気象衛星「ひまわり9号」に観測障害発生、バックアップ8号で可視画像の提供を再開 ― 台風観測や警報に影響なし

2025年10月12日、気象庁は日本の気象観測を担う重要な存在である気象衛星「ひまわり9号」に観測障害が発生したことを発表しました。一時は衛星画像の最新情報が提供できない影響が生じましたが、現在はバックアップ衛星「ひまわり8号」を活用し、可視画像の提供を再開しています。また、台風の観測や警報の発令に大きな支障は出ていないとのことです。この記事では、ひまわり9号の障害の内容や、今後の気象観測への影響、衛星運用の仕組みなどをわかりやすく解説します。

気象衛星「ひまわり9号」とは?

ひまわり9号は、地球全体の気象現象を24時間体制で観測するために2016年に打ち上げられた日本の静止気象衛星です。上空約3万6千キロメートルの静止軌道から、日本を含むアジア・太平洋地域を高頻度・高解像度で観測し、台風や大雨、気温の変化、雲の動きなど、多岐にわたる気象情報をリアルタイムで提供しています。

  • 静止軌道を利用し、常に同じ範囲を観測
  • 10分ごとに衛星画像を地上局へ送信
  • 先代の「ひまわり8号」と均等運用、障害時のバックアップ体制も確立

これにより、気象庁や各国の気象機関、航空・船舶交通、災害対策機関などが最新の気象データを迅速に取得し、私たちの生活や安全のために幅広く活用されています。

発生した障害の概要

今回発生した障害は、2025年10月11日午後(日本時間10月12日早朝)、地上局へひまわり9号から送信される観測データが正常に受信できなくなるというものでした。これにより、最新の気象衛星画像の取得と配信に一時的な遅延が生じました。

  • 発生日時:2025年10月11日19時30分(米国西部時間)
  • 主な影響:雲画像データ等の配信遅延
  • 対象範囲:日本及びアジア・太平洋地域

障害の原因については、気象庁および関連機関が引き続き調査中です。ひまわり9号の観測装置、通信システム、データ処理設備のいずれか、あるいは複合的な要因が関与している可能性も考えられています。

バックアップ衛星「ひまわり8号」の活用について

障害発生後、迅速な対応として、2014年から運用されているバックアップ衛星「ひまわり8号」に切り替えて観測データの取得が行われています。ひまわり8号と9号は同一規格の双子衛星として打ち上げられており、どちらか一方に障害が発生した際にも気象監視が途切れない仕組みです。

  • 観測装置・観測性能はひまわり9号と同等
  • 「可視画像」を中心とした気象情報の提供継続
  • システム切り替えに数時間を要したが、最重要観測は維持

この代替運用により、台風などの緊急災害時にも最新の気象情報提供が継続できました。気象庁は公式に「台風観測には大きな支障は出ていない」と説明しています。

衛星障害が発生した際の気象観測・警報業務への影響

今回のように気象衛星に障害が発生した場合、気象庁の警報発令や避難情報提供、天気予報作成などの重要業務にどのような影響があるのでしょうか。結論としては、すぐに致命的な影響が出ない体制が整っています。

  • バックアップ衛星との常時連携で、観測空白を最小化
  • 気象レーダー、地上観測装置、国際気象衛星網(GOES, MetOp等)との複合運用
  • 大型台風などの観測もほぼリアルタイムで継続

今回の障害は「一部復旧」となる形で、気象庁は必要な天気予報や注意報・警報の発表に支障はなかったと発表しています。すなわち、人々の安全や交通、産業活動に直結する気象サービスにはほとんど影響が及ばなかったことになります。

なぜバックアップ体制が重要なのか

ひまわり8号・9号のようなバックアップ(二重化)運用は、気象観測の「命綱」です。万が一、衛星に深刻な不具合や事故が発生しても、別の衛星ですぐにデータ取得を再開できることで、数千万人単位の生活や安全が守られます。

  • 衛星技術は極めて複雑で、完全な故障予測は不可能
  • ひまわりシリーズは常に2機体制を維持
  • 地上局・運用センターもバックアップと冗長化を確保

とくに日本は台風・大雨・大雪・火山活動など、気象災害が多発する国です。迅速で正確なデータ提供が止まることは社会的なリスクとなるため、こうした衛星運用の堅牢な仕組みが不可欠といえるでしょう。

今後の調査と再発防止への取り組み

気象庁と関係機関は、今回の障害発生を重く受け止め、原因究明と再発防止に向けた調査を進めています。原因がハードウェアにあるのか、通信系、地上側のシステムなのか、あるいは複合的な要因なのか、時間をかけて慎重に解析が行われる見込みです。

  • すべての観測・通信ログを詳細に解析
  • 必要に応じて機器のリセットや再設定作業を実施
  • 今後、新たな衛星計画(ひまわり10号等)にも知見を反映

また、再発防止のため、手動によるバックアップ切替の手順の見直しや運用訓練の強化、異常兆候の早期検知に向けたAI技術の導入など、衛星運用の信頼性向上が期待されています。

ひまわり衛星が支える日本と世界の安全

気象衛星ひまわりシリーズは、日本だけでなく、アジア・オセアニア各国へも気象データを提供し、台風・大雨災害の被害軽減や航空航行の安全に貢献しています。さまざまな分野で不可欠なインフラとなっており、国際的にも高い評価を受けてきました。

  • 天気予報や台風進路予想の精度向上
  • 航空・航海のルート最適化や災害緊急対応に必須
  • 各国気象機関とデータ共有・相互援助を推進

今回の障害対応を通して改めて、こうした重要インフラの管理・運営の重要性や、万一の障害時にも「情報の空白」を生まない強固な体制維持の必要性が社会に示された形です。

まとめ

2025年10月11日深夜、気象衛星「ひまわり9号」に観測障害が発生し、日本を始め広域の気象観測体制に一時的な影響が及びました。しかし、即時的なバックアップ体制による「ひまわり8号」への切り替え、および他の観測手段併用により、台風を含む重要災害情報提供や警戒業務に大きな支障がなかったことは、今後の衛星運用の意義や課題を再認識させる出来事となりました。

今後も気象衛星の高度化・多重化と信頼性強化が進められ、社会全体の防災や安全に貢献し続けることが期待されます。皆さまにとっても、日々の天気予報や災害情報の基盤として「ひまわりシリーズ」の役割やその大切さをあらためて知っていただければ幸いです。

参考元