米経済指標「MBA住宅ローン申請指数」急回復――2025年10月第4週の動向と背景を徹底解説
【2025年10月29日発表】今週の米経済指標――MBA住宅ローン申請指数が前週比+7.1%と大幅増加
2025年10月29日、注目の米経済指標であるMBA住宅ローン申請指数(Mortgage Bankers Association: MBA)が発表され、10月18日~24日にかけて前週比+7.1%という大きな伸びを記録しました。これまで複数週にわたり減少傾向が続いていた同指数ですが、今回久々の大幅なプラス転換となったことで、米国住宅市場や金融市場、為替相場にさまざまな影響を与えています。
MBA住宅ローン申請指数とは?基礎知識とその重要性
MBA住宅ローン申請指数とは、アメリカ抵当銀行協会(MBA)が毎週水曜日に発表する、個人の住宅ローン申請件数を基にした経済指標です。1990年3月16日を基準値100とし、固定金利・変動金利・新規購入・借り換えなど各種の申請動向を総合的に表しています。これはあくまで「申請ベース」の数字であり、同一人物が複数のローンを同時申請した場合もすべて加算されるため、その点も注意が必要です。
- 発表頻度:毎週水曜日(日本時間では夏時間20時、冬時間21時)
- 主な発表内容:指数の前週比変化率、平均ローンサイズ、固定金利動向、借り換え・新規申請割合など
- カバー範囲:全米の商業銀行、信託銀行、住宅ローン銀行など、米国の小売住宅ローン申請の約75%を網羅
今回の発表:+7.1%の大幅増加の背景
2025年10月第4週のMBA住宅ローン申請指数は、前週比7.1%の増加となり、市場関係者の間で大きな注目を集めています。
直前週(10月11日~17日)が-0.3%の微減だったことと比較しても、この反発は非常に顕著です。
近年平均が0.59%前後とされる中、7.1%という数値は統計的にも大きな動きといえるでしょう。
この大幅な申請増加の背景には、いくつかの要素が絡んでいます。
- 30年固定住宅ローン金利が6.30~6.37%でやや低下傾向:9月・10月には金利が高止まりしていましたが、直近でやや下落し始めたことが、借り換えや新規申請の動きを後押ししたと考えられます。
- 住宅市場の回復期待:米国経済指標全体において景気減速懸念がやや和らいだこと、米連邦準備制度(FRB)の利上げ据え置き観測の高まりなども、市場心理にプラスに作用しました。
- 季節要因:例年10月は住み替え需要が強まる時期でもあるため、その影響も一部寄与している可能性があります。
直近半年のMBA住宅ローン申請指数・推移表
| 週次 | 前週比変化率 |
|---|---|
| 10/18 – 10/24 | +7.1% |
| 10/11 – 10/17 | -0.3% |
| 10/04 – 10/10 | -1.8% |
| 09/27 – 10/03 | -4.7% |
| 09/20 – 09/26 | -12.7% |
| 09/13 – 09/19 | +0.6% |
| 09/06 – 09/12 | +29.7% |
| 08/30 – 09/05 | +9.2% |
| 08/23 – 08/29 | -1.2% |
| 08/16 – 08/22 | -0.5% |
| 08/09 – 08/15 | -1.4% |
| 08/02 – 08/08 | +10.9% |
最大29.7%の上昇幅や、-12.7%という大幅減も見られる通り、最近は住宅ローン申請の動向が非常に不安定でした。今回の+7.1%は、その中でも比較的大きなプラス転換として注目されています。
住宅ローン市場の現状――30年固定金利住宅ローンは6.30~6.37%前後
同じく注目される住宅ローン金利ですが、2025年10月末時点で30年固定金利が6.30~6.37%前後となっています。この水準は、2022年夏以降続く米国の利上げ局面を背景とした「高止まり」状態です。ただし、ここ数週間はピーク時(6.4~6.5%台)から僅かに低下傾向を示しており、住宅ローン申請活動の後押しになっていると考えられます。
- 2025年10月末:6.30%~6.37%
- 2025年9月以前:6.40%超に達した時期も
- コロナ禍直後(2020年秋冬):3%前後で推移していた
この金利水準の変化は、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策やインフレ率、長期金利(米10年債利回り)との連動を続けています。
指標の読み解き方――住宅市場や為替への影響
MBA住宅ローン申請指数は、アメリカの不動産市場の「先行指標」の一つと考えられています。新規住宅販売や中古住宅販売の件数に先駆けて動く傾向があり、短期的な住宅需要の変化をより早く把握できます。
- 申請増加 → 住宅購入や借り換え需要アップ → 住宅販売件数や価格の先行的回復に繋がる可能性
- 申請減少 → 住宅需要の減退 → 住宅販売や価格の弱含みに反映しやすい
さらに経済全体としては、住宅市場が強ければ個人消費・雇用・商品相場などにも好影響をもたらしやすくなります。逆に、長期的な申請指数の減少や金利上昇圧力が続く場合、不動産関連業種の企業業績悪化、金融市場や為替レート(特にドル/円)へも波及リスクが指摘されます。
米MBA住宅ローン申請指数の特徴と注意点
- 「申請ベース」の数字であり、ローン審査が通った件数や実際の住宅売買件数とは異なる
- 同じ人物が同時並行で複数ローンを申し込む場合もすべて加算(重複を考慮しない)
- 短期的な市場動向を敏感に表す指標として活用される一方、「ノイズ」も多いため、数週間単位の変動傾向を見ることが推奨される
- 市場参加者は住宅ローン金利や他の経済指標とセットで注視
10月末時点――米国住宅市場の今後の展望
米国の住宅市場はここ数年、高インフレ・急激な利上げ・金利高騰によって「買い控え」や取引減少が続いてきました。住宅ローン金利のピークアウトがやっと見えてきた今、住宅市場も底打ち~回復局面に入る兆しが少しずつ現れ始めています。
- FRBの利上げ一時休止観測・金利のやや低下(≒住宅ローン金利圧縮)の進行
- 一部地域では住宅価格の下げ止まり・反発
- 新規着工件数、中古住宅販売の改善傾向も一部見られる
- 逆に今後、金利が再び上昇した場合は、回復傾向の腰折れに警戒が必要
10月末の住宅ローン申請指数+7.1%という強い数字は「短期的な回復」のサインとされていますが、今後も金利動向・雇用情勢・家計の所得環境など、複数のファクターに左右されるため、継続的なウォッチが重要です。
まとめ:住宅ローン申請指数の意味と今後の注目点
2025年10月第4週、米MBA住宅ローン申請指数が前週比+7.1%の大幅増加という、景気回復の兆しとも取れるデータが発表されました。これは住宅ローン金利の小幅な低下や消費者心理の改善が主な要因と見られています。しかし、住宅市場は依然として高金利やインフレの影響が色濃く、数週間単位の推移や米経済全体の見通しに引き続き注意が必要です。
今後も「住宅ローン金利」「申請指数」「住宅販売データ」「FRBの政策動向」など、主要な経済指標を丁寧にチェックし、生活やファイナンスの戦略を立てていくことが大切です。




