍵と目されています。
今後の展望と課題
今年の国慶節・中秋節は、香港・中国本土ともに観光・消費の分野で歴史的な盛り上がりとなりました。政府・業界の一体となった対策や、消費者ニーズに応じた新しいサービスの拡充はいずれも高い評価を集めています。
一方で、交通インフラや人流管理、観光地の混雑緩和、ごみ対策といった「大量の人流」への持続可能な対応は、今後の連休シーズンに向けてさらに議論と改善が求められています。加えて、体験重視・個人主義傾向のトレンドが強まる中、多様化する旅行者像に合わせた観光・サービス商品の開発も重要となってきています。
まとめ
2025年の国慶節連休は、コロナ禍明けの規制緩和を経て、香港と中国本土の観光・消費分野に新しい活力をもたらした象徴的な期間となりました。大型の人流による賑わいだけでなく、消費多様化や観光体験型志向といった新たなトレンドの萌芽も見られ、今後の発展が期待されます。
この盛況が「一過性」ではなく、持続可能な観光・地域活性創出の原動力となるためにも、行政・業界・市民それぞれの知恵と工夫がより一層求められそうです。