TICADとは――第9回アフリカ開発会議(TICAD9)横浜開催、新経済圏構想と最新の国際協力動向
TICAD(ティカッド)――「アフリカ開発会議」としても知られるこの会議は、日本政府が主導し、国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アフリカ連合委員会(AUC)とともに1993年に創設されました。アフリカの経済成長や社会発展を目的に、国際社会が一堂に会して議論、連携を深める国際会議です。2025年8月、第9回会議(TICAD9)が横浜で開催され、国内外の注目を集めています。
TICADの仕組みと歴史
TICADは1993年の初回以来、約3年ごとに日本で開催されてきました。特徴的なのは「アフリカの主体性(オーナーシップ)と国際社会のパートナーシップ」を理念に掲げている点です。会議にはアフリカ各国首脳や政府要人、多国籍のビジネスリーダー、NGO、市民社会、また国際機関が幅広く参加します。
- 政府や民間部門、市民社会、国際機関など多様なステークホルダーが参加
- 議題は経済・社会の発展、平和構築、持続的な開発など多岐にわたる
- 日本による外交・国際協力の要(かなめ)となっている
2025年:TICAD9が横浜で開幕
2025年8月20日から22日まで、横浜市のパシフィコ横浜を会場にTICAD9が開催されます。今回のテーマは、イノベーションの促進、若者参画、持続可能な金融、平和と安定、都市化と雇用創出など、アフリカの現状と未来に直結する内容です。
石破茂首相は初日の開幕演説で「新経済圏構想」を打ち出す方針を示し、日本とアフリカ、そしてインド洋地域を結ぶ経済協力・成長モデルを世界にアピールしました。
- 会場:パシフィコ横浜
- 日程:2025年8月20日(水)~22日(金)
- 公式参加者:約1万人以上(各国首脳・閣僚・ビジネス・市民社会リーダー)
- 特別セッション・分科会・シンポジウム・展示ブースなどを多数開催
アフリカ×日本――相互成長の新たなステージへ
TICAD9では、「アフリカのオーナーシップと国際連携」を実現する実効的な戦略づくりが大きな軸です。日本は途上国援助をはじめインフラ整備、人材育成、技術協力、新産業創出など多角的なパートナーシップを提案しています。例えば、都市化の課題と可能性に関する分科会では、世界銀行や日本の都市政策の知見を活かし、民間投資・雇用創出・環境共生型の都市発展を議論。
また、起業家や若者が主役となるプロジェクトも注目され、未来のアフリカ経済を支える人材の育成支援や、イノベーションエコシステムについても多くの意見が交わされました。
日系スタートアップの活躍――サグリ株式会社もTICAD9に登壇
アフリカ関連の産業振興を掲げるTICAD9には多くの日本企業・スタートアップも参画。サグリ株式会社代表取締役CEOの坪井俊輔氏は、「インド洋・アフリカ経済圏フォーラム」に登壇し、日本発のテクノロジーやデータ活用がアフリカの農業・物流・環境モニタリングなど社会課題の解決に寄与できる可能性を提言しました。
- 現地課題のデジタル解決策、農業のスマート化、地図情報の活用など幅広い実践例を提示
- 日本のスタートアップの技術力が、発展途上国支援や国際ビジネス展開の新機軸となる
国際競争激化:中国「対アフリカ関税ゼロ」政策の衝撃と日本の対応
昨今では、中国が「対アフリカ関税ゼロ」政策を打ち出し、アメリカ・トランプ政権下の対中関税増加を背景にアフリカ市場への進出を加速させています。一方、日本は中国・欧州勢との競争下で持続可能な開発協力の質と独自性が強く問われています。
- 中国:アフリカとの通商強化を戦略的に推進。資源獲得・インフラ案件で積極攻勢
- 日本:質の高いインフラ投資、人材育成、制度整備、地方分権支援などで存在感を示す
- 両国の開発戦略には、「現地主導」「共創」といったパラダイム転換がカギ
市民参加と横浜市の取り組み:「アフリカ月間」など地域からの国際化アプローチ
横浜市はTICAD9開催に合わせ、「アフリカ月間2025」と題し、7月~8月にかけて市民参加型の関連イベントを各所で展開しました。アフリカの食文化紹介や音楽・アート体験、現地と繋がるワークショップなど、国際協力が「身近な自分ごと」となり得る機会を市民に届けました。
TICAD9で議論された主なテーマ・分野
- イノベーション推進:スタートアップ支援、テクノロジー活用
- 若者と女性のエンパワーメント:雇用創出、人材開発
- 持続的な金融:地元経済の強化、国際資金の呼び込み
- 平和と安定:安全保障、災害・気候変動対策
- 都市化と農業:都市部・農村部の均衡発展、農業のスマート化
- パートナーシップの深化:国際協調・共同投資
今後の展望:新たな「共創」に向けた日本とアフリカの関係
TICADは単なる援助会議ではなく、アフリカ各国の主体性や多様なステークホルダーの参加を前提とした「共創」のプラットフォームです。今後は、気候変動対策、食糧安全保障、災害レジリエンス、環境配慮型産業、地域分権政策等での連携がさらに深化していく見通しです。
特に石破首相が提案した「新経済圏構想」は、日本の知見とアフリカの若者パワー、国際機関や民間部門の資金・技術を融合させた成長モデルであり、これが今後の日アフリカ関係の羅針盤となることが期待されています。
まとめ:TICADが未来にもたらすもの
TICADは、「アフリカの発展は世界の発展」と捉え、相互の持続成長とグローバルパートナーシップの最前線となっています。日本のビジネスや技術、人材育成政策が今後もアフリカにおいてどのような具体的成果を生み、世界の持続可能な開発の流れを先導していくのか――その動向からますます目が離せません。