日銀の利上げ観測で円相場が変動、野口審議委員の講演が注目される

11月26日の東京外国為替市場では、ドル円相場が156円半ば付近で推移しており、日本銀行の12月利上げに対する市場の期待感が円相場を大きく動かしています。急速な円安進行に伴うインフレリスクや、日本政府の圧力緩和を受けて、日銀が12月の金融政策決定会合で利上げに踏み切る可能性があるとの見方が広がっています。

円相場の変動と市場の反応

26日のアジア時間からロンドン時間にかけてのドル円相場は、まず株高を手掛かりに円売りが先行し、一時156.375円まで上昇しました。しかし、その後は日銀の12月利上げ期待を受けた円買い戻しが優勢となり、ドル円は155.655円まで反落するなど、上下動の激しい展開となっています。こうした相場変動は、市場参加者が日銀の金融政策判断を注視していることを示唆しています。

27日の東京外国為替市場では、ドル円相場は一時155円80銭台まで軟化しており、依然として円買い圧力が続いています。市場では156円台での売り注文が複数レベルで観測されており、155円台での買い注文も見られるなど、相場は値動きの激しい状況が続いています。

日銀関係者の発言が相場を左右

現在、日銀内では利上げに前向きな発言が相次いでいます。植田日銀総裁は、為替円安に端を発した物価上昇が予想物価上昇率への影響を通じて基調的な物価上昇率に影響する可能性に留意していく必要があると述べています。さらに、小枝審議委員は実質金利は他国と比べても明らかに低いとして、金利の正常化を進めることが必要だと発言しています。

加えて、増審議委員は日銀の利上げ判断が近づいていると述べ、実質金利の低さに言及して「政策金利が中立金利を下回っている現状から早く抜けたいと強く思っている」と述べています。こうした複数の委員による利上げ姿勢の表明は、市場に対して12月会合での利上げが現実的になってきたと認識させています。

野口審議委員の講演が焦点に

特に市場の注目を集めているのが、日銀政策委員会内に残っている最後のリフレ派である野口審議委員の講演です。27日の10時30分から予定されている野口委員の講演では、利上げに前向きな見解を示した場合は円買い要因となるため、市場参加者が警戒しています。野口委員は9月29日の講演では、「純粋に国内の経済状況という観点だけからみれば、新たな政策視野が必要な段階が近づきつつあると認識している」と述べつつも、「米国の関税政策による大きな下方リスクもあるので物価の基調を慎重に見きわめる必要がある」と述べていました。

また、野口委員は9月の講演で「政策金利調整の必要性がこれまで以上に高まりつつある」と利上げに前向きな姿勢を示していたため、今回の講演でも同様のトーンが予想されています。市場では野口委員がタカ派的な発言をするかどうかに注視が集まっており、その内容によって円相場が大きく変動する可能性があります。

日銀のコミュニケーション戦略

昨日は一部通信社が「日銀は12月の日銀金融政策決定会合に向けて、市場の利上げに対する準備を整えるためにコミュニケーション方法を調整している」と報じました。このニュースが流れた直後、ドル円は155.65円まで円高に振れており、日銀のコミュニケーション変化が相場に直結していることが明らかになっています。日銀が市場にショックを与えないためにタカ派シグナルを段階的に発信しているとの見方も広がっており、複数の委員による利上げ支持発言が相次いでいるのはそのためだと考えられます。

12月金融政策決定会合への期待

急速な円安進行による輸入物価の上昇やインフレリスクの高まりが、日銀に利上げを促している背景があります。日本政府の一部からも円安に対する圧力緩和を求める声が出ており、これが日銀の利上げ判断を後押ししている可能性があります。12月の金融政策決定会合では、こうした国内外の圧力を受けて、日銀がついに利上げに踏み切るかどうかが大きな焦点となります。

市場参加者は、今後の日銀関係者の発言や経済指標を注視しながら、12月会合での利上げの確度を探っています。野口審議委員の講演をはじめとした日銀委員の発言は、市場の利上げ期待を形成する上で重要な役割を果たしており、相場の変動に直結しています。

今後の相場見通し

現在のドル円相場は、日銀の金融政策判断という大きなイベント控えた調整局面にあります。156円台での売り注文が厚く、155円台での買い注文も存在するなど、市場は次のショック要因を待っているような状態です。野口審議委員の講演内容次第では、相場が大きく変動する可能性があり、市場参加者の高い関心が続いています。

日銀の12月利上げが現実化するかどうかは、今後の経済指標や日銀関係者の発言によって左右されますが、現在の市場センチメントは利上げを相当程度織り込んでいると考えられます。円相場はこうした利上げ期待の変動に敏感に反応し続けるでしょう。

参考元