米中貿易戦争で関税再拡大 トランプ氏、中国に強い姿勢、市場や企業に衝撃

米国発の関税強化宣言で世界市場が激震

2025年10月10日、米国のドナルド・トランプ大統領は、中国に対してさらなる関税の引き上げを表明しました。この発表は、米国東部時間2025年10月10日午後2時30分に発され、直ちに世界各国の株式市場や商品市場に大きな影響を与えています。

トランプ氏は、中国政府に対し「フェンタニルをはじめとする違法薬物の流入」や「不法移民問題」への対策が不十分だと主張し、中国産の全製品に追加で高関税を課す方針を明らかにしました。これを受けて、中国の主要株価指数は急落。原油価格も、貿易環境の悪化と経済活動の減速懸念から3%以上急落するなど、世界的な資産市場に緊張が走りました。

関税引き上げの経緯と現状

米国による中国製品への追加関税は、今年2月に「全体の10%」だったものが、その後も段階的に引き上げられ、4月には「相互関税」という形で最大84%まで上昇しました。この相互関税に加え、既存の最恵国(MFN)税率や、1974年通商法301条に基づく追加関税(25%)、違法薬物対策を目的とした国際緊急経済権限法(IEEPA)による追加関税(20%)などが加算されるため、実際には多くの品目で関税率が130%前後に達する事態となっています。

関税引き上げの根拠は、中国が米国への不法移民や違法薬物の流入に対して「十分な対策を取っていない」というトランプ政権の主張です。トランプ氏は「中国が対策を強化するまで関税を継続する」と述べており、撤回の条件も明確に示されているものの、具体的な判断基準がないため、いつ緩和されるかは不透明な情勢が続いています。

今回の動きについて、トランプ氏は「習近平国家主席との首脳会談の必要性は感じない」とも発言し、中国側との直接的な対話が難しい状況にあることを印象付けました。

中国と米国の報復合戦

中国側は、米国の関税引き上げに対して迅速に応酬しています。米国製品に対しては最大34%の追加関税を課すことを発表し、すでに実施済みです。両国の関税合戦は、企業活動やサプライチェーン、そして消費者物価に大きな影響を及ぼしています。

中国の企業、特に輸出品を多く手掛ける企業は、高額な関税負担を回避するため、サプライチェーンの再構築や現地生産化を進める動きが活発です。一方、米国内の小売業者も、輸入品の価格上昇を吸収しきれず、商品の値上げや利益率の悪化を余儀なくされています。

市場と経済界への影響

この関税合戦の影響は、株式市場や商品市場、そして実体経済の各所で顕在化しています。

  • 中国株の急落:追加関税の発動懸念を受け、上海・深圳市場の主要株価指数は軒並み下落。投資家のリスク回避姿勢が強まっています。
  • 原油価格の急落:中国の経済活動が減速することで原油需要が落ち込むとの観測から、WTI原油先物価格は3%以上下落。エネルギー関連株も押し下げられています。
  • 米国小売業への打撃:中国からの輸入品コストが上昇し、小売価格の引き上げや在庫調整、利益圧迫が進んでいます。

また、日本など他国の輸出企業も、米国向け輸出で高い関税負担を強いられるため、事業戦略の見直しを迫られている状況です。一方で、現時点では「実質輸出は横ばい圏内」とのデータもあり、各国企業がコスト増を吸収している側面も見られます。ただし、長期的には価格転嫁が難しくなり、企業収益や雇用環境が悪化するリスクが指摘されています。

今後の見通し

現時点で、米中双方が関税引き下げの糸口を見いだす気配はほとんどありません。トランプ政権は「中国の対応次第で関税撤廃もあり得る」としていますが、具体的な「十分な対策」が何を指すのかは明らかになっておらず、協議の行方は不透明です。

国際社会では、米中対立の長期化が世界経済全体の成長を鈍化させることへの懸念が高まっています。中国を主たるサプライヤーとするグローバル企業は、生産拠点の分散や調達先の多様化を急ピッチで進める必要に迫られています。

また、米国市場向けの中国製品が減少することで、インドや東南アジア、中南米諸国などが新たな調達先として注目される動きも強まっています。

まとめ

米中貿易戦争は、2025年秋に入っても収束の兆しが見えていません。トランプ大統領による中国への強い姿勢、それに対する中国の報復措置、そして両国の経済・市場への影響は、今後も世界規模で注視され続けるでしょう。企業や投資家は、さらなるリスクマネジメントと経営戦略の見直しを迫られています。

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