安川電機、通期純利益と営業益を上方修正――中国市場の好調が牽引
安川電機(株式会社安川電機)は2025年10月3日、2026年2月期(国際会計基準)の通期業績予想について、通期純利益を370億円へ上方修正したと発表しました。さらに、営業利益予想も430億円から480億円へ引き上げるなど、足元の実績と需要環境を踏まえた積極的な見通しを示しています。この背景には、特に中国向け需要の好調による売上の堅調推移や、米国の関税コスト見通しが改善したことが挙げられています。
決算発表の詳細と要点
- 2026年2月期(2025年3月1日~2025年8月31日)の中間連結会計期間の業績は、売上収益が2,601億95百万円(前年同期比0.5%減)、営業利益は233億34百万円(同1.8%増)を記録しました。
- 親会社株主に帰属する中間利益は182億47百万円と2.2%増加し、一株当たり中間利益は70.36円と前年同期比で増加しています。
- 足元の業績と今後の需要見通しを踏まえ、通期の連結営業利益予想を480億円(従来予想430億円)に上方修正。純利益についても370億円へ見通しを上方修正しています。
中国向け需要が好調――減益幅を大幅に縮小
2026年2月期通期決算見通しにおいて、従来予想に比べて純利益・営業利益を上方修正した大きな理由の一つが中国向けの需要の好調です。中国の工場自動化やデジタル変革への投資が堅調に推移し、主力のロボットやモーションコントロール製品への需要が高水準で推移しています。これにより、当初見込んでいた減益幅は、営業利益で前年実績比▲14.3%から▲4.3%へと大きく縮小しました。
米国向け関税コストの見通し改善もプラス材料
安川電機は、米国による関税政策の影響を懸念していましたが、最新の想定では、米関税によるコスト影響を当初の65億円から35億円に引き下げています。これは、関税率が15%で妥結したことや業績への実質的なインパクトが想定よりも小さかったためです。今後も米中の貿易関係や関税政策の変化には注視が必要ですが、現時点では想定よりも良好な環境となっています。
グローバル市場での販売動向
安川電機の売上高のうち、中国事業が引き続き拡大しており、同社の連結業績全体をけん引しています。一方で、欧米市場においても堅調な推移を示しており、特に欧州では自動車関連や産業機械分野の需要回復が追い風となっています。新興国市場でも、省力化・省人化需要の拡大に伴い、今後さらなる伸長が期待されています。
財務状況とキャッシュ・フロー
- 2026年2月期第2四半期の営業活動によるキャッシュ・フローは引き続き良好を維持しており、減価償却費等を含めた経営基盤の強化にも努めています。
- 安定したキャッシュフローのもと、設備投資や研究開発も積極的に推進しており、持続的成長に向けた体制を強化中です。
株価・投資家からの注目度も高まる
今期の業績上方修正や好調な中国市場の動きを受けて、投資家からの注目がさらに高まっています。アナリスト20人のコンセンサス予想(IBES)では連結営業利益480億円と見込まれており、今回の会社予想もそれに並ぶ水準です。市場からは、「次の成長戦略や新規事業の展開にどこまで期待できるか」という点にも注目が集まっています。
業績好調の背景にある事業ポートフォリオの多様化
安川電機は、主力の産業用ロボットに加え、サーボモーターやインバータ、制御機器など多岐にわたる製品群を持ち、多様な産業分野で活用されています。この事業ポートフォリオの多様さが、高度化する生産現場への迅速な対応と、リスク分散を実現しています。特に、スマートファクトリー分野でのシェア拡大と、IoT・AI技術の活用を推進し、高付加価値型ビジネスへの移行を進めている点が、業績好調の背景にあります。
今後の安川電機の展望と課題
- 中国・アジア地域のさらなる需要拡大には引き続き期待が高まります。現地のパートナーとの連携や生産体制の強化を図ることで、競争力の一層の向上が見込まれています。
- 米中貿易摩擦や欧州をめぐる地政学的リスクへの対応は、引き続き慎重なマネジメントが求められます。
- 為替変動や世界経済の不確実性への備えとして、グローバルでのコスト競争力や収益体質の強化を加速しています。
- 環境対応やESG(環境・社会・ガバナンス)経営への取り組みも重視されており、サステナブル経営を一層推進する方針です。
業績上方修正がもたらす企業価値向上の波及効果
上方修正が発表されると、企業の成長性や収益安定性への市場の期待が高まり、安川電機の企業価値向上につながります。従業員の士気向上やパートナー企業との協業拡大にも良い影響が及ぶほか、中長期的な配当政策にもさらなる改善余地が生まれます。今後も継続的なイノベーションと経営改革を通じて、新たな企業価値創造に挑戦していく姿勢が評価されています。
まとめ
安川電機は2026年2月期通期業績予想について、純利益・営業利益ともに上方修正し、好調な中国向け需要と米国関税コストの想定改善が業績を支えています。世界市場の不透明感が続くなか、高度な技術力とグローバル対応力で確かな成長を実現している点に注目です。引き続き、企業価値向上と持続的な成長戦略の展開が期待されます。