日本最北の実用空港・稚内空港は「着陸の難所」? 国内屈指の高い欠航率の理由を徹底解説

北海道の稚内市に位置する稚内空港は、定期便が就航する空港の中で日本最北に位置する空港として知られています。しかし、その立地の特殊性から、実は航空業界では「着陸の難所」として認識されており、冬季を中心に欠航率が国内でも屈指の高さを記録しているのです。今回は、実際に稚内空港便に乗客として搭乗した体験を基に、この難しい空港の実態に迫ります。

稚内空港の基本情報と運航状況

稚内空港では、定期便が1日わずか3往復のみという限定的な運航体制が敷かれています。便数が少ないにもかかわらず、冬季を中心に欠航率が「国内でも屈指の高さ」と言われているのは、この空港が自然条件の厳しい環境に置かれているからに他なりません。

乗客が実際に稚内行きの便に搭乗してみると、着陸直前の降下中に強めの揺れが発生し、機長が小刻みに機体をコントロールしている様子が機内からも明確にうかがえたとのこと。到着時は晴天で降雪もありませんでしたが、ターミナルを出た瞬間に非常に強い風が吹いており、現地の自然条件の厳しさが身をもって実感できたそうです。

着陸を困難にする最大の要因は「強い風」

稚内空港で離着陸を難しくしている最大の要因は「風」です。この空港は海に隣接しており、宗谷湾側から吹き付ける風が、着陸進入中の航空機にとって操縦を極めて難しくさせる「横風」となってしまうのです。

稚内開発建設部・稚内港湾事務所の資料によると、「一年を通じて風が強いのが特徴であり、特に冬は秒速10メートル以上の風の出現率が約25%に達する」とされています。この数字からも、稚内空港がどれほど風の影響を受けやすいかが明確に分かります。

複合的な悪条件が重なる環境

稚内空港の欠航率が高くなる理由は、風だけに留まりません。複数の条件が複合的に重なることで、より一層の困難が生じているのです。

まず、降雪や吹雪による視程(視界)の悪化があります。冬季の北海道は降雪が多く、吹雪によって視界が著しく悪化することで、パイロットの操縦がさらに難しくなるのです。

次に、滑走路長が約2200メートルと比較的短いという課題があります。150席から200席級のジェット旅客機にとっては、この滑走路長はやや短めとなるため、離着陸時の余裕が限定されてしまうのです。

これらの条件が重なることで、他の空港に比べて稚内空港の欠航率が高くなる傾向にあると考えられています。

運航の安定化に向けた取り組み

稚内空港では、こうした環境下でも就航率を高めるための様々な取り組みが継続して行われています。代表的なものが「防雪柵(ぼうせつさく)」の設置です。滑走路周辺に設けられたこの設備により、雪の吹きだまりや視程の悪化を抑え、運航の安定化に一定の効果を上げているとされています。

さらに最近では、より先進的な対策も進められています。2025年11月には、除雪作業の人手確保と冬季の安定した空港運営を目的に、除雪車両の自動走行を目指す実証実験が稚内空港で行われました。北海道エアポートでは、ローカル5Gなどを活用した除雪車両の省力化を進めており、2030年以降の実用化を目指しているのです。

ANA就航空港の中でも最難関

稚内空港は、世界のANA(全日本空輸)就航空港の中でも最も着陸が難しい空港として位置づけられています。国内にも着陸が困難とされる空港はいくつか存在しますが、稚内空港はその中でも特に厳しい条件下にあるのです。

この評価は、パイロットの技術が試される環境であり、同時に航空会社の運航管理体制がしっかり整備されていることの証でもあります。

乗客から見た稚内空港の実態

実際に稚内空港便に乗客として搭乗した人の感想は「確かにこれハードだわ…」というものでした。強い揺れ、パイロットの細かい操作、吹き付ける強風など、自然環境の厳しさが身に沁みて感じられるのです。

しかし同時に、こうした困難な環境下でも定期便が運航され、多くの乗客が安全に利用できているのは、パイロットの高度な技術と、空港運営スタッフの徹底した安全管理があってこそなのです。

日本最北の空港としての重要性

稚内空港は、単なる「着陸の難所」ではなく、北海道最北端地域と本州を結ぶ重要な交通インフラでもあります。困難な自然条件の中でも、この空港が定期便を維持し続けることは、地域の経済や生活に欠かせない役割を果たしているのです。

今後、除雪車両の自動化などの最新技術導入により、さらなる運航の安定化が進めば、稚内地域の活性化にもつながることが期待されています。

まとめ

稚内空港は「日本最北の実用空港」という地理的な特異性だけでなく、強い風、降雪、短い滑走路といった複合的な要因によって、日本国内でも最も着陸が難しい空港となっています。世界のANA就航空港の中でも最難関とされるこの空港で、安全に運航が続けられているのは、関係者の不断の努力と最新技術の活用があってこそなのです。

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