ジャパネットがシント=トロイデンの筆頭株主になる方針報道、その真実に迫る
近年、日本企業のグローバル展開は各分野で顕著ですが、サッカー界でも同様の動きが注目を集めています。2025年10月、報道各社が相次いで「ジャパネットホールディングスによるベルギー1部・シント=トロイデンVV(STVV)の筆頭株主化および経営権取得方針」を伝えました。しかし、このニュースには関係者から否定的なコメントも出ており、その真相が大きな話題になっています。本記事では、事実関係とその背景、そして今後の展望について、わかりやすく解説します。
■ ジャパネットは本当にシント=トロイデンの筆頭株主になるのか?
きっかけは2025年10月2日、「ジャパネットが2、3年内にDMMグループからシント=トロイデンの株式を追加取得し、経営権を握る方針である」と報じられたことです。これによりジャパネットが筆頭株主へと転じ、さらに経営の主導権を持つのではという見方が広まりました。
実際に、ジャパネットは2025年7月、DMMグループが保有していたSTVVの株式19.9%を取得し、第2位の株主となっています。現時点ではDMMグループが依然として筆頭株主であり、ジャパネットは経営権の取得へ向けて「今後2~3年かけ更なる株式取得・経営権確保を目指す」とも一部で報道されています。
■ DMMサイドの否定、何が食い違っているのか?
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DMMグループ(STVV会長・村中悠介COO)が報道を即座に否定。
村中COOはSNS上で「何の話し合いも行われていません! 朝ニュースを見て驚いた。ジャパネットが筆頭株主になることに基本合意した事実はなく、そんな話はしていない」と発信しています。 -
長期的な展望を語ったことは事実。
ただし「株主である以上ごく自然な会話で、それがすぐに経営権の移譲や筆頭株主化とはならない」とし、現在は経営方針や売却について具体的な協議がないことも明言しました。
■ 資本業務提携とスポンサー契約、その全貌
ジャパネットとSTVVは2025年7月、資本業務提携およびプラチナスポンサー契約を締結しました。その内容は下記の通りです。
- 2025年7月18日付でジャパネットがDMMグループからSTVVの株式の一部(19.9%)を取得。
- ライセンス委員会が承認すればこの株式譲渡は正式成立。
- 2025-2026シーズンのSTVVトップチームのユニフォーム(鎖骨部など)にジャパネットロゴを掲出。
- 定期的な資本・業務提携報告および今後の協力体制の維持。
この資本提携記者会見では、ジャパネットの高田旭人社長、STVV CEO立石敬之氏が共に出席し、両者の友好的な関係をアピールしました。
■ ジャパネットが目指すマルチクラブオーナーシップ(MCO)とは?
ジャパネットはJ2のV・ファーレン長崎をすでに保有しており、「複数クラブをグループ化するマルチクラブオーナーシップ(MCO)」に積極姿勢を示しています。高田社長は「海外クラブとのMCOを強く意識している」と述べ、すでに長崎からMF松沢海斗選手がシント=トロイデンへ移籍するなど、選手育成・移籍のシナジーを実現しています。
MCOはシティ・フットボール・グループ(マンチェスターC他)やレッドブルグループ(J2大宮など海外複数クラブを運営)が代表的です。日本企業の本格的な欧州サッカークラブ直接保有としては横浜FC(ポルトガル2部オリベイレンセ傘下)ONODERAグループに続く2例目で、日本サッカー界にとっても大きな一歩となります。
■ 両社のコメントから読み解く、今後の展開
報道では「2~3年後の経営権取得を目指す」とされていますが、現時点でこれは合意事項ではありません。今後の焦点は以下にあります。
- 株式追加取得の進むかどうか:DMM側は慎重な姿勢を示しており、即決的な経営権譲渡は否定しています。ジャパネットとしては中長期的な海外戦略の一環ですが、現段階では確定的情報はありません。
- 両社協力体制の維持:スポンサー契約や選手育成プログラムなどスポーツ経営の相乗効果が今後も続く見込みです。特に若手育成や国際交流、長崎のプレシーズンでベルギーキャンプを計画している点などは両クラブにとって実益が大きいといえるでしょう。
■ シント=トロイデンと日本サッカー界のつながり
STVVは2017年にDMMが経営権を取得して以降、日本人選手の欧州挑戦の扉として重要な役割を果たしてきました。遠藤航や冨安健洋など、世界で通用するプレーヤーがここから次の舞台へ飛躍を遂げています。日本企業の出資・経営参画が継続し、日本とベルギー、さらにはヨーロッパ全体でのサッカー連携が今後さらに活発化していく可能性があります。
■ まとめ:今後の動向に注目
現時点で「ジャパネットがSTVVの筆頭株主となり経営権を取得する」との正式合意はありませんが、資本提携・スポンサー契約を通じた両社の関係強化および日本サッカー界への好影響は確実です。MCOによるマルチクラブ戦略、多彩な人材・ノウハウ・資本の流入がどのようなムーブメントを生み出すか、Jクラブのグローバル戦略として今後も注視が必要と言えるでしょう。