2025年冬のボーナスは本当に増えている?最新データから見える「頭打ち感」と地域差
2025年の冬のボーナスシーズンは、「増えている」という実感を持つ人と、「あまり変わらない」「思ったほどではない」と感じる人に分かれやすい状況になっています。企業の調査結果を見ると、全体としては増加傾向が続いているものの、その伸びはやや鈍りつつあり、「頭打ち」の様子もうかがえます。この記事では、帝国データバンクなどの調査結果や、広島県内企業の具体的なデータをもとに、2025年冬のボーナスの現状をわかりやすく整理します。
全国的には5年連続でボーナス増加 しかし伸び率は緩やかに
まず、全国ベースでの冬のボーナスの動きを見てみましょう。民間の経済調査では、2025年冬の民間企業(従業員5人以上)におけるボーナスは、前年に比べ+2.3%と、5年連続で増加する見通しとされています。一人当たりの平均支給額は42万2,989円と予測されており、2020年以降続いてきた賃上げの流れが、賞与にも反映されている形です。
また、ボーナスが支給される労働者の割合(支給労働者割合)は87.9%と見込まれ、前年から0.6ポイント上昇するなど、支給対象となる人の裾野も広がっていると分析されています。支給総額ベースでも前年比+4.3%と、5年連続の増加が予測されています。
背景には、
- 企業業績の改善(コロナ禍からの回復、輸出や設備投資の持ち直しなど)
- 人手不足の深刻化による人材確保競争の激化
といった要因が指摘されています。人材をつなぎとめるため、基本給の引き上げに加え、ボーナスで報いる動きも続いていることがうかがえます。
「増加」企業は約2割強で頭打ち 帝国データバンク調査の意味
一方で、帝国データバンクが実施した「2025年冬のボーナス」に関する調査では、「今冬のボーナスの支給額を前年より増やす」と回答した企業は22.7%にとどまり、「頭打ち」の傾向が見られると報告されています(調査要旨より)。この割合は、前年まで増加傾向にあった「増額企業」の比率が一服していることを示唆しています。
つまり、
- 全国平均で見れば一人当たり支給額は増えている
- しかし、「前年より増やす」と積極的に回答している企業の割合は、約2割強にとどまり、勢いはやや鈍化
という、やや複雑な状況になっていると言えます。
これは、「ボーナスが増えた人」と「横ばいまたは減った人」の差が、業種や企業規模、地域によって大きくなっている可能性を示しています。物価上昇も続くなかで、「数字上はプラスだが、実感としてはあまり増えた感じがしない」という声につながりやすい構図です。
広島の企業では2.5%増 4年連続のプラス
より具体的な地域の例として、広島県内企業のデータを見てみましょう。広島銀行グループの調査によると、広島県内273社が回答した2025年冬季ボーナスアンケートでは、正社員一人当たりの冬季ボーナス支給額は54万6,100円となり、前年比+2.5%の増加が見込まれています。
この結果は、
- 冬のボーナスの一人当たり支給額は、2022年にプラスに転じて以降、4年連続で前年を上回る
- 支給人数も+0.8%と増加し、支給総額は+3.3%と4年連続のプラス
という点で、全国動向とも整合的な「増加傾向の継続」を示しています。ただし、伸び率自体は前年(+3.5%)からやや低下しており、ここでも「増加ペースの鈍化」が見られます。
なお、調査では、ボーナス支給額の決定要因として、
- 「決算の状況」(業績)が6割超で最も多い
- 次いで「従業員の士気向上」、「足もとの業況」などが挙げられている
ことも示されています。利益が出ている企業ほどボーナス増額に踏み切りやすい一方、業績が厳しい企業は慎重な姿勢を崩していないことがうかがえます。
運輸・倉庫業が増加企業割合トップ なぜボーナスが増えやすいのか
業種別でみると、2025年冬のボーナスで「増加企業の割合」が最も高いのは「運輸・倉庫」で、33.6%の企業が「前年より増額」と回答したとされています(帝国データバンクの業種別集計より)。つまり、約3社に1社がボーナスを増やす方針を示している計算になります。
その背景として考えられるのは、
- ネット通販や物流需要の高止まりによる、運輸・倉庫業界の業績改善
- ドライバーや倉庫作業員などの深刻な人手不足による、人材確保・定着に向けた待遇改善
といった要素です。特に物流業界では、長時間労働是正や「2024年問題」などへの対応を進めるなかで、賃金・ボーナスを含めた処遇の改善を進める必要性が高まっており、その一端がボーナス増額に表れているとみられます。
一方で、すべての業種で同様に増えているわけではありません。製造業・非製造業ともに平均としてはプラスですが、業界によってはコスト増や需要の頭打ちに直面し、「同額」あるいは「減額」を選ばざるを得ない企業も少なくありません。これが、冒頭で触れた「増額企業は22.7%で頭打ち」という全体像につながっています。
非正規社員にもボーナス増の動き ただし金額差は依然大きい
広島のデータでは、非正規社員(パート・アルバイトを除く)を雇用する企業における、一人当たりボーナス支給額は12万5,700円で、前年比+5.2%と、正社員(+2.5%)を上回る伸びを見込んでいます。支給人数も+1.8%と増加し、支給総額は+7.0%という高い伸び率が示されています。
これは、非正規社員に対しても処遇改善を進める企業が増えていることを示すものですが、一人当たり金額を見ると、正社員の約4分の1程度にとどまっており、依然として大きな格差が残っている状況です。
全国的にも、賃上げやボーナス増額の動きは広がっているものの、
- 正社員と非正規社員の間
- 大企業と中小企業の間
- 都市部と地方の間
といった構造的な格差はなお大きく、その解消が今後の課題となっています。
ボーナス増でも「実質賃金」はどうか?生活実感とのギャップ
ボーナスが増加しているとはいえ、「生活は楽になった」と実感できている人はどのくらいいるでしょうか。政府の景気ウォッチャー調査などでは、「冬のボーナス支給額が予想以上に増加した」という話を聞く機会が増えた、というコメントがある一方で、物価上昇が続くなかで、実質的な購買力がどこまで回復しているかについては、慎重な見方も出ています。
中小企業白書などでも、2025年の日本経済は「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への転換点にあるとされ、賃金・ボーナスの増加が経済全体の成長につながるかどうかが注目されています。その意味では、今回の冬のボーナス増加は前向きな材料ではあるものの、物価上昇を十分にカバーしているか、また、裾野広く行きわたっているかという点では、まだ道半ばと言えるでしょう。
雇用維持・人材確保を意識したボーナス配分
広島の調査では、企業がボーナスを決める際の要因として、「決算の状況」のほかに「従業員の士気向上」や「雇用維持」が重要視されていることがうかがえます。特に、人手不足が深刻な業種や地域では、「景気が不透明でも、雇用を守り、人を確保するために、できる範囲でボーナスを確保する」という経営判断が増えていると考えられます。
その一方で、原材料価格やエネルギー価格の高止まり、先行き不透明な世界経済などを背景に、「大幅な増額には踏み切れない」という慎重姿勢も根強く、これが「増額企業22.7%・頭打ち」という統計に表れていると言えます。
2025年冬ボーナスをどう受け止めるか
2025年冬のボーナスをめぐる動きを、整理すると次のようになります。
- 全国平均では5年連続の増加で、一人当たり支給額は+2.3%程度の伸び
- 支給対象者の割合も増え、支給総額は+4.3%と堅調
- 一方で、「増額」と回答した企業は22.7%にとどまり、伸びの勢いは「頭打ち」感
- 広島では一人当たり54万6,100円で+2.5%、4年連続で増加
- 業種別では運輸・倉庫が増額企業割合33.6%でトップと、物流系での増加が目立つ
全体としては、「増加傾向は続いているが、地域や業種、雇用形態によって温度差が大きい」というのが、2025年冬のボーナスの特徴と言えそうです。
これからボーナスの使い道を考えるうえでは、「増えた分をどう活かすか」という前向きな視点に加えて、「物価上昇や将来の不安も踏まえて、計画的に使う」というバランス感覚も大切になってきます。企業側にとっても、「短期的な利益」だけでなく、「人への投資」としてのボーナスの位置づけをどう考えるかが、今後の成長力を左右するポイントになっていくでしょう。


